111 シャーって言いながら
次の日、莉奈は、朝からゲッソリしていた。
あれから、自分より身分の高い人を、それも王族をからかうなど、あり得ないと……イベールにガチで怒られたからだ。
フェリクス王は、莉奈が怒られてて面白いからと、ニヤニヤ見ているだけだったし。
シュゼル皇子は、紅茶を嗜みつつほのほのしてるだけ。
エギエディルス皇子は、莉奈が怒られているのを、憐れんでいただけだった。
誰も説教を止めてくれなかった。
……当たり前だが。
しばらく、説教が続いたと思ったら、次はシャーベットの説明。そして……結局、パン酵母の説明まで、そのままする形になってしまった。1時間以上も……。
……もう、ゲッソリだよ。
〈状態〉
……いたって健康
だが……まだ、ぽっちゃり。
……痩せてはいなかった。
「……はぁ」
痩せた様な気分になっただけか……。
莉奈は、テーブルに突っ伏した。
「……お前……今日は普通に、部屋にいるのな」
テーブルに突っ伏していると、いつもの朝、いつもの様にエギエディルス皇子が部屋に来た。
莉奈は、なんかどっと疲れがでて、日課のジョギングをサボってしまっていたのだ。
「何もしたくない時もあるでしょう?」
「……アハハ……お前、昨日コッテリしぼられてたもんな」
と、苦笑いしながら、莉奈の向かいのイスに座るエギエディルス皇子。
昨日の、長時間の説教と説明を、端から見ていたので、気持ちは良くわかる。他人事ながらウンザリだった。イベール、シュゼル皇子のコンビは最悪だ。
「しぼられて……って、リナあなた一体何をしたのよ?」
と怪訝そうなラナ女官長。エギエディルス皇子に紅茶を淹れながら訊いてきた。
話を聞いている限り、昨日フェリクス王達に呼ばれた時の話らしい事はわかった。なら、その中の誰かにしぼられた……と言うこと。
一体、何をやらかしたのだと、いよいよ眉をひそめた。
「…………」
なんと言っていいのやら……。
……と、いうか……言いたくない。
「エギエディルス殿下、リナは何を?」
とラナ女官長。莉奈が、知らん顔をして黙っているので、事情を知っている皇子に訊く方向に変えた様だ。
「あぁ~~。なんていうか、いらん事を言った?」
面白いから良いのだけど、誤魔化す方向が違うし、イベールの前であれは……な、とエギエディルス皇子は苦笑い。
「…………リナ」
ラナの声がワントーン下がった。怒っているというより、呆れている……というのが正解かもだが。
「だって~……シャーベットの話なんかしたら、作れって言われるからさ~」
まぁ、その後の誤魔化し方と、爆笑に問題があった気もするが。あのツッコミには、笑わずにはいられなかった。
「「……シャーベットって?」」
ラナはもちろん、モニカも食い気味に訊いてくる。新しい食べ物には、もれなく皆が皆、食いついてくる。
……ね? 結局、誰に言ってもこうなる訳なのよ。
「……シャーって言いながら、ベッドに入る事」
莉奈は、面倒くさいので適当に返した。
「「………………は?」」
ラナ、モニカは目が点だ。
何を言ってるのか、わからないのだろう。
言った莉奈とて、意味がわからないのだから仕方がない。
「……ぷっ……お前……マジ適当」
エギエディルス皇子は、その返しに吹き出していた。
誤魔化すにしても、意味がわからない。適当過ぎるのだ。
「……さっ、ご飯ご飯!」
莉奈は、急かす様にテーブルを叩いて、朝食の準備を二人に促した。何もなかった事にしたのだ。
「……もう、リナったら」
仕方がないわね……と、ラナは、呆れた様に小さく笑うと、朝食の準備をするのであった。




