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人の話を聞かないヤツ

日が空いてしまった……すいません。

「なんだ? 何か文句でもあるのか?」

「あれだけ好き勝手言っておいて、文句がないと思う方がおかしいんじゃないか?」


 尊大な態度を取る目の前の男に向かって言い放つ。空腹のせいもあってか、流石に苛立っているのが自分でも分かった。


「はっ!! 庶民如きが私に口答えするとはな!!」

「いや庶民とか知らないし」

「は? 貴様は馬鹿なのか? まさか私の事を知らないとでも?」

「知らん」


 そもそも数時間前にこの世界に来たばっかだっつーの。知ってる奴だったら逆にびっくりだわ。


「大体婚約者とかどうでもいいけど、今招待されてるのは俺であってアンタじゃない。っていうかアンタのやってることは、それこそ婚約者の面子を潰してるわけだけど、それってどうなの?」

「この私に意見するとは失礼な奴め!!」


 ダメだコイツ。全く人の話を聞いていない。大体失礼なのはどっちだよ。


「クラウス様!! どうか落ち着いてください」

「女は黙っていろ!!」


 マルシアがクラウスをなだめようとするが、クラウスの方は全く聞く耳を持っていない。

 つか何が女は黙ってろだ。時代錯誤も甚だしい。


「女だとか関係なくね?」

「ふん、女は男を立てるものだ」


 いちいち腹立つなコイツ。


「で、もう面倒だから聞くけど、アンタはどうして欲しいわけ?」

「決まっているだろう。この家からとっとと出ていけ。そして二度とマルシアに付き纏うな」

「付き纏った覚えなんかないけどな……まあいいや、これ以上はマルシアに迷惑がかかりそうだし、言う通り出ていってやるよ」

「ソータ様!!」


 だってしょうがないじゃん。殴ったりしたら後々余計に面倒なことになりそうだし。


「また様に戻っちゃってるよ。いやそれは良いとして、別にマルシアが悪いわけじゃない」

「何を喋っている!!とっとと出ていくがいい!!」

「アンタもいちいち五月蠅いな」


 キリがないから早く出て行こう。と思った時だった。


「クラウス様……いくらなんでも酷過ぎます!! ソータ様は私の命の恩人なのですよ!? それをこんな……」

「何を……君までこの庶民の味方をするのか!!」


 クラウスが俺の横を通り抜けて、マルシアの方へ向かう。

 あ、これあかんやつや。そう思って部屋の外へ向かう足を止める。


「味方とか敵とかではありません。以前から思っていましたが、クラウス様は些か乱暴に過ぎます」

「なんだと!? せっかく婚約者に選んでやったというのに、私に意見をするのか!!」

「それを決めたのは私ではありません。家同士が決めた事に従ったまでです」

「この……っ!!」


 マルシアが言い返すのは予想外だったが、展開は概ね予想通りだった。

 クラウスの右手が上がり、マルシアの顔を目掛けて振り下ろされ……そうなところで、俺はクラウスの腕を掴んで止めた。


「流石に目の前で女の子が打たれるのは勘弁」

「なっ、貴様いつの間に!?」

「いや、明らかにこういう流れになってたから止めようかと」


 まあ正直こうなるのが嫌だったから、とっとと出て行こうと思ってたんだけど。

 で、マルシアの婚約者だって言うから色々我慢してたが、本人が決めた事じゃないのなら口出ししてもいいのかな。


「っていうか婚約者婚約者って言うから遠慮してたけどさ。家同士が決めた事なんだったら、アンタはもうちょっとマルシアに好かれる努力をするべきじゃないのか?」

「は? 貴様は何を言っているんだ?」

「いやだってマルシアってアンタの事好きじゃないみたいだし。っていうかどっちかっていうと嫌い寄り?」

「ハッ、私が嫌われるだと? あり得ないな」

「どっから来るんだその自信」


 あり得ないって言い切ったよ。


「第一こんな小さい子相手に、アンタみたいな大人が手を上げるってどういう事だよ」

「は?」

「は? じゃなくて、マルシアはどう見ても14歳かそこらだろ? アンタからすればまだ子供じゃないか」

「貴様は何を言っている? マルシアは今年20歳になったところだが?」


 はい? 今なんて言った?


「ソータ様、クラウス様の仰る通り、マルシアお嬢様は今年20歳になられた、れっきとした淑女です」


 メイドさんにまで指摘された。え? だって明らかに俺より年下……

 いや待て蒼汰。そうじゃない。アイシャ母さんだってそうだっただろう? 人は見た目じゃない。見た目じゃないけど……

 と、思いつつマルシアの方を見る。


「ソータくん……?」


 あ、これ怒ってる。絶対怒ってらっしゃる。


「いや初対面でそれは分からんでしょう……」

「そんなことより、貴様はいつまで私の腕を掴んでいるつもりだ!!」


 微妙な空気が流れてしまったが、それを断ち切るようにクラウスがまた激昂する。

 こればっかりはコイツの空気の読めなさに感謝だな。


「そうか……分かったぞ?」

「何が?」


 何故かしたり顔でクラウスが俺の方を見た。


「貴様、さてはマルシアに懸想したな? だから理由を付けて私を追い出そうとしているのだろう?」

「はあ? なんでそうなるんだよ」

「良い、それ自体は許そう。何しろ私のマルシアは美しいからな」


 何故か自慢気に胸を張るクラウス。ヤバい、本気でコイツの考えてる事が理解出来ない。


「そういうことなら話は早い。マルシアを賭けて決闘といこうじゃないか」

「クラウス様!! おやめください!!」


 どうしてこうなった。っていうかマルシアを賭けるとか、お前が決めて良いことじゃないだろうが。


「マルシアは物じゃないだろうが、何言ってんだアンタ」

「おや、怖気づいたのか?」


 その言葉にカチンと来た。


「ふざけんな、母さん達ならともかく、アンタを怖がるほど臆病でもない」

「それはつまり受けるということだな。よろしい、ならば庭に出よう」

「ソータくん、受けてはいけません。クラウス様は……」

「マルシア、君は黙っていなさい」


 マルシアの言おうとしたことはなんとなく分かる。さっき腕を掴んだ時に気付いたしな。


「まあいいや、このままだとキリがないし。正直腹が減りすぎて考えるのもめんどくさい。とっとと終わらせよう」

「ふん、言われずとも。後悔しても遅いからな」


 マルシアが心配そうな目で俺を見ていたので、あえて笑顔で返しておく。

 そして俺とクラウスは庭へと向かった。

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