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コルの村

ストックがなくなったでござる。

明日からの三連休でまた書きまくらんと……

「おーい新入り、表に看板出しといてくれー」

「はいはいーっと」


 えーっと看板看板……ああ、あった。これだな。

 アルトゥス語で書かれた『営業中』の看板を見つけ、両手に抱えて店の前に出る。

 確か入り口の左側に置くんだったな。この前右側に置いたらカレンに怒られたっけ。

 なんでも村の作りからして、左側の方が良く見えるから、という理由らしい。店の名前ならいざ知らず、営業中なんて看板が右にあろうが左にあろうが同じだと思うんだが……商人の様式美という奴だろうか、よく分からん。


「置いてきました」

「おう、ご苦労さん。もう少ししたらケティの奴が来るから、そしたら休憩してきていいぞ」

「ういっす」


 あれから一か月程経っただろうか、俺は今コルの村でとある商会の支店で働いている。

 というのも、この支店はカレンの父が会長を務めるセラウリ商会が営んでいるらしく、当然その娘であるカレンは(実際はどうあれ)歓迎された。まあランドの件もあるから、もしかしたらカレンが嫌われている可能性もないではない。あの性格だし。

 そんなセロリを発音よくしたような商会だが、この数年で一気に力を付けて来た商会らしく、大陸中に店を構えるような大規模な商会とまでは言わないが、中堅どころからは頭一つ抜けた組織として注目されているらしい。


 ちなみにその大躍進の原因はカレンだ。

 後から知った事だが、カレンは<鑑定スキル>を持っているらしい。

 一か月前のあの時、俺が料理スキルを持っていると呟いたのは、最初のやり取りで見たからだそうだ。

 ただなんでも見えるわけではなく、ステータスなんかは最後に人前に晒した情報のみ、つまり最後に<ステータスオープン>をした情報を見る事が出来るそうだ。

 なので俺も基本的な情報とスキルはカレンに見られてはいるが、称号については見られていない。まあカレンに見られたところでそれほど大きな問題はないかもしれないが。


 閑話休題


 なんだかんだがあって今コルの村で落ち着いて生活はしているが、俺は王都で犯罪者扱いをされている。

 なので王都に戻る事は難しいし、比較的王都から近いコルの村にその情報が行き渡る可能性もある。王都から来た人に見つかってバレるとかね。

 そうなるとまた別に地盤を作らなければいけないので、ずっとこの村にいるつもりはない。ある程度この世界の情報や物資が準備出来たらまた旅立つつもりだ。地図とかあればいいんだけどなぁ。


「おはようございまーす」

「あ、ケティさん。おはよう」

「おやソータくん、相変わらず早いねえ」


 販売員のケティさんが出勤してきた。よし、これで休憩に行ける。


「じゃあ後はお願いしますね」

「はいはい、この後はまたお嬢とお出かけかい?」

「うーん、今日は特に声もかけられてないし、一人でぶらぶら--」

「ソータ!! 出かけるわよ!!」

「--出来なくなりました」

「……大変だねえ」


 ケティさんから憐みの視線が向けられる。

 それにしてもなんでコイツは狙ったように出てくるのか。


「はいはい、ちょうど今ケティさんが来たから付き合いますよ。お嬢様」

「だから名前で呼べって言ってるでしょ!!」

「店の中では立場もあるんだから別に良いだろ……」


 仮にもここで働いている以上、カレンを呼び捨てになんてしたら先輩方から白い目で見られかねない。

 とは言え、毎日毎日俺がカレンに振り回されている事は周知の事実なので、実際のところはそこまで問題はないのかもしれないが。


「まあいいわ、それじゃ行くわよ」

「はぁ、ケティさん。よろしくお願いします」

「若いっていいねえ、行ってらっしゃい」


 いや、あんたも若いでしょうが。


 カレンに引きずられるようにして店を後にする。にしても今日はどこに連れて行かれるのだろうか。

 そもそもコルの村はそれほど広くない。そしてこう言ってはなんだが、特別見るような物もなかったと思うんだが……


「で、今日はどこに?」

「どこにじゃないわよ。貴方男でしょう? だったらエスコートするのが務めよ。違う?」

「ええ……?」


 とんでも理論である。出かけるぞって引っ張って来たのはアンタだろうが。

 まあこれもいつもの事ではあるので、流石に慣れては来た。


「って言ってもカレンだってほとんど村は回っただろ? 今更エスコートも何もさ」

「分かってるわよ。その中でも私が楽しめそうなところに連れて行きなさい」

「このじゃじゃ馬が」

「なんですって!!」


 店を出れば俺達の関係は対等だ。というかどちらかと言えば命を助けた俺の方が立場が上であってもいいのかもしれないが、現在進行形で衣食住の提供と、俺の知りたい情報については調べてくれるという対価を貰っている。

