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初めての友達

思ったよりサクサク書けました。そろそろ話も進めていかんとです。

「あ、教室ならこっちですよ?」

「え?」


 おもむろに声をかけられて疑問を返してしまう。そういえばこの子ついて来たままだったのか。


「ありがとう。えっと……」

「あ、私はミアっていいます。あの……さっきはありがとうございました」

「いや、むしろ余計な事してごめん」


 俺が声をかけなければさっきみたいな騒ぎにはならなかっただろうし、逆に迷惑をかけてしまったのは間違いない。


「いえ、今まであんな風に庇ってもらった事なんてなかったから……」

「……やっぱり獣人だから?」

「それもあると思います。でも、多分皆レイド様の事が怖くて、私には関わらないようにしてるんだと思います」

「それってアイツが貴族だから?」

「はい、中でもレイド様のお父様は伯爵の位を授かっていて、レイド様自身も長男ですから子爵の位を持っています」


 爵位とか言われても何が偉いんだったかよく覚えていない。ただ伯爵って結構偉いんじゃなかったかな。


「つまりレイドの父さんが王国の偉い人で、レイドはそれを笠に着て威張ってる。周りの奴等もそれに付き従ってるって事か」

「それもありますけど、レイド様自身もマルチスキルの持ち主なので……」

「マルチスキル?」

「複数のスキルを持っている事をそう呼んでいます。普通は一人に与えられるスキルは一個ですが、稀に複数持っている人が生まれる事もあります。特に親同士がマルチスキルを持っていた場合などは、生まれてくる子もマルチスキルになる傾向もあるそうです」

「なるほど、マルチスキルって凄いの?」

「それはもう。特に戦闘スキルが複数ある場合なんて冒険者ギルドや騎士団が放っておかないと思います」


 そんなに凄いのか。ってことはやっぱり召喚されたクラスメイト達はこの世界では貴重なんだな。あれ? クラウスも色々持ってたような……


「それから三つ以上のスキルを持っている人の事<ホルダー>と呼ぶあるそうです」


 って事は俺もホルダーって事なのかな。いやでもスキルの内容がなぁ……


「えっと、ちなみに俺スキルが四つあるんだけど……」

「えっ!? 本当ですか!?」


 あ、すっごい食いついて来た。なんかもう目がキラキラしてるんだけど……


「本当だよ、ほら≪ステータスオープン≫」


 -----------------------

 名前:浅倉蒼汰アサクラ・ソウタ

 年齢:16歳

 性別:男

 種族:人族


 スキル:<料理Lv4><洗濯Lv1><掃除Lv2><荷物持ちLv6>

 -----------------------


 俺のスキルを見た途端、ミアの目からどんどん光が失われていく。うんそうだよね。きっと戦闘スキルとか期待してたよね。ごめんよ。


「た、確かにスキルが四つも……」

「あー、うん。分かってるからそれ以上は言わなくていいや」

「えっと、なんかそのごめんなさい」


 謝られてしまった。いやでも料理スキルが高いのは良い事だとは思うんだけどなぁ。美味しい食事は生きていく上で大事だよ?

 ……まあ荷物持ちスキルだけはよく分からないけど。


「おっと、それより早く教室に行かないと、授業始まっちゃうんじゃないか?」

「あ! そうでした、急ぎましょう」


 とは言え、俺は道が分からないのでミアに先導して貰って、それについて行く。

 一応俺のスキルのおかげで若干空気も和らいだみたいだし、これはこれで良かったのかな? なんかちょっと泣きたくなるけど。


 それから俺とミアは教室に入り、授業を受けた。

 授業の内容は歴史や言語、算術から始まり、簡単な剣術、魔法の基礎知識を学習するもので、剣術や魔法に関しては実習も交えて学んでいくらしい。

 今日は机上学習だけだったが、魔法の授業で色々疑問が湧いて来た。

 何故ならこの世界で魔法を使う為には詠唱が必須とされているからである。


 俺がミザリー母さんから学んだ魔法とは、詠唱は発現する魔法のイメージを補完する物であり、覚えたての魔法を使う時には良いとは聞いた。

 だけど詠唱の内容から、どんな魔法を使おうとしているか読み取られてしまうし、何より詠唱が終わるまで魔法が発現しないため、戦闘ではあまり使い物にならないと聞いていた。

