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裏切り①

平日がやってくる……平日がやってくるぞおおおおお!!

「はぁ……」

「ちょっとアンタ達!! 私にこんな事をしてただで済むと思ってるの!?」


 こんばんは、浅倉蒼汰@捕縛中です。

 今日は色々ありました。ありすぎました。

 王都を追放されてコルの村を目指していたら商人の一行と出会ったんです。そして銀貨3枚を支払い、道中の雑用を引き受ける事で食事にありつく事が出来ました。

 で、そろそろ寝るかー、というところになって、あれよあれよという間に隣にいる一行の主人であるお嬢様と共に両手を縛られて転がされています。

 え? 何を言ってるか分からない? ですよね。俺も全然意味が分からない。


 どうやら従者が裏切ったらしい事は分かる。さっきまでの人の良さそうな笑みはそのままなのが薄気味悪い。


「おや、こんな事になってもお嬢様は気丈であらせられる。てっきり泣いて助けを呼ぶとでも思ったのですが」

「ふん、どうせ人が来そうにないところなんでしょう!! それにこんな時間にそうそう都合良く人が通らない事くらい私だって分かるわよ!!」

「そうですか……まあそのくらいの方が良いのかもしれませんね。彼等にとっては」

「おい旦那ァ、約束は守ってくれるんだろうなぁ?」


 護衛のリーダーだろうか、男がランドに向けて下卑た笑いを向ける。ああ、やっぱりこいつ等もグルか。


「もちろん、私はお嬢様さえ消えてくれれば構いません。なのでどう楽しもうが後は貴方達の自由ですよ」

「ぐひひ、この女はきっとイイ顔をしてくれるんだろうなぁ?」


 うわぁ、ぐひひとか笑う人初めて見たわぁ。やだキモイ、こっち見ないで欲しい。


「まあ待ってください。貴方達がいたぶるだけでは気の強いお嬢様は絶望はしないかもしれません。そこで今日は面白い物を持ってきたんですよ」

「面白い物だとぉ?」

「ええ、出所は怪しい男だったんですがね」


 そう言ってランドは懐から短くて細い筒のような物を取り出し、口に咥えた。

 そしてそれを吹くと、甲高い音が周囲に鳴り響く。もしかして犬笛かな? って事はウルフとかを呼び寄せるんだろうか。


「……なんだぁ? 何も起きねえじゃねえか」

「まあまあ、見ててくださいよ」


 正直とっとと縄を焼き切るでもしてぶっ倒そうかと思ったが、せめてランドの目的くらいは聞いておく事にするか。もし他に仲間がいたら面倒だし。


「なあランドさん。なんでこんな事を?」

「ああ、そういえば居たんでしたね」

「存在忘れるくらいなら巻き込まないでくれよ……」


 本当に迷惑な話だ。しかも縛っといて存在忘れるとか新手の放置プレイか何かなんだろうか。


「まあまだ時間もあるようですしね。それに貴方にはお嬢様を殺した罪を負って貰うのですから、お礼も兼ねて教えてあげますよ」


 ああ、俺に擦り付けるって事ね。だから俺も捕まったのか、納得。

 何を待っているのか分からないが、どうやら確実に俺達の息の根を止めるつもりなんだろう。会話は出来るようだ。というか上手く言ってる時に気分を良くしてペラペラ喋るのって小悪党にしか見えないな。


「何故こんな事をしたか? そりゃあ私にとってお嬢様が邪魔だからですよ」

「私が何をしたって言うのよ……」


 どうやらお嬢様も気になるのか、先ほどより少し弱い声でツッコミを入れる。多分先ほどまでの怒りのボルテージが下がって、不安が増してきたんだろうな。


「自覚がない? そういうところですよ。私が貴方を疎ましく思っていたのは!! せっかく長年商会に勤めて! ようやく商売をする事を許されるようになろうというところに貴方が商人になりたいなんて言い出すから!! だから私が貴方の補佐なんかに命じられたんだ!! 貴方が! いや貴様があんな事を言い出さなければ私はようやく一人前の商人として認められたと言うのに!!」


 今までの鬱憤を晴らすかのように、声を荒げるランド。ああ、これ相当溜まってたんだろうなぁ……


「それに少しの辛抱だと思えばまるで従者のように私を使う!! 私は商人としての補佐を命じられたのであって、使用人ではない!!」

「だったらそれを言えば良かったんじゃ?」

「言えるわけないだろう!! 馬鹿娘の不信を買えば会長の怒りに触れる!! そうしたら私の商人としての人生は終わってしまうのだからな!!」


 なんというか、ちょっとランドが哀れに思えてきた。

 で、その馬鹿娘はどんな顔をしているんだろうか。ちょっと見てみよう。

 あ、笑ってる。相当性格悪いなコイツ。


「はっ! 何を言い出すのかと思えば。いつも言ってるでしょう? 私は価値を示しなさいと。それは父にとっても同じ、価値を示さない人間に用はないわ。分かる? 私が貴方に見出したのは使用人としての価値であって、商人としての価値ではないの。この際だからはっきり言わせてもらうわ。向いてないわよ。貴方」

「この……小娘が!!」


 ランドが怒りの形相に変わり、こちらへ向かって……来ようとしたところで、周囲がざわめき始めた。なんだ? 地鳴り?