 対価を支払っている以上、対等。だからこそ今のような直接的な文句を言っても問題はない。


「そんなんじゃ嫁の貰い手がなくなるぞ」

「ふんっ、私を誰だと思ってるの? セラウリ協会会長の娘よ? これでも色んな男の人から声をかけられてるんだから」

「まあ口を開かなければ美人だしな」

「当然……って一言多いのよ、アンタは!!」


 怒りながらも口元がニヤけてるぞ。本当分かりやすいなコイツ。


「とりあえずその辺適当にぶらぶらしてから酒場にでも行くか。あそこのミルクは美味しいしな」

「ああ、あそこね。確かに採れたてだからか美味しいわよね」


 コルの村には店が少ない。だから酒場が昼から営業していて、酒だけじゃなく、子供向けの料理や飲み物も揃っている。

 なので酒場には一日中誰かしらが席に着いている状態だ。料理もなかなか美味しいのが良い。


「おや、そこにいるのはカレン様ではないですか」


 と、カレンに向けておもむろに声がかけられる。


「おはようございます。今日もいい天気ですね」


 カレンは笑顔で村人に挨拶をする。流石商人。変わり身早いな。

 コルの村で唯一店を出しているセラウリ協会はこの村でも重宝されている。

 当然その関係者であるカレンに対しては、村人達も丁寧に接するようにしているようだ。


「おはようございます。そういえばカレン様、聞きましたか?」

「何でしょうか? 何か面白い話でもありますの?」

「ぷっ」


 ありますの? だってさ。いくらなんでも無理がありすぎ--いたた、腕を抓るのは止めてくれ。


「近々王都から勇者様達がこの村へ来られるそうですよ。なんでも演習の一環で、道中の村での過ごし方や振る舞い方を学ばせるんだとか」

「まあ! 勇者様が?」


 えー……せっかく離れたと思ったのにあっちから近付いて来るのかよ……


「村長も今からもてなしの準備をすると張り切ってましたから。近い内にカレン様の商店にもお話が行くかもしれませんね」

「そうですね……貴重な情報ありがとうございます」

「いえ、お邪魔してすいません。それでは私はこれで」

「ええ、また」


 村人に軽く手を振り、別れを告げるカレン。その後ろ姿を見ていると、ポニーテールがピコピコと動いているのが見えた。

 どうやら良い事を聞いたと喜んでいるらしい。っていうか感情がポニーテールに反映されるとか犬かなんかか。


「聞いたわね?」

「今までお世話になりました」

「なんでよ!?」


 だってアイツ等が来るんだろ? そしたら俺が王都から追放された事が明るみになるわけだ。


「俺の事情は話したよな? だったらどうなるかくらい、カレンなら分かるだろ?」

「そうね……よくて村八分。悪くてまた追放かしら」

「まあアイツ等が来るまでに旅の準備は整えられるだろうし、それまではお世話になるつもりだけど」


 近々とは言っていたが、何も今日明日に来るわけじゃないだろう。だったら色々準備する時間くらいはありそうだ。


「はぁ……まったく、なんで本当の事を言わないのよ」

「言って信じられるか?」

「うーん……正直言って言葉だけじゃ無理ね。貴方の場合」

「だろ? それに王都にはそれほど未練もないし、どちらにしろ旅は続けるつもりだったしな」

「そう……」


 俺達の間に微妙な空気が流れる。

 なんだかんだ言ってカレンとは仲良くはやれてたと思うしな。別れるのはそれなりに寂しさもあるが、俺を匿ったとかで巻き込んでしまっては申し訳ないし。


「まあ残り数日よろしく頼むよ」

「……分かったわ」


 納得はしていないようだったが、こればっかりは仕方ない。

 それにカレンも商店の代表者として獅子見達とは顔を繋いでおきたいだろうしな。

 いくら俺に恩を感じていたとしても、損得で考えればどちらが得かは一目瞭然だ。


 とりあえず食料とか準備しないとなぁ。それから近くの街がどこにあるのか聞いておかないと。


お正月効果も終わったので、ここからPV数増やすのが一つの壁であります。

まずはご愛読頂いている皆さんに満足頂けるように、でもって新規の読者様も増やせるように頑張るマン


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