武器はお持ちですか?
夜勤連チャンで更新出来てませんでした。ストック大事。
「ところでソータさん、武器は持ってるんですか?」
と、ギルドに向かう道の途中でミアから質問が飛んできた。
そういえばギルドの依頼では魔物の討伐なんかもあるんだったか、となると武器を持つのが普通なんだろう。個人的には別に無手でも問題ないとは思うんだけど……
「そういえば持ってない……いや待てよ」
すっかり忘れてたが、ふとミザリー母さんから教えられた収納魔法の存在を思い出す。正確には自分が接続した空間を収納に使っているだけで、それ専用の魔法ではないのだが。多分本来の使い道は他にもあるような気がしないでもないのだが、ミザリー母さんから収納に使うと便利だとしか教えられていない。
しかし元の世界で入れた物が取り出せるんだろうか? とりあえず試してみるか。
「えーと、確か……」
「ソータさん?」
「あ、失敗したら怖いからミアはちょっと離れてて貰っていい?」
ここではない空間にアクセスするわけだし、万が一魔法が暴発なんてした日にはミアを別空間に飛ばしてしまいかねないので、少し離れて貰う事にした。
魔力を練る、というよりは自分の波長にあった空間を記憶しておいて、チャンネルを繋ぐ魔法。属性を変換するのとほぼ同じだが、こっちの方が神経を使う。なんせ久しぶりだし。
少し不安はあったが、程無くしてチャンネルが見つかった。身体は覚えていたという奴か。
早速収納空間(仮)に手を突っ込んでみる。流石に手探りで物を探すのは無茶なので、まずは刀でも引き寄せてみる事にした。
「来い、緋徹」
緋徹はレイラ母さんから貰った刀だ。刀身が赤みを帯びているのが特徴的で、切れ味は良いし、刀身が赤いというのもあって、俺は気に入っていた。まあ実際ほとんど使う事なんてなかったから今まで忘れていたのが正直なところだが。
ちなみにこれをくれた経緯は、何でも俺の名前の蒼の字と逆で緋色だったからくれた、と全くよく分からない理由だったが。
母さん達が自分のお古を面白がってポイポイ放り込むもんだから、他にも色々武器やら何やらが入っている。特にアイシャ母さんなんて怪しい薬とか草とか入れまくってたから、俺自身何が入っているかは全部把握しきれていない。
ともかく、ついでだから身に着けられる武器は取り出してしまう事にする。
「来い、ラノ、ルノ」
続いて二振りの短剣を呼び寄せる。これはメル母さんから貰った短剣だ。
なんでも若い頃に使っていたとかで、緋徹と違い、これといった特徴のないシンプルな形状をしている。おかげで身に着けるには最適で、懐に忍ばせてよし、腰の両側に身に着けてよしの機能性抜群の短剣だ。あ、ちなみにこれもよく切れます(フランスパンもサクッと切れた)
後はシルヴィ母さんがくれた弓とか、アイサ母さんがくれた槍とか色々あるけど、これは身に着けるには少し大きい。なので必要な時に取り出すようにして、とりあえず身に着けるのはこれだけで良いだろう。
「よし、これで装備は大丈夫……ってどうかした?」
「え、ええ? 今どこから?」
ミアが信じられない物を見たような目で、俺が取り出した緋徹とラノ、ルノを見る。
「どこからって収納空間からだけど……」
「それってもしかして時空魔法ですか? でもソータさんは時空魔法のスキルを持ってないんですよね?」
「時空魔法?」
時空魔法ってアレだよな。時間を止めたり巻き戻したりとかそういう魔法だよな。
「いや、ただの空間魔法だよ。というか時空魔法は見たこともない」
俺に魔法を教えてくれたのはミザリー母さんですら時を止めたのは見た事ないしな。案外使えるのかもしれないけど、時空魔法。
「ただの、ってそんな事が出来る人今まで見た事ないんですけど……」
「え、そうなの?」
確かに俺もミザリー母さん以外に使える人は知らない。朝香は使えてもおかしくなさそうだけど……
「もしかしてソータさんって凄い人なんですか?」
「いや、俺はただの一般人だけど……」
母さんが十人いる以外は至って普通です。
「まあ武器の心配はこれでなくなったし、行こう行こう」
「はあ……分かりました」
ミアはなんとも納得のいかない顔をしている。そんな顔されても……だって便利なんだぞ収納空間、いくらでも入るし。というかもしかしてスキルの荷物持ちってこれのせいじゃ……?
しばらく歩いた後、大きな建物の前でミアが足を止めた。入り口辺りと見てみれば、色んな武器を持った人々が出入りしているのが見てとれた。恐らくここが冒険者ギルドで、出入りしている人達はきっと冒険者なのだろう。
「つきました。ここが冒険者ギルドです」
「おー」
予想は当たりのようだった。建物を見て、周りの冒険者達を見てと、物珍しさでついキョロキョロしてしまった。
おかげでクスリとミアに笑われる事となったのはご愛嬌だろう。
「私は中で依頼を受けてきます。ソータさんはどうしますか? ここで待ってます? 一緒に来ます?」
「うーん、せっかくだからついて行こうかな」
「分かりました。どうせなら冒険者として登録してもいいかもしれませんね。ギルドカードを発行してしまえば、身分証の代わりにもなりますし」
「身分証? 身分ならステータスを見せればいいんじゃ?」
まあステータスなんてホイホイ見せるもんじゃないかもしれないが、これ以上ない身分の証明方法だとは思う。
「もちろんステータスは自分を証明する方法としては最適ですけど、身分の保証は出来ませんから」
「つまり?」
「例えば犯罪に手を染めた人は、例え冒険者であってもギルドカードをはく奪されます。逆に言えば、ギルドカードを持っていれば犯罪者ではないという証明になるわけです」
「それって隠れて犯罪してたら分からないんじゃ?」
「隠し通せればそうです。ですが冒険者は大陸中に数えきれない程いますし、隠し通すのは難しいと思います」
つまり冒険者同士のネットワークを舐めるなと。なるほどね。
ミアと話をしながらギルドに入り、受付へと向かう。
「すいません、依頼を受けたいんですが。それとこの人の冒険者登録も」
「あ、ミアさんこんにちは!!」
と、元気の良い声が返ってくる。どうやらミアとは顔見知りのようだな。
「こんにちはメイさん」
どうやら受付嬢はメイという名前らしい。見た感じ年齢は二十歳前後、といったところだろうか。
「依頼はありますよー。ミアさんはいつもきっちり依頼をこなしてくれますからね。助かります。それでこの方は?」
「この方はソータさんといいます。同じ学院に通う、と、とも、友達……です」
ミアは友達という言葉を発するのに手こずっていた。俺もそれほど人の事は言えないが、そんなに友達がいなかったのか。
「むむむ、ついにミアさんにも春が!! いいなー!! 羨ましいなー!!」
「ちちちち、違います!! ソータさんはそんなんじゃありません!! 友達です!! と も だ ち!!」
いや、そうなんだけどそこまで強調しなくても……
「むふふ、冗談ですよ。それでソータさん、でしたっけ。冒険者登録は良いんですが、流石にすぐに死なれると困るので、ステータス見せて貰っていいですかー?」
 




