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乗り物を調達しよう

遅くなりましたが今回分です。

ちなみに蒼汰さんは身体強化中はテンションが変になります。多分高揚感的な何か(本編で語られない設定)


 全力で走り続ける事数時間。


 既に物言わぬ屍と化したレナを背負いながら一路王都へと向かう俺。

 このくらいで気を失うとは情けない……


 恐らく一日中走り続ける事が出来れば王都には着くだろうが、まず俺もスタミナがもたないし、どこかで休息をとる必要がある。

 レナは急かすかもしれないが、これでも馬車より早く移動している自信はあるし、これ以上を求められても困るしな。

 とは言っても、俺もマルシアやミアが心配だし出来れば早く駆け付けてやりたい。クラウス? アイツは大丈夫でしょ。

 この前の魔族くらいの相手なら普通に勝てると思うし、多分。


 なんせ俺のスペシャル鬼ごっこにそれなりに耐える事が出来てたし。ちなみに普通の鬼ごっことは違って、タッチされたらその場所を斬られます。

 文字通り死に物狂いで動きについて来たもんなぁ。スピード上げる度に顔がヒクついてたけど。


 それにしたってペース配分をどうするかだ。全力で走って王都に着いたとして、体力が尽きた状態だとそれはそれで困る。

 出来れば何かいい乗り物があれば良いんだけどな……馬車より速い乗り物ってそれこそ魔物くらいしかない気がするけど--ん?


