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なんとか生き延びて入学式

これでいったん序章は終わりです。

「新入生の皆さん。おはようございます。そして我が校へようこそ。私達教員一同は皆さんの入学を心より歓迎します--」


 校長先生が壇上に立ち、俺達新入生に開会の挨拶をする。

 中学の時も同じだったが、校長先生の話というものは長い。これって話す方も大変だよね。


 中学を卒業してから僅か2か月程しか経っていないが、今日という日を迎えられたことを幸せに思う。

 だってマジで死ぬかと思ったし。


 結論から言うと、俺は母さん達全員から卒業と認められた。

 とは言え、最後の試験が終わったのは昨日だったが。


 ちなみにレイラ母さんの言っていた「死なない程度に」は文字通りだった。

 俺の中では死なない程度に=半殺しだったんだが、それはどうやら俺の考えが甘かったらしい。


 例えばレイラ母さんの試験では--


「奥義は習うものじゃない。実際に食らって、見て覚えろ」

「分かっ……母さん、なにそれ?」

「ん? 私の愛剣だが?」


 そう言いながら母さんは真剣を構えた。あ、『真剣に』じゃなくて『真剣を』だからね?


「木刀とか竹刀じゃなくて?」

「お前は戦場に竹刀を持って行くのか?」

「どういうことなの……?」


 全く嚙み合わない。いや、そりゃ竹刀担いで戦場に行くことなんてないけどさ!! そもそも戦場なんてどこにあるんだよ!!


「つべこべ言ってないで早く構えろ。言っとくが覚えられるまで何度でもやるからな」


 怒鳴られてしまったので、仕方なく竹刀を構える。なんで俺だけ竹刀なんだろう?


「じゃあ行くぞ。しっかり見て、出来ることなら回避しろ。でなければ……」

「でなければ?」


 そう聞き返した刹那--


「死ぬぞ」

「え?」


 正面にいたはずのレイラ母さんの声が後ろから聞こえた。それと同時に自分の身体に違和感を感じ、顔を下に向ける。

 そして俺の目に映ったのは、腹から吹き出す大量の血と、零れ落ちそうな自身の臓物だった。気持ちわるっ!!


「がふっ!!」


 そんな呑気な感想を抱いた直後、大量に吐血した。そして今までにない程の激痛が俺を襲う。

 痛みを叫ぼうとしても、喉から血がせりあがってくるため、ただ血を吐くことしか出来ない。


「セラ」

「はーい、蒼汰くん、ちょっとだけ我慢してくださいね~」


 いつの間にか、俺の隣にはセラ母さんが居た。俺のこの状態を見ても、間延びした声で返事をしているのが印象的だった。

 そんなセラ母さんは、手が血に濡れることも厭わず、腹から零れ落ちた臓物を腹の中に戻している。


「よいしょ、よいしょ」


 いや、その掛け声はおかしい。


「これでよしっと、じゃあ今から治すけど、多分物凄く痛いから。あ、痛かったら手を上げてね~」


 歯医者さんか。と思わず心の中で突っ込んでしまった。

 セラ母さんを見ると、俺の腹部に当てた手が光っている。恐らく聖術で治そうとしてくれているんだろう。


「いぎっ!?」


 斬られた時とはまた違う痛みが俺を襲う。

 本来なら時間をかけて緩やかに再生される体組織が、急速に修復されることで生じているんだろう。


「セラ母さん、痛い!! 痛いから!!」


 あまりの痛みに思わず手を上げる。


「はーい、もう少しで終わりますからね~」


 ちくしょう!! やっぱりか!!


 そんなこんなで俺の身体はすっかり元通りになったが、流石に自分の腹から腸とか色々はみ出てる光景はトラウマになりそうだ。


「終わったか。で、見えたか?」

「いや全然、気が付いたらレイラ母さんが後ろに居て、腹から内臓がコンニチワしてた」

「そうか、ならもう1回だ」

「ちょっと待ってもう少し待ってせめて少しくらいヒントくださいお願いします」


 そんなやり取りが何度も繰り返され、結局レイラ母さんの試験が終わったのが10日前。


 でもってアイサ母さんの試験もレイラ母さんと同じく、奥義の習得と実践でアイサ母さんに勝つことだった。

 ちなみにその時は腹に大穴が空いた。


 ナナリー母さんの時は両腕と両足を砕かれた。

 シルヴィ母さんの時は両手両足を壁に縫い付けられた。

 ミザリー母さんの時は全身大火傷を(ry


 そしてセラ母さんの試験は、他の母さん達にやられた怪我を自分で全て治せるようになった頃。


「じゃあ今から飛び降りるから、聖術で母さんを治してね~」


 とか言いながら、家の屋上から飛び降りて、全身グチャグチャになったセラ母さんを傷一つなく治す。というものだった。

 身体の痛みには慣れてきたが、正直セラ母さんの痛ましい姿を見るのは一番キツかった。それを察してか、試験が終わった後、セラ母さんに抱きしめられたが、驚異的な胸囲のせいで窒息死しそうになった。


