決闘
今のうちにストックストック……
「はー、しかしこの庭広いな」
実家の庭も結構広い方だったけど、なんだろう。ちょっとした公園くらいあるぞこれ。
「そうだろうそうだろう」
クラウスがうんうん頷いている。いや、なんでお前が自慢気なの?
「なんでアンタが自慢気なんだよ」
「いずれ私の物になるからな」
今更過ぎるかもしれないけど、コイツのこの自信はどっから出てくるんだろうか。
「俺に負けたらならないよな?」
「ははは、面白い冗談だ!!」
俺に負けるとは微塵も思ってないらしい。もしかしてそんなに強いんだろうか。
「ふむ、どうも分かっていないようだな……良いだろう。貴様との違いを分からせてやろう。≪ステータスオープン≫
どうやらハンデのつもりか、わざわざステータスを見せてくれるらしい。
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名前:クラウス・ゲレイロ
年齢:34歳
性別:男
種族:人族
スキル:<剣術Lv4><火魔法Lv3><風魔法Lv2>
称号:無し
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なるほど、ステータスが見れれば、得意な獲物とか魔法の種類が分かるのか。
確かに今から戦う相手に対して、ステータスを見せるのはハンデと言っていいかもしれない。
「どうだ。言葉も出ないか」
いえ、そもそもこれが良いのか悪いかが分かりません。数字的に微妙っぽいんだけどなー。
「流石はクラウス様ですね……スキルを三つ、しかもレベルも高い……」
「そうなの?」
ちょうどマルシアが反応していたので聞いてみる。
「ええ、一般人であればスキルは一つあれば良い方です。そしてスキルレベルに関しては、通常であれば1のままか、それなりに経験を積んだ冒険者や騎士で2になるかどうかと言ったところでしょうか。レベル3以上となれば、余程の才能か努力をしなければ辿り着くことは出来ません」
「ってことはクラウスって結構強い?」
「はい、元々ゲレイロ家は武門の家系ですから。クラウス様自身も千人隊長を務めています」
なるほど。ってことはかなり腕が立つんだろうな。それなのに、アイツはマルシアに手を上げようとしたわけだ。
武門の家系だか何だか知らないが、感情のままに女性に手を上げようとするなんて、ただのクソ野郎じゃないか。
「でも俺もスキル四つ持ってるし、レベルもそれなりにあるよ?」
「本当ですか!?」
「まさか……貴様、名のある冒険者か何かか!?」
「いや、冒険者でも騎士でもなんでもない。ただの一般人だけどね。≪ステータスオープン≫」
もちろん称号を隠すのは忘れない。
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名前:浅倉蒼汰
年齢:16歳
性別:男
種族:人族
スキル:<料理Lv4><洗濯Lv1><掃除Lv2><荷物持ちLv6>
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どうだ。俺の方がスキルの数もレベルも全体的に高いだろう。
……内容はともかくな!!
「くっ……ははははは!! なんだこのスキルは、これで私と戦おうと言うのか!!」
「そうだけど?」
「自信があるようだから剣術スキルの一つでも持っているのかと思えば……まあいい、出来るだけ苦しまないように殺してやろう」
あ、殺すつもりなのね。いいけどつい最近まで母さん達に半殺しどころか、9.9割殺しされまくってたから、そうそう死なないよ?
クラウスには大笑いされたが、マルシアの方は……あ、めっちゃポカーンとしてる。
俺が見ている事に気付いたのか、マルシアはハッとしたようにこちらを見た。
「そ、ソータくん!! 今からでも遅くありません。私からもクラウス様に謝罪しますから、なんとかお許しを……!!」
「え? やだ」
「ええ……」
なんで俺やマルシアがあんな奴に謝らなきゃいけないのか。
「いつまで話している!! それとも今更怖気づいたのか?」
「だから違うって。いいよ、だったらとっととやろうぜ」
どうもこの世界はスキルを偏重と言っていいくらいに重視しているみたいだし、戦闘系スキルのない俺がどの程度やれるのかも試してみたいしな。
「いいだろう。殺されても恨むなよ」
「殺されたら恨むだろうけど、まあ死んだら恨んだところで意味はないしな」
「良い度胸だ。なら私に楯突いた事を悔やみつつ死ぬがいい」
そう言ってクラウスは腰に下げた剣を抜いた。
あ、そういえば俺丸腰じゃん。まあいいけど。
「ところで貴様は何も持っていないようだが、せめてもの情けとして、剣くらいは貸してやるぞ?」
「いや、このままでいいよ」
「なるほど、潔く死ぬ覚悟は出来ているということか」
「ソータくん……」
いや違うって。
「ならば一思いにその首を跳ねてやろう!!」
そう言ってクラウスは俺に向かって剣を振り上げた。
評(ry