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召喚されて

スキル制を採用しまんた。

「この場では皆さんも落ち着かないでしょう。椅子を用意しますので、ついてきてくださいませんか?」


 未だ混乱冷めやらぬ俺達に対し、アリシアが声をかけてくる。

 俺達や魔術師っぽい人達、騎士っぽい人達と、大勢の人が集まるこの部屋で、凛としたその声はとてもよく響いた。

 なんにしてもここでガヤガヤしてても仕方ない。俺はそう思い、アリシアの後をついていく。


「朝香、大丈夫か?」


 少し青ざめた顔をしていた朝香を見つけ、声をかける。


「……大丈夫」

「そうか、あんまり無理はするなよ」


 そう言って俺は歩き出した。心配だけど、多分朝香も俺にまとわりつかれるの嫌だろうしな。

 程無くして応接室のような部屋に通された。そこには横に長いソファがいくつもあり、俺達全員が座るくらいは問題なさそうだ。

 ……あんまり目立つとめんどくさそうだし、一番後ろの端っこに座ってよう。


「さて、皆様をお呼びしたのは他でもありません。先ほども申し上げましたが、この世界を救って欲しいのです」

「どういうことだ?」


 アリシアの言葉に対し、一番先頭にいた男子生徒が疑問を返す。


「それをこれから説明させて頂きます」


 それからアリシアによって、この世界の現状が説明された。


 150年前に、俺達と同じく異世界から来た勇者が魔王を倒したこと。

 魔王が倒された後、新たに魔王を継いだ魔王の娘と、勇者のパーティに居た賢者が結婚し、魔王の国とレブル王国が同盟を結び、平和になったこと。

 同盟を見届けた後、勇者は妻達と自分の世界に帰ったこと。

 ところが最近になり、魔族が各国にちょっかいをかけていること。

 魔王とは連絡が取れておらず、恐らく平和を嫌う魔族が魔王をどこかに幽閉、あるいは封印した可能性があること。

 魔族がモンスターを量産し、各地で被害が増えていること。

 モンスターは騎士や冒険者でなんとかなるが、魔族は非常に強く、並の人間では太刀打ち出来ないこと。


 といった内容だった。

 つまり要約すると、「魔族超強い。異世界から勇者呼び出して助けて貰おう」といったところだ。


「なるほど、状況は今の説明で大体理解出来た。でも俺達は今までモンスターなんかと戦ったことはない。本当に戦力になると思ってるのか?」


 先ほどアリシアに対して疑問を返した男子生徒が、更に疑問を呈す。そういえば俺クラスメイトの名前全然知らないや……


「はい、異世界から召喚された方は勇者として、女神の加護が与えられると聞いています。そして召喚される際に、いくつかのスキルや魔法の才能を与えられると……」

「スキル系の異世界物か。わくわくするな」


 さっきの男子生徒とは別の男子生徒が、さも知っているかのように言った。彼は何か強力なスキルを持っているんだろうか。


「皆様には自分のスキルを確認し、そのスキルを成長させて頂きたいのです。もちろんスキルとして所持していないことも、当然努力次第で鍛えることは出来たり、新たなスキルを習得したりしますが、その成長率は元々持っているスキルとは天と地ほどの差がありますので……」

「そのスキルの確認はどうすれば?」

「ステータスを見たい。と念じれば自分だけがステータスを確認することが出来ます。他人に自分のステータスを見せたい場合には、ステータスオープン、と口に出す必要があります」


 そのアリシアの説明を機に、皆一斉に黙り込み、頭上を見上げ始めた。恐らく自分のステータスを確認しているんだろう。


「なるほど、これが俺のステータスか……確かにスキルがいくつもあるな」

「いくつも……ですか。流石は勇者様ですね。普通はあっても1、2個。多い者で3個から5個もあれば良い方なのですが」


 どうやらあの男子生徒は相当スキルが多いらしい。今のアリシアの発言を聞いて、満足そうに頷く者、あるいはスキルが少なかったのか、俯く者がいた。

 あ、俺もステータス確認しといた方がいいのかな。


 -----------------------

 名前:浅倉蒼汰アサクラ・ソウタ

 年齢:16歳

 性別:男

 種族:人族


 スキル:<料理Lv4><洗濯Lv1><掃除Lv2><荷物持ちLv6>

 -----------------------


 えー……スキルってこういうもんだっけ……?

