1 終わりの始まり
★初めまして。
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―――始まりも、終わりもそれはいつも突然やってくる。
「うっわ! アイツ また太ったンじゃねぇ?」
校庭にコロコロと転がるサッカーボールを拾い上げながら、男子高校生はわざとらしく声を上げた。その目線の先には、今から帰宅する少女がチラリと見える。
「マジか! あれはないわ!……ってかもう、ブタだな、ブ~タ!」
同じく校庭の金網越しに、帰宅する少女を見た同級生が、ケタケタと面白そうに笑い。お世辞にもスタイルがいいとは云えない、その姿に改めてゲラゲラ笑った。
「だけどさァ、アイツ中学ン時、ちょ~美少女だったって噂なかったっけ?」
「そうそう! 直也、告ったンじゃん?」
「告ってねェっつーの!……ってか、あれは詐欺だろ詐欺!」
からかわれる様に言われた、同級生の直也は、顔をしかめ吐き捨てるように言った。もし彼女が今も尚、美少女だったのなら、彼は勇者と囃し立てられたのかもしれない。しかし、現実は違った。
もはや彼にとって黒歴史でしかないのだろう。
……聞こえてるから。
莉奈は、どうでもよさそうに呟いた。
彼女だって好きでこうなった訳ではない。
辛い過去から逃げる様に、過食にはしったからだった。
◇◇◇
――それはある日、突然起きた。
高校入学のお祝いに旅行に行った帰り、それは起きたのだ。
「……もぉっ!! お姉ちゃん聞いてる?」
少しふてくされた様な弟の声が、隣から聞こえた。
「……あ、ごめん。寝てたかも」
苦笑いしながら、莉奈は言った。
帰る直前まで、弟にせがまれ海で遊んでたおかげか、身体がダルくて仕方なかったのだ。
「……むぅ」
頬を膨らませて拗ねる弟も可愛い。
莉奈は、宥めるようにその頭を優しく優しく撫でた。10才も歳が離れてると、何もかもが可愛いくて仕方ない。
「朝から、お姉ちゃん引っ張り回して海で遊ぶから、お姉ちゃん疲れちゃったのよ。少し、寝かしてあげなさいな」
助手席に座っている母が、少し困った様な顔をして言う。
「……むぅ~……んじゃ、帰ったらオムライス作ってね?」
「………ハイハイ」
上目遣いでねだる弟に、莉奈はくすりと笑った。
どんだけキミは、オムライスが好きなんだ…と。
何かあるたびにオムライスをねだる弟には、可愛いやらなんやら、無性に頭を捏ねくり回したい。
「あーっ!! お姉ちゃん見て、オープンカーだ!!」
川に架かる橋を、渡り始めた時、左側後方からズンチャズンチャと、大きい音楽をかけた白いオープンカーが、爽快に駆け抜けていった。
「……カッコいいな」
運転している父が、ぼそりと言った。
「ねぇ!! 今度、借りて乗ろうよ!!」
弟が、興奮した様に言った。
買うのは無理でも、借りる事は出来るだろうと、小さい弟なりに思った様だ。
「あら、いいわね。それで海沿いなんて走ったら、気持ち良さそうじゃない?」
と母も満更じゃない様子で弟を後押しする。
「……う、うむ………じゃあ、今度の連休に………」
と父が話にのった時だった……。
―――ガッツン!!
と激しい衝撃が家族を襲った。
何が起きたのかわからなかった。
ただ赤い車が目に焼き付いた。
何故そんなに近くにいたのか不思議だった。
そして、気がつくと莉奈の身体は、激しい痛みと息苦しさに襲われていたのだ。
――ゴボッ。
口の中に水が入り込む。
それでやっと、自分が川に落ちたのだと気が付いた。
莉奈は苦しくて、必死に空気を求め割れた窓から外へと出た。明かりを頼りに上へ上へと……。
だから、莉奈は気づかなかった。車の中にまだ家族が残っていた事に……。弟が手を伸ばしていた事に……。
◇◇◇
何時間、何日かたったある日。
やっと苦しさ痛みから逃れ、目が覚めると……
見慣れない白いカーテンが、フワリと風に吹かれていた。
そう、そこは家ではなく病院の一室だった。
そして莉奈は気づいた。
もう、笑い合える家族がいなくなってしまった事に……。
父は、私が作る酒の肴で晩酌をするのが、好きだった。
母は、なんでも美味しい美味しいと食べてくれた。
弟は、オムライスが特に好きで、せがまれ良く作った。
……そんな楽しい日々はもう来ない……。
◇◇◇
――ビュウ。
莉奈の頬を冷たい風が撫でていった。
気づくといつもここにいた。
家族がまだ、ここにいる気がするのだ。
一人残った私を、家族は迎えに来てくれるだろうか?
ねぇ……私……頑張ったよ?
もう、そっちに逝ってもいい……?
何かが応える様に、頬に触れていった。
……その時……。
莉奈を優しく包む、暖かい光が目の前に広がったのだ。
それは、莉奈に……幸せを運ぶ光。
……幸せを呼ぶ【召喚】の始まりだった。
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