 あ、魔物を乗り物にするって手もあるのか。言う事聞くかは分からないけど、誠意を見せれば従ってくれるかもしれないしな。


 そうと決まれば走りながら魔物を探してみる事にしよう。

 確かコルの村に向かう途中でも色々見かけたような……


 と、そこまで考えてから気が付く。そういえば道中ででっかいのが居たな。普通に考えれば従わせるのは難しそうだけど。


 思えばなんでこんなところに? とびっくりしたけど、今考えれば都合が良い。

 あれだけ巨大なサイズだったんだし、ちょっと飛び上がれば見つかるかもしれない。


 そう思った俺は足を止め、レナを地面に下ろす。


「おーい、レナ起きろー」


 ペシペシと頬を叩く。なお起きないとだんだん速度が上がっていきます。あしからず。


「痛い、いたっ、いたい!!」

「あ、起きた」

「はっ、師匠、ここは!?」


 あまりにもベタなセリフを吐くレナ。いや、気を失って気が付いたら景色が変わってるともなれば無理もないのか。


「王都に向かってる途中の道だ。俺が走り出してから十分もしない内に気を失ってたみたいだったから担いできた」

「まさか人間があんな速度で走ると思わないです」


 失礼な。身体強化さえすればこれくらいは普通だと思うぞ。多分。


「で、そろそろちょっと疲れて来たから休憩ついでに乗り物が見つかれば良いなぁと」

「乗り物? 何かアテがあるんですか?」

「ちょっとな。上から見下ろせば見つかるんじゃないかと思ったから起こさせて貰ったんだ」

「あ、私も飛んでみたいです!!」


 自分でやれ。と言いたいところだが、今回もただ浮くだけだし、別に一人だろうが二人だろうがそれほど差はないか。


「じゃあしっかり掴まってろよ。今日はただ風魔法使って浮くだけだから」

「自分を浮かせる魔法なんてただの風魔法じゃないです」


 そうなの? 別に難しいものでもないと思うんだけど……

 不思議そうな顔をして首を傾げる俺を、レナは更に不思議なものを見る目で見てきた。俺ってそんなに非常識なんだろうか……


 まあいいか、と気にしない事にして宙に浮き始める。

 基本的に下から風を吹き上げるだけなのだが、ただ吹き上げるだけでは横にずれたら落下してしまう。

 なので微調整は必要だが、それほど難しいものではない。


「わわっ、浮いてる。師匠!! 浮いてますよ!!」

「いや浮かせてるんだからそりゃ浮くだろう」


 なんか変な言葉になってしまった。他に言い様もなかったので仕方がないが。

 レナを抱えたまま高度を上げていく。すぐに見つかるかと思ったが、木々などが邪魔をしているためか、意外とその姿を捉える事が出来ない。

 確かその辺の木なんかよりも大きかった気がするんだが……っといたいた。


「ほらレナ、あれが俺達の乗り物候補だ」

「どれですか?」


 どうやらレナは俺にしがみついていて見えていないらしい。

 仕方がないので俺はその魔物がいる方向を指差した。


「あ、あれですか。大きいで……すね……?」

「だろ? あれなら俺達二人くらい余裕で乗れるよな」


 二人どころか十人以上乗っても大丈夫かもしれない。


「いや、でも師匠あれ……」

「どうした? あ、もしかしてあれって乗り物にしちゃダメなのか?」


 そんな法律とかあるなら先に教えておいて欲しい。なんせ俺はまだこの世界の世情には疎いのだから。


「いえ、そんな法はないですけど……」

「なんだ、問題ないのか。じゃあ早速行ってみるか」

「あの、師匠? もしかして本気で言ってます?」


 と、レナが問いかけてくる。失敬な。俺は大真面目だ。


「当たり前だろ? あれに乗って行けば王都なんてきっとひとっ飛びだぞ?」

「いやそりゃそうですけど!? でもあれってどう見てもドラゴンですよね!? え? なんでドラゴンがこんなところに? え?」

「理由は知らないけど、いるんだから良いんじゃないか?」

「いや良くないですよ!! どう考えてもあんなの天災みたいな存在じゃないですか!!」


 あ、やっぱり恐れられてるんだドラゴン。カッコいいのに。


「それに師匠、さっきからあれに乗るって言い張ってますけど、一体どうやって」

「決まってるだろ?」


 そう、昔から交渉とは意思疎通から始まるものだとエミリー母さんも言っていた。


話し合い(殴り合い)だ」

「ええ……?」


 言葉を交わすか拳を交わすかだけの違いでしかない。ザッツコミュニケーション。これこそ人類の最大の武器だと思う。

 相手は人じゃないけど。


「よしじゃあ早速行くか!!」

「え!? ちょっと待って師匠!! 私ドラゴンとか戦った事なんてないですよ!?」

「大丈夫だって、話し合う(殴り合う)だけだから」

「どこが大丈夫なんですか!! 待って! まだ心の準備がああああ!!」


 レナがギャーギャー騒いでうるさいので、もう一度肩に担ぎ直してドラゴンが見えた方角に向かう。

 程無くしてその巨体が姿を現してきた。

 よく見ればその身体は燃えるように赤く、まるで魔力を流した緋徹のような紅色だ。だからだろうか、俺は余計にコイツが気に入った。

 どうやらあちらも俺達の存在に気付いたようなので、俺は気さくに声をかける。


「こんにちは、俺の乗り物になってくださいーっと!!」

「グルァッ!?」


 いきなり現れて蹴りを放ってきた俺に驚いたのか、ドラゴンが間抜けな声を出す。

 大丈夫、まだこれは挨拶だ。話し合いはこれからである。


 レナを担いでいるため片手は塞がっているが、コイツからはそれほど威圧感も感じない。だから多分大丈夫だと思って話し合いを開始する。


「ところで俺の言葉は分かるか?」

「グルギャアアアアォォ!!」


 どうやらご立腹らしい。ファーストコンタクトは失敗のようだ。

 仕方ないので誠意を見せる事にする。拳で。


 ドラゴンが炎のブレスを吐き出すが、俺は気にせず前へと走り出す。

 ブレスが俺の元へ届くよりも早く懐に飛び込んでしまえば何の問題もない。


「おりゃっ」


 --ズンッ、と大きな音を立てて俺の拳がドラゴンのどてっ腹へと突き刺さった。何コイツかったい!!


「グブゥッ!!」


 だが弾かれるほどの硬さではない。十分効いているみたいだし。

 ドラゴンはブレスを吐くのを止め、今度は懐に入った俺を踏み潰そうと片足を上げた。


 が、俺は既に空間魔法を使って足場を作ってある。

 タンッタンッ、と軽快な音を立ててドラゴンの顔を目掛けて駆け上がる。

 そして無防備になっている顔を下から蹴り上げた。


「ぐぎゃぅ」


 酷く間抜けな声を上げてドラゴンの顔が跳ね上がった。

 そのまま上へと駆け上がり、仰け反ったドラゴンの顔へと近付いていく。


「これで大人しく言う事を聞いてくれるとありがたいんだけどな」


 俺は拳を振り上げ、そして--


 --ガズンッ!!