 元の世界では散々鍛えられてたんだし、もっとこう、剣術とか槍術とかさぁ……

 しかもなんだよ荷物持ちって、これだけやたらレベル高いし。


「アリシア、だったか。俺達は自分のステータスが良いのか悪いのか分からない。出来れば希望者はステータスを見せるから、どの程度なのか教えて欲しいんだが……」


 最初に発言した男子生徒がアリシア、と呼び捨てにしたことを耳にして、周りの騎士達が一気に敵意を露わにする。


「良いのです。下がりなさい」


 それを察知したアリシアが制止の声をかける。少し敵意は収まったものの、どうやら納得はしていないらしい。

 まあ当の本人も、周りの人間もそんな気配を感じていないようだが。


「そうですね。貴方の仰ることも最もです。それでは代表して、貴方のステータスを見せて頂いてもよろしいでしょうか」

「分かった。≪ステータスオープン≫」


 -----------------------

 名前:獅々見勇輝シシミ・ユウキ

 年齢:16歳

 性別:男

 種族:人族


 スキル:<剣術Lv2><光魔法Lv1><雷魔法Lv1><火魔法Lv1><水魔法Lv1><風魔法Lv1><地魔法Lv1><身体強化Lv1>

 称号:<勇者の卵>

 -----------------------


 おー、めっちゃ勇者っぽい。っていうかやっぱあんじゃん。剣術とか魔法とか。


「これは……凄いですね。恐らく王国中探しても高ランクの冒険者か、騎士隊長クラスでなければ、このスキルの数はいないかと思われます」


 ってことはあの獅々見って奴が勇者に一番近いのかな? なんか性格的にもそんな感じだし。

 で、後は戦士タイプとか、魔法タイプとかある程度特化したスキルを持った奴がいるとかか。


「くっ、勇者ポジションはアイツか」

「なら俺はチート魔術師ポジションで……」


 とか言ってる奴等もいるけど、いいじゃん、魔術師ポジションってことは魔法スキル持ってるんだろ?

 俺なんて家事全般と荷物持ちだよ?


「そういえばさっきの説明にはなかったが、称号ってなんだ?」

「称号はその名の通り、その人が何か偉業を達成した際に世界から認められたことを示す物です。称号に応じてステータスが上がると言われています」


 称号かぁ、そういえばさっきスキルが残念過ぎて見てなかったな。あんなスキルじゃ称号も酷いことになってそうだが。

 そう思いながら、もう一度≪ステータス≫と念じる。


 -----------------------

 名前:浅倉蒼汰アサクラ・ソウタ

 年齢:16歳

 性別:男

 種族:人族


 スキル:<料理Lv4><洗濯Lv1><掃除Lv2><荷物持ちLv6>

 称号:<剣聖を継ぐ者><槍聖を継ぐ者><弓聖を継ぐ者><魔導を識る者><聖人を継ぐ者><拳聖を継ぐ者><盗賊王を継ぐ者><アルケミーマイスター><軍師><魔王の卵><賢者の卵>

 -----------------------


 ……は?


「なんじゃこりゃ……」


 違う意味で酷いことになってた。全くもって意味が分からない。何剣聖とか槍聖って?

 いや、心当たりがないでもないけど、いくらなんでもさぁ……しかも魔王の卵とか、これ人に見られたらヤバくない?


「あのー、すいません。これって人に見られたくない時はステータス隠したりって出来るんでしょうか……?」


 思わずアリシアに質問してしまった。

 質問してから思ったが、こんなこと聞いたら怪しまれてもおかしくはないというのに。


「はい、ステータスオープンと唱える際に、見せたくない部分を隠すように念じれば可能です。ですが、ステータスを隠すということは、隠さなければいけない理由があると判断されて信用を落とす可能性もありますので、あまりおススメは出来ませんが……」

「いや、そうなんですけど……」


 仕方ない。俺のスキルを理由にして納得して貰うか。


「えっと、俺のステータスがこんなのだったんで……≪ステータスオープン≫」


 俺は皆の前でステータスを表示した。。


 -----------------------

 名前:浅倉蒼汰アサクラ・ソウタ

 年齢:16歳

 性別:男

 種族:人族


 スキル:<料理Lv4><洗濯Lv1><掃除Lv2><荷物持ちLv6>

 -----------------------


「これは……なるほど、分かりました。申し訳ありません」

「いえ、良いんです……」


 なんとなく憐れむような視線を感じるが、俺は内心ホッとした。


「それで、俺達はこれからどうすればいいんだ?」


 俺の事など意に介していないかのように、獅々見がアリシアに質問する。


「そうですね。流石にいきなり戦場に立つことは希望していません。戦闘のスキルを持っている方は騎士団養成学校、あるいは魔術師養成学校へ通って頂きます。非戦闘のスキルしか持ってない方は王立の学院に通って頂くつもりです」

「それは本人の希望は通るのか?」

「はい、最大限善処させて頂きます。例え戦闘のスキルを持っていても、戦う事が出来ない方もいらっしゃるでしょうし。私としても悪戯に犠牲を増やしたくはありませんから」


 俺は普通に学院に通えば良さそうだな。別に戦いたいわけでもないし。


「学院は全寮制となっていますので、寝食に関してはご心配は無用です。本日は人数分の宿をとっておりますので、そちらでお休みください」


 アリシアがそう告げると、周りに居た騎士達が、ソファの列に合わせて1人ずつ向かっていく。

 当然俺の座っている一番後ろの列にも向かってくるわけで。


「よし、それじゃあお前達は私が案内する。護衛も兼ねているからあまり離れないようにな」


 あれ? 女の声?

 兜を被ってるから全然分からなかったけど。そうか、そりゃ女性が騎士になることだってあるよな。

 女騎士はこちらをチラリと見た後、すぐに踵を返した。ああ、きっとあの残念スキルのせいだろう。


「ほら行くぞ。早くついて来い!」


 怒っている。というわけではないだろうが、威圧を感じる声に他の生徒達は慌てて立ち上がり、女騎士の後を追う。

 エラそうだなぁ……と思いつつのっそりと立ち上がる。別に急ぐ必要もないと思うんだけどなぁ。

 とりあえず今日は色々あったし、とっとと布団で横になりたいな……


 そんなことを考えながら、俺も女騎士の後を追うことにした。




ステータスとは言っても、基本的に見えるのはその人のプロフィールとスキル、称号情報だけです。

HPやMP、他身体能力を数値化するのってなんか違和感があるので不採用としました。

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