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マルシアの父親登場

あれえ5,000文字超えてる……

「お父様、何故ここに?」

「クラウスの使いの者から、マルシアがこの家に男を連れ込んだと聞いての」


 過保護過ぎる!! というか事実だけ見ればそうかもしれないが、報告の仕方に悪意しか感じないぞ!?


「で、うちの可愛い娘に手を出そうとした輩がクラウスにボコボコにされるのを見に来たんじゃが……」


 しかも悪趣味過ぎる。


「申し訳ございません。敗れてしまいました」

「お主が負けるとはのう……どう見てもただの若造にしか見えんのじゃが」

「はい、私も最初はそう思っておりました。事実、スキルも戦闘スキルを持っておりませんでしたし、軽くあしらうつもりだったのですが……」


 いや、めっちゃ殺す言うてましたやん。


「お父様?」

「おお、何かねマルシア……え? なにその笑顔。物凄く怖いんじゃが……」


 マルシアの背後に鬼が見えた。

 さっきも思ったけどマルシアは絶対怒らせてはいけない人なのかもしれない……

 というかこの気配、レティ母さんが怒った時とそっくりだな……


「お父様には色々と聞きたい事が出来ました。それにクラウス様、貴方にもです」

「いや、別に儂は何も……」

「ゲイル様、諦めましょう……」


 マルシアの父親--ゲイルはシラを切るつもりだったようだが、ガックリと肩を落としたクラウスに窘められていた。


「ソータ様、申し訳ありません。どうやら父が元凶だったようです」

「うん、まあ見てたら分かったけど……」


 で、俺はどうすれば良いんだろうか。成り行きでクラウスと戦って勝ったのはまあいいとして、この空気の中であまり長居したくもないんだが……


「ソータ様も巻き込んでしまった訳ですし、先ほどのお礼もまだ出来ておりません。出来ればご同席頂きたいのですが……」


 ですよねー!!

 このまま立ち去る事も出来るかもしれないが、正直言ってご飯も捨てがたい。何故俺が同席する必要があるのかはさておき、ここは従っておいてもそう悪い方向には話は進まないだろう。

 ……そう思っていた時期が俺にもありました。


 未だ鬼が引っ込んでいないマルシアを先頭に、先ほど俺とマルシアが話をしていた部屋に戻る。

 そしてマルシアと向かい合うように、ゲイルとクラウスが並んで座らされた。

 あれ? この場合俺はどこに座れば?


「ソータ様、申し訳ありませんが隣にお座り頂けますか?」

「あ、はい」


 マルシアに隣に座るように促されたので、少し良いのかな? と思いつつソファに腰を掛けた。

 その際にゲイルから射殺すような視線を受けたが、気にしないことにする。


「で、お父様。ご説明頂いても?」

「コイツが悪い!!」


 と、ゲイルが俺を指差して言った。

 いや俺が何したっていうのさ……


「はぁ……ではクラウス様。お父様がこんな状態ですので、代わりにご説明頂いてもよろしいでしょうか」

「承知しました」


 初対面とは違い、落ち着いた雰囲気でクラウスが話し始める。

 それにしても最初に会った時のあの態度はなんだったんだ……


「まず最初に肝心なところを説明しておきます。私がマルシア様の婚約者だという話についてなのですが……」

「クラウス!!」

「もういいでしょう。私も本気を出して敗れた訳ですし」


 ゲイルがクラウスを止めようとするが、クラウスは観念したように話し続ける。


「申し訳ありません。その話はゲイル様がマルシア様を守る為に作った嘘の話なのです」

「「は?」」


 俺とマルシアの声が重なった。いや、まあ俺からすれば何言ってんだろうってレベルだけど。


「それはどういう事でしょうか……?」

「はい、マルシアが成人されてから、ゲイル様よりマルシア様の婚約者として、マルシア様に男が近付くような事があれば、その男がどのような者か確かめるよう、命じられておりました」

