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決着

これ書き終わるまでもう少し、というところでエディタがフリーズして一話分パァになりました。

おかげでもう一話書こうと思ってたのに書き直しで時間がなくなった……

「よっと」


 何の工夫もなく、クラウスがただ俺の首を狙って振り下ろしただけの斬撃を躱す。


「……躱したのか」

「いや、そりゃ躱すだろ」

「てっきり大人しく首を跳ねられるのかと思っていたがな」

「ええ……なんでよ?」


 普通に考えてあり得ないでしょう。死にたくないし。


「ふん、貴様はそう思っているかもしれんがな。お前以外はそう思っていたようだぞ」

「え?」


 そう言われて周りを見てみると、確かにマルシアなんかはこっちを見て驚いた顔をしているし、セパスチャンは顔を伏せたままだ。

 メイドさんに至っては箒とちりとりを……え? なんでお掃除グッズ? もしかしてそれで俺の死体片付けようとしてたとかじゃないよね?


「今の一撃を躱したという事は、本当に私と戦うつもりのようだな」

「つもりじゃなくて、最初からそう言ってるだろ」

「そうか」


 クラウスはそれだけ言って、剣を構え直す。うん、良い構えだ。あまり隙も見当たらない。

 っていうかさっきから違和感があるんだけど、コイツ本当にクラウスか?


「なら手加減は出来ん」

「いや、頼んでないし」


 手加減されても困る。俺としても目的はあるわけだし。

 コイツと戦う事になったのは完全に成り行きだが、折角だからコイツの実力を測る事で、この世界の実力を知っておきたいからな。

 幸い? クラウスは強い部類みたいだし。


 お互い睨み合う時間が流れる。どちらも肩を揺らしたり、膝を落としてみたりと小さくフェイントを仕掛けて隙を伺うが、当然フェイントと分かっている動作に引っかかるつもりはないし、あっちも引っかかってくれないようだ。


「貴様……本当に戦闘スキルを持っていないのか?」

「さっき見ただろ? 持ってないもんは持ってないんだよ」

「しかし……いや、確かにこの目で見たのだから間違いはないのだろう」


 何かを言おうとしたようだが、不要と考えて口に出すのは止めたようだ。


「そういえば名前を聞いていなかったな。貴様、名は?」

「浅倉蒼汰、だ」

「そうか。ソータ、先ほどまでの無礼は忘れてやる。私の--」

「断る」


 その言葉の続きは嫌でも察する事が出来る。っていうか本当にコイツ別人なんじゃないのか?


「残念だ」


 そう口にした後、クラウスの纏う空気が変わったを感じた。

 どうやら本当に手加減無しで来るみたいだな。


「ふっ!!」


 気合と共にクラウスが迫ってくる。先ほどの無骨な一撃とは違い、迫力のある一撃だ。

 だけど俺だってレイラ母さんに嫌というほど鍛えられてきたんだ。クラウス、その速度じゃ全然足りない。

 少し余裕をもって、拳一個分くらいの隙間を空けて剣を躱す。

 クラウスが若干驚いた表情を見せたが、それも束の間、二撃、三撃と斬撃を繰り出してくる。

 一撃でも食らえば即絶命するだろうが、それでも当たらなければなんとやら、だ。

 今のうちに少しずつ回避のタイミングを遅らせて、ギリギリのタイミングを掴めるように調整していく。


 何度目の斬撃を回避した頃だったか、クラウスが剣を振るう事を止め、俺から距離を取った。


「貴様、俺を舐めているのか?」


 あ、バレてた。

 いや、舐めてるわけじゃない。確かにクラウスの剣技はなかなかだ。

 けれども、結局なかなか(・・・・)でしかない以上、当たる気はしない。


「舐めちゃいないよ。良い腕だ」

「それが舐めていると言うのだ!!」


 一呼吸付いたのか、再度クラウスの猛攻が始まった。

 けれど結局俺がやる事は変わらない。ギリギリで躱して、それでも更にギリギリのタイミングを掴もうとする。

 皮一枚。いや、出来れば剣の腹が掠るくらいまで--


 そんな俺の思惑を知ってか知らずか、再度クラウスは俺から距離を取った。


「どうやらこのままではラチが空かないな」

「そう? 俺はまだ何もしてないけど」

「ふん、どこまでも減らず口をたたくか」


 腹は減ってるけどね。


「ならば……炎よ、我が手に集いて彼の者を貫け--」


 剣を持っていない手を俺に向け、クラウスが言葉を紡ぎ出す。

 これは……魔力が集まっている?