 ドラゴンの頭を思いっきり殴りつけた。


「フガッ!!」


 なんとも言えない悲鳴? を上げてドラゴンの顔が地面へと叩き付けられた。なんだろう、思ったよりも弱い気がするんだが。

 俺は足場を伝って地上へと降り立った。


 そして地面に倒れ伏すドラゴンの顔のところまで近付いていく。


「鬼……」

「ん? なんか言ったか?」

「いえなにも」


 レナが何か言った気がするがきっと気のせいだろう。

 一方ドラゴンはというと、特に動く気配もなく、地面に突っ伏したままになっていた。


「で、言う事聞く気になってくれた?」

「グガッーー」

「ちなみに言う事聞かない場合はこのまま顔面蹴り上げるけど」

「くるぅ」


 まるで媚びるような声を出して四本の足をだらんと伸ばし、うつ伏せ状態になる。これはひょっとして犬や猫と同じく、服従のポーズをとっていると捉えて良いのだろうか。普通は仰向けにするもんだと思うが……

 ともあれ俺の話を聞く気になってくれたようだ。やはり話し合いは大事だと思う。


「よしよし、いきなり邪魔して悪いな。ちょっと急いでたもんで」

「ドラゴンを拳で説き伏せるとか聞いた事ない……」


 困った時は大体拳が解決してくれるって母さんが言ってた。

 ちなみに拳で解決しなかった場合は剣が解決してくれるとも言ってた。世の中なんてそんなもんだと思う。


「で、俺達はこの先の王都に行きたいんだが、お前に乗せて行って欲しい。頼まれてくれるか?」

「グルッ!!」


 ドラゴンは勢い良く起き上がり、軽く吠えると共に前足を少し上げた。

 きっと了承のポーズだと受け取って良いだろう。まったく敵意もないようだし。

 その予想は正しかったようで、ドラゴンは再度地に伏せ、背中に乗れと促してきた。


「ほらレナ、乗せてくれるってさ」

「ドラゴンに……私がドラゴンに……」


 若干虚ろな目をしながらぶつぶつと呟くレナ。ちょっと怖い。


「早く乗らないと置いてくぞ」

「の、乗ります!! 乗りますから!!」


 オドオドビクビクと言った様子でドラゴンの背へとよじ登るレナ。ぬう、ファンタジーと言えばドラゴンに乗る事だと思ってたからてっきり喜ぶかと思ったが、それよりもドラゴンが怖いようだ。コイツもよく見たら可愛いのに。何よりこの紅の色が良い。


「よし、じゃあ王都に向かって飛んでくれ。っていうか飛べるよな?」

「ぐるぁっ」


 もちろんだ、と言わんばかりにドラゴンが吠える。というかところどころ高い声で鳴くんだが、ひょっとしてコイツまだ幼いんだろうか? だとしたらもう少し優しくしてやるべきだったか……


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、バサッ!! と大きな音を立ててドラゴンが翼を広げる。

 思っていた以上にその翼は大きく、少し感動を覚えてしまった。


「よしじゃあ頼むぞ」

「ガルッ!!」


 ドラゴンはバッサバッサと翼をはためかせる。

 どういう仕組みなのかは分からないが、ドラゴンの巨体が宙に浮かび、あっという間に地面が遠くなっていった。

 これは自分で浮くよりも気持ち良いし、何より浮くというより確かに飛んでいるのだ。妙な浮遊感もなく、非常に安定感がある。


「ぐーっ!!」


 気合を入れたのかなんなのかは分からないが、ドラゴンがまた一声吠えてから王都の方角を目指して加速し始めた。

 徐々に風の抵抗が襲って来るが、それは風魔法を前方に展開して落とされない様に調整する。


 --あ、これ凄く気持ち良いな


 飛ぶというのはこれほどまで爽快なのかと驚きながら隣のレナを見る。

 するとレナは恐怖の方が強いのか、ドラゴンの背にしがみついていた。


「そんなに怖がらなくても」

「むしろこれで漏らしてない私を褒めて欲しいくらいです」


 などと言う始末だった。


 ドラゴンの速度は素晴らしく、空を飛んでいる分、俺が走るよりも早く王都に到着する事が出来そうだった。

 この調子なら早ければ今日中には王都に着く事が出来るかもしれない。

そういえば四次元殺法ってあるけど、そもそも我々は三次元の住民なわけなので、まさに次元が違うわけですね。

ちなみに別次元である時点で、相手の次元には本来介入出来ないので四次元殺法は全く意味のないうんたらかんたら。


あとがき? 四次元殺法コンビの話じゃなくて?

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