 だから自分の中の魔力はいつでも魔法として使えるように制御しておいて、魔法をイメージした瞬間に属性変換と放出が出来るようにしておけと言われていたが……

 実際クラウスと戦った時もその方法で魔法は使えたし、この世界が詠唱無しで魔法が使えないというわけでもなさそうなんだが。


「ソータさん、授業終わりましたよ?」

「ん? ああ、ごめん。ちょっと考え事してた」


 いつの間にかミアが俺の顔を覗き込んでいた。というか近い。

 女性に関しては母さん達がいたから苦手とかはないが、同じ年齢の女の子にここまで近付かれたことはなかったので、内心ドキドキしてしまった。


「とりあえず今日は終わりかあ。そういえばこの後ってどうすれば?」

「この後は自由です。街に出て遊んでも良いですし、家の仕事を手伝う子なんかもいますよ」

「そっか、と言ってもやる事なんてないしなぁ……そういえばミアはこの後どうするんだ?」


 少し不躾かな? とも思いながら聞いてみる。


「私はこの後冒険者ギルドに寄って、何か依頼があれば受けようと思ってます」


 この答えにはちょっと驚いた。気の弱そうなミアが冒険者ギルドで依頼を受けるなんて想像もつかなかったからだ。


「これでも二年くらい冒険者やってるんですよ? 一応ランクもEランクになってます」

「あ、ランクなんてあるんだな」


 俺の言葉にミアは首を傾げる。もしかしたらなんて世間知らずな奴だろう、と思ってるのかもしれない。


「はい、一応Sランクまであるみたいです。流石に私にとっては雲の上の存在なので、見たこともないですけど……」

「Sランクかぁ、やっぱり凄いんだろうな」

「それはもう、ドラゴンを一人で倒せるくらい凄いって聞いてます」


 やっぱりいるのかドラゴン。


「じゃあ俺もミアについて行こうかな。多分邪魔にはならないと思うし」

「それは……見るだけなら大丈夫かもしれませんが、その」


 恐らく俺のスキルを見て心配してくれているんだろう。やっぱり優しい子だな。


「邪魔はしないよ。それに一応心得がないわけじゃないし」

「……分かりました。危ないと思ったらすぐに逃げてくださいね」

「了解、約束するよ」


 ちょうど魔物がどれくらいの強さなのかも見ておきたかったしな。


「それじゃああまり遅くならない内に行きましょう」

「おー」


 そういえばなんだかんだでずっとミアと一緒にいるな。あれ? もしかしてこれでぼっち卒業か? 元の世界でもあまり友達はいなかったからちょっと嬉しくなる。


「どうかしたんですか?」


 どうやら顔に出てしまっていたらしい。しまった、変にニヤニヤしてなかっただろうか。


「いや、そういえばこの国に来て初めて友達が出来たなーと」

「友達……」


 と、呟いてミアの動きが止まる。まさか友達だと思っていたのは俺だけだったのか!?


「私なんかが友達で良いんですか?」


 しかし返ってきた言葉は予想していた答えとは違うものだった。


「もちろん!! ミアは俺と友達になるの嫌なのか?」

「いえいえいえいえ!! そんな事ないです!!」


 取れるんじゃないかと思うくらいに首を横に振るミア。


「ただ……私と関わると今朝のような……」


 なるほど、それが原因か。


「大丈夫大丈夫、あれくらいなんでもないって。俺がミアと友達になりたいって思ったからそう言っただけなんだし」

「友達……ふふっ」


 ミアはもう一度友達という言葉を呟いて、笑顔を零した。

 そういえばちゃんと笑ったのを見たのはこれが初めてだった気がする。うん、いい笑顔じゃないか。


「それじゃあ行こうか。あ、俺は道分からないから案内もよろしくな」

「はい!! 行きましょう!!」


 途端に元気になったミアがスキップでもするんじゃないかと思うくらい、弾んで歩いて行く。きっと根は明るい子なんだろうな。

 俺はゲイルだけではなく、いつかチャンスがあったらレイドの野郎も殴ってやろうと、そっと心に決めたのだった。

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