「ということは、クラウス様と私の婚約とは……?」


 マルシアがクラウスからゲイルの方に目を向け直した。

 ゲイルはその視線に気付いてか、ビクッと身体を振るわせる。


「あ、そのなんじゃ。ええと……」

「もうここまで話したのですから、包み隠さず話してくださいね?」


 今にもゴゴゴゴゴ……と効果音が聞こえてきそうである。マルシアさんマジ怖い。


「ふう……まあ良いか。先ほどクラウスが告げたように、マルシアに男が近付いた場合、クラウスに品定めをさせておった。場合によっては露払いも含めて、な」

「何故そのような事を?」

「それはな、マルシア、お前は昔から錬金術に興味を持ったためか、あまりこの家から出る事をせんかった。つまり世間を知らなすぎる」

「それは……」


 心当たりがあるのだろうか。マルシアは少し考えるような素振りを見せた。


「もちろん貴族との中で良い話があれば、クラウスとの婚約を解消し、その相手と改めて婚約を結ばせるつもりでおった。じゃがお前は社交の場にもあまり出ようとはせぬし、積極的に繋がりを持とうともせんかったじゃろう」

「はい……」


 あ、なんか形勢逆転してきたぞ。


「じゃからクラウスに命じ、お前にもし意中の男が出来たようであれば、その男を見定め、儂に報告が来るようにしておったのじゃ」

「でしたら私にも一言くらいあっても良かったのでは……」

「言ってしまえばお前はそれに反抗して、クラウスを遠ざけたじゃろう」

「……」


 図星か。まあそうだよな。知ってたらクラウスに命令出来ちゃうもんな。


「じゃがまあこうしてクラウスを降すような男を連れて来たんじゃ。結果的には良かったと言えるじゃろう」

「は?」


 それって俺の事だよな? 良かったってどういう事?


「じゃがどこの馬の骨とも分からぬ輩にマルシアをやるつもりはないぞ」

「ちょ、ちょっとお父様!?」

「見たところ爵位を持っているようには見えぬし、大方貴族ではなく、平民の出じゃろう。マルシアが欲しければそれなりの功を挙げて貰わねばな」

「待った待った!! なんでそうなるんだ!!」

「そうです!! 何故そうなるのですか!!」


 俺とマルシアは慌ててゲイルの言葉を否定する。

 そもそも俺はマルシアを助けたお礼にご飯をご馳走になりに来ただけだぞ。


「なんじゃ? 違うのか?」

「違います!! ソータくんとはそのような関係ではありません!!」

「ほう? それにしては随分と仲が良いようじゃが。お前が男の事を『くん』などと呼んだ事があったかのう?」

「それは……ソータくんにそうお願いされたからで……」


 マルシアは顔を真っ赤にして否定するが、言葉はどんどん尻すぼみになっていく。


「くっくっく、それならそれでまあ良い。ところでソータと言ったな。お主はどうなんじゃ?」

「え? 俺?」


 唐突に話を振られてしまった。それってつまり俺がマルシアと結婚したいかどうかって事だよな?

 何故この世界に来て初日からこんな展開になってしまったのか全く意味が分からないが、流石にまだ結婚とか考えるような歳じゃない。


「そもそも今日会ったばかりだし、それに俺はまだ結婚なんて考えるような歳じゃない」

「ふむ、そう言えば確かに見ない顔じゃが……まあ良い。それはつまり会ったばかりで結婚も考えるような歳ではないが、マルシアでは駄目という訳ではないと捉えて良いんじゃな?」


 どうしてそうなった。っていうかアンタさっきまで娘はやらんぞとか言ってたじゃないか。もしかして言いたかっただけか。

 ふと隣を見てみれば、マルシアが赤い顔をしながらこちらをチラチラと伺っている。

 ……うん、可愛い。流石にこれで駄目と言える男はいないだろう。

 怒ったら超怖いけど、性格は悪くないと思うし。あとやっぱりどこかレティ母さんと似てる分、親近感もあるしな。


「ではこうしよう。マルシアが他に良いと思える男を連れてくるまで、ソータ、お主をマルシアの婚約者候補とする。じゃが世間的には今まで通り、マルシアの婚約者はクラウスじゃ。マルシア、クラウス、良いな? そしてソータ、お主はマルシアが意中の男を連れてくるまでに、儂が良いと思えるような功を挙げて見せよ」」

「「なんでそうなる(んですか)!?」」


 なんか色々と決められてしまったが、当人の意思は全く考慮されていない。

 それにいつになるかは分からないが、俺は元の世界に帰る事になるだろうし、仮にマルシアと結婚する事になったら連れて帰るわけにも……ん?

 おかしい、何か引っかかる。何がかは良く分からