迷子になりました
あ、早速評価頂きました。今までに比べてめちゃくちゃ早いです。ありがとうございます。
「……ここはどこ?」
確かあの女騎士の後を追って、城を出たところまでは特にはぐれていなかったはずだ。
城を出た後もクラスメイトの制服を目印に、つかず離れずで後を追っていたはず。
だがその後、大通りに出た頃に人の交通量が増え、屋台に目を奪われてる間に見失ってしまった。
「あー、これ見つかったら見つかったで多分怒られるよな……」
とは言え、はぐれてしまったものは仕方ない。
仕方ないことは仕方ないのだから、街を見学でもすることにしよう。
この大通りにはたくさんの屋台や出店が並んでいて、非常に活気がある。折角だし見て行かないと損だよね。
開き直って街を見て歩く。所狭しと並ぶ屋台では色んな食べ物が売っていて、漂ってくる匂いを嗅ぐだけでお腹が空いてくる。
「っていうか……腹減った……」
よくよく考えれば、入学式は午前中だけで終わるはずの予定だったから、まだ昼飯を食べていない。そりゃ腹も減ってるわけだ。
何か食べようかな。と思い、この世界のお金を持っていないことに気付く。うーん、困ったな。
もう少し街を見て回りたかったが、背に腹は代えられない。
場所もよく分かっていないが、元々の目的地である宿を探すことにした。
「もしくは他の生徒が見つかればいいんだけど……」
もし自分の班じゃない生徒を見つけたとしても、それはそれで案内の騎士に事情を説明すれば、目的地に辿り着くことも出来るだろう。
そう考えて、俺は宿らしき建物を探すことにした。
「--で、なんでこうなるかなぁ……」
今、俺の目の前にはナイフを持ったチンピラ風の男が3人いる。
そして俺の背後には俺より年下だと思われる女の子が1人。更にどこかを刺されたのか、俺の隣で血を流しながら倒れている執事風のおっさんが1人。
「ヘヘヘ、だから金さえ寄越せば手荒なことはしないって言ってんだろ」
「そうそう、ちょっと可愛がってあげるだけだから」
「痛いのは最初だけだから心配すんなって。ひひ」
俺の背後にいる少女にチンピラ共が声をかける。
恐怖を感じているのだろう。少女は震えながら俺の服を掴んでいた。
「そのセリフってどう考えてもチンピラっていうか小物感満載だけど大丈夫?」
「うるせえな!! 大体誰だテメェは!! いいとこだったのに邪魔しやがって!!」
「いや、本当に通りすがっただけなんだけど……」
ただ宿を探して歩き回ってただけなんです。そしたらなんか、この女の子がおっさんを引きずりながらこっちに走って来るもんだから、つい足を止めてしまっただけなんです。
「コイツが何者だろうとかまやしねえ!! やっちまえ!!」
「ええ……」
全く会話が成立せず、いきなり3人まとめて襲い掛かってきた。
「だからさぁ……」
先頭を走る男が持つナイフの柄を下から蹴り上げ、そのまま逆の足で男の顔を蹴り付ける。
「ちょっとは話を……」
蹴り上げたナイフをジャンプして掴み取り、2番目の男の肩を狙って投げ付ける。
「聞いてってば」
ナイフが肩に刺さり、男が落としたナイフを着地と同時に拾い上げ、一番後ろにいたボスっぽい男の眼前に突き付ける。
「な……なに?」
「いや、なに? じゃなくて、俺は本当にここを通りすがっただけなんだってば」
しかももう決着付いちゃったし、人に絡んでくる割には、いくらなんでも弱すぎない?
「とりあえずどっか行ってくれる?」
「くそっ!! 覚えてやがれ!!」
お決まりの捨てゼリフを吐いてボスっぽい男が逃げて行った。おーい、仲間忘れてますよー?
「まあいいか……それより宿を探さないと……」
「あ、あの……」
あ、忘れてた。
「大丈夫だった?」
「は、はい。私は大丈夫です。ですが……」
言い難そうに少女は目をそちらに向ける。そういえばあの執事っぽい人刺されてるっぽかったし、このままじゃこの子も動くに動けないか。
幸か不幸か、今まで散々怪我は治してきたし、これくらいの傷なら聖術で治せそうだ。内臓も出てないし余裕余裕(震え声)。
俺は倒れている男に手を当て、聖術を使った。
「はい、これで大丈夫。じゃあ気を付けてね」
「え? あっ!!」
「お嬢様? わ、私は一体……」
執事っぽい人が早速目を覚ましたようなので、そっと立ち去ろうとした。が、少し歩いてすぐに足が止まってしまう。
っていうか、宿どっちだろう……
路地を出て右に行くか左に行くか悩んでいると、服の裾を引っ張られた。
「あの……もし良ければお礼をさせて頂きたいのですが……」
「あ、いや宿に行かなきゃいけなくて……」
あまり遅くなってしまうと日が暮れてしまう。夜になってしまうと俺の事を探すのを諦められる可能性もあるし、出来れば早めに見つけたい。
そう思って少女の申し出を断ろうとした時。
--グルルルッ
と、盛大に俺の腹の虫が鳴った。
「あー……」
「……フフッ」
あ、笑われた。ちゃんと見てなかったけど、笑うと可愛いな。
「よろしければ屋敷においでください。お嬢様を助けて頂いたお礼に、食事くらいは用意させますので」
「マジで!?」
「ええ、是非いらしてください。私としても命の恩人をこのまま帰すわけには参りません」
ご飯が食べられるとなれば話は別だ。っていうかついでにこの人達に宿の場所聞けばいいじゃん。なんで思いつかなかったんだろう……
「申し遅れました。私はマルシアと申します。こちらは執事のセパスチャン」
「セパスチャンでございます。恩人殿、よろしければお名前を……おや、どうされました?」
思わずずっこけてしまった。セバスチャンじゃないのかよ!? しかもセパスチャンってなんかすっごいパチモンっぽい。
「ああ、いやなんでも、俺の名前は浅倉蒼汰。蒼汰って呼んでくれ」
「ソータ様……ですか。良い名前ですね。それと、先ほどはありがとうございました」
「気にしないでくれ。本当に偶然通りかかっただけなんだし」
「それでも無関係の私を助けてくれました。恩には恩を。これは我がレブル家に代々伝わる教訓ですから」
レブル家……? なんだろう。なんかその名前聞いたことあるような……しかもついさっき。
「それでは僭越ながら私めが屋敷へ案内致します。さ、お嬢様も参りましょう」
「ええ、ソータ様。ついてきてくださいませ」
なんとなく嫌な予感がしつつも、俺はセパスチャンとマルシアの後をついて行くのだった。
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