「ようやく来たか……まったく、これだから魔物は」


 魔物? やっぱりこれはさっきの犬笛が関係しているのか?


「お嬢様、先ほどの無礼は忘れましょう。貴方にはこれから彼等の相手をして貰うのですから」

「え……?」


 音がする方に目を向けてみれば、木々の間から巨大な人の形をしたモノが次々と出て来た。

 ああ、そういう事か。なんつー悪趣味な……


「フゴオオオォォォオオ!!」

「ひっ!?」


 まあ出てくるわ出てくるわ。数十匹以上姿が見えるそれは、豚の様な顔をした巨人。いわゆるオークと呼ばれる魔物だった。

 しかも何匹か普通のオークよりも大きい個体もいる。あれがハイオークだろうか。なんかそれよりも大きいのもいるけど……なんだっけ?


「オ……オークキング……」

「ええ、その通り。正直買った時は信じられませんでしたが、この笛はオークを呼び寄せる事が出来るのですよ。お嬢様、これからご自分がどうなるかお分かりですね?」

「……」


 流石のお嬢様も顔面蒼白だな。

 確かオークは人間の雌も性欲の対象として見るんだっけか。しかも生殖能力が半端ないらしい。

 つまりランドは彼女をオークに犯させるつもりなんだろう。まったくもって趣味の悪い事だ。

 ん? 待てよ? さっきなんて言ってたっけ……


 --この笛はオークを呼び寄せる


「あのさ、一つ聞いていい?」

「何ですか? 遺言なら聞くだけ聞いてあげますよ」


 ランドはお嬢様の表情を見て溜飲を下げたのか、また先ほどまでの薄い笑い顔に戻っていた。


「呼び寄せるだけ?」

「はい?」

「操るんじゃなくて?」

「貴方は何を」

「あぁぁぁああ!!」


 と、聞きたくもない男の悲鳴が聞こえて来た。目を向けてみれば、予想通りというかなんというか、護衛の男達がオーク達に襲われている。


「た、助けてくれ!!」

「なっ!?」

「この野郎!! 話しが違うじゃねえか!!」


 護衛のリーダーがランドに怒りを向けるが、周囲から大量のオークが迫っている。これは逃げるのも無理だろう。


「くそっ!!」


 リーダーが剣を抜き、オークに斬りかかる。オークは手に持った棍棒でリーダーの剣を防ぎ、もう片方の手でリーダーを払った。


「ぶべっ!!」


 リーダーが吹っ飛び、地面に倒れ伏す。ピクピクしてるのでまだ息はあるようだ。


「ブヒヒヒ」

「うわキモッ」


 先ほどのリーダーの笑い方もキモかったが、こちらはもっと気持ち悪い。

 何せ豚の顔でリーダーと同じ様な笑い方をしているんだからたまったもんじゃない。

 そしてそのオークが棍棒を振り被り……


 --グチャリ


 と、リーダーの身体を潰した。辺りを見てみたが、他の護衛も既に全滅させられているようだ。


「で、護衛は全員いなくなっちゃったけど?」

「ひ、ひいいいっ!!」


 あ、逃げた。いやもう四方囲まれてるんだからいくらなんでも……

 あ、捕まった。言わんこっちゃない。


「た、たすけ、助けて」


 オークに身体を握られ、うわ言のように助けを求めるランド。いやそれは都合が良すぎってもんでしょう。

 ん? なんだろう、まだ殺されてないみたいだけど……うわぁ。

 とりあえず縄を火魔法で焼き切った俺はお嬢様の前に立って視界を塞ぐ。


「ちょ、ちょっと貴方、縄は? それになんでそこに立つの?」

「縄は焼き切った。で、こっちは見ない方が良い」


 知らんかった。オークにも男色ってあったんだな……出来れば知らないままが幸せだったかもしれないが。

 で、行為を終えたオークがそのまま強烈なハグでランドを潰していた。

 愛が重すぎて怖い。

いったん連休が終わったので、平日は基本的に一日一話のペースを維持していきたいと思っています。

なお残業如何によっては毎日出来るかは休日中のストック次第。


頑張ってモチベーション維持して頑張ります。

訳:ブクマとか諸々よろしくネ

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