 そしてようやく昨日、最後のレティ母さんの試験が終わった。

 とは言っても、レティ母さんの試験って一緒に買い物に出かけて荷物持ちしたり、一通り家事をこなしたりと、なんだかよく分からないうちに、合格を貰ったようなものなんだが。


「--以上、今日という日を迎えられたことを、とても喜ばしく思います」


 いや全くその通りです。

 思わず校長先生の言葉に大きく頷いてしまう。

 そんな俺の姿を見てか、周囲からクスクスと小さな笑い声が聞こえてきた。校長先生の話をクソ真面目に聞いてると思われたんだろうが。

 残念だったな。最初と最後の言葉しか聞いてなかったぜ。


「それでは新入生の皆さんは、担任の先生から話がありますので、各クラス毎に教室へ向かってください」


 おっと、ようやく入学式も終わったか。後は教室に行って、自己紹介して終わりかな?

 皆が立ち上がるのに合わせて、俺も席を立ち、教室へ向かう。


 体育館から教室まではそれほど距離もなく、誰と会話することもなく、教室へ辿り着いた。

 えーと、俺は男子の出席番号1番だから、窓際の一番前の席か。これは授業中寝たらバレバレだなぁ……


 ちなみに隣の席は女子の出席番号1番。つまり……


「お、やっぱり朝香が隣か」


 妹の朝香が隣に着席した。兄妹で同じクラスってのも珍しいな。

 ちなみに聞こえるように言ってみたが、朝香からの返答はない。むぅ、アレ以来ほとんど会話らしい会話がないぞ……

 まあ、クラス全員揃ったようだし、後は先生が来るまで寝てようかな……


『……え……すか……』


 ん? なんか声がしたぞ?

 誰が言ったんだろうと思って辺りを見回すが、他の奴らも同じような行動をとっている。


『聞こえますか?』


 あ、これ頭の中に直接話しかけてきてる奴だ。たまにミザリー母さんが俺に買い物頼む時とかにやってくるアレだな。

 もう一度周りを見てみると、皆戸惑ってるみたいだ。


『どうやら繋がったようですね。説明は後で必ずします……ごめんなさい』


 恐らく俺達と同年代くらいの女性だと思われる声が謝罪を告げた後、辺りから急激に魔力が吸い上げられていく。

 おいおい、これマズくないか? 下手したら魔力枯渇どころじゃない。死人が出るかもしれないぞ。


 そう思い、不足していると思われる魔力量を計算し、身体から魔力を放出する。

 使われる魔法の術式が分かれば適切な量だけ出せるんだが、いかんせん情報が少なすぎる。

 仕方なくこの魔法が発動するまで魔力を放出し続けることにした。


 そして魔力が吸われる感覚が止んだ頃、急に目の前が暗くなり、身体が宙に浮くような感覚に襲われた。

 多分これは転移の術式、しかも大規模な魔法だな。


 時間にすれば一瞬だったと思う。浮遊感がなくなり、目を開けてみれば、目の前には大きな魔法陣、そしてローブを纏った人達が大勢。

 そして俺達を囲むように配置された鎧を着こんだ人達がいた。


「おい、これって……」

「まさか……本当にこんなことがあるのか?」

「え? ここどこ?」

「ついに俺が勇者になる時が来たか」


 等々、クラスメイト達が騒いでいる。誰が勇者だとか、そんなことはどうでもいいけど、やっぱりこれって……


「ようこそおいでくださいました。勇者様方」


 恐らく先の声の主だろうと思われる女性がこちらに歩み寄ってくる。

 まだ幼さの残る顔立ちは、俺達と同年代だろうという予想は間違いではなかったらしい。


 ん? でもなんとなくレティ母さんや朝香に似ているような気がしないでもないな……


「急に呼び出してしまい、本当に申し訳ございません。私はアリシア。このレブル王国の第二王女です」


 辺りからは「やっぱり……」という声や、「え、どういうこと?」といった声が聞こえてくる。

 なんか「あれが俺の嫁か……」とか言ってる奴もいるけど。


「どうかこの世界をお救いください。勇者様」


 どうやら俺達は異世界に召喚されてしまったらしい。


残念だったな。貴様にアリシアさんはやらん。

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