「≪ファイアランス≫」


 やっぱり魔法か!!

 炎の槍が俺に向かって飛んでくる。速いが躱す事は造作もない。が……

 チラリと後ろを振り向くと、やはりマルシアとセパスチャンが居た。となると躱すわけにはいかないな。

 出来るだけ急いで魔法を構築する。とりあえず炎の槍を防げれば何でもいい。

 クラウスの放ったファイアランスは、俺に当たる寸前のところでジュゥッという音を立てて消え去った。


「おい……お前マルシアが後ろにいるの分かってて撃ったな?」

「貴様……今のは何をした!!」


 いや質問に答えろよ。なんで俺が質問されてるわけ?


「何って火の魔法だったから水で火を消しただけだ」

「まさか……あのタイミングで魔法を使ったというのか? 詠唱した素振りも見えなかったぞ!?」

「はあ? 詠唱?」


 詠唱なんてよっぽどイメージするのが難しい魔法じゃないと必要ないだろ。

 さっきのなんて構築の工程すっ飛ばして、属性と効果だけ付与した名前も付けられない魔法だし。


「どうやら貴様は思っていた以上に危険なようだ」

「いや、どう考えてもお前の方が色々と危険だろ」


 何言ってんだコイツ。そもそもこの決闘だってお前が言い出した事だろうが。


「仕方がない。一気に決着を付けさせてもらう……マルシア様、お許しを」


 うん? 今マルシア「様」って言ったか? どういうことだ?

 その理由を考えていると、クラウスの身体に魔力が集まっていく。これは……身体強化の魔法か。


「さっきまでとはワケが違うぞ」


 そして数秒の後、クラウスの身体の周りをうっすら魔力の膜が覆った。

 いや、数秒もかかってたら隙だらけじゃない?


「今度こそ決着を付けさせてもらう」


 そうだな、そろそろコイツの実力も測れたし、決着にはちょうどいい頃合いだろう。


「行くぞ!!」


 言うが早いか、クラウスが猛スピードで突っ込んでくる。

 先ほどよりも早い斬撃が繰り出されるが、俺のやる事はほとんど変わらない。

 ただ、ギリギリまで引き付けて躱すだけだ。


「とった!!」

「いや、とれてないよ?」


 --そう、まるで俺が躱せなかったと錯覚するくらいに、ギリギリまで。


 それこそ剣の腹が俺の身体を掠めていく程のタイミングでクラウスの放った兜割りを躱し、空いた脇腹に拳を当てる。

 そして右足を上げ、地面を踏み抜かんばかりに勢い良く下ろす。

 力まず、それでいて震脚から伝わる力を拳に伝え、前へと押し出した。


 クラウスの腹からボゴォッ!! と、およそ人体から発せられてはいけない音が発せられた。

 嫌な予感がして、クラウスの方を見てみると、その腹には拳大の穴が空いているのが伺えた。


「ええ……」


 発勁--ナナリー母さんから伝授された奥義の一つ。

 確かに俺も食らった時は余りの衝撃に腹に穴が空くかと思ったが、実際に空くとは思っていなかった。


「クラウス様!!」


 慌ててマルシアがクラウスに駆け寄る。あ、ヤバい。ほっといたら死んじゃうな。

 流石に人殺しをするつもりはなかったし、コイツには色々と聞きたい事も出来たので治療することにした。

 俺はクラウスの腹に手を当て、聖術で身体を治していく。


「うっ……私は一体……」

「気が付いたか。一瞬殺しちゃったかと思って焦ったぞ……」


 すっかり元通りになった腹を擦りながら、信じられない物を見るような目でクラウスが俺を見る。

 そして目を伏せた後、何かを話そうとして。


「そこまでじゃ!!」


 急に声をかけられ、俺だけではなく、マルシアやクラウスまで制止してしまう。

 セパスチャンの声にしては年齢を感じさせる声だった。となると今まで居なかった人物が登場した。という事になるだろうか。


「お父様?」


 と、マルシアが言った。そうか、お父様か。

 ええー……? また面倒な事になる予感しかしないんですけど……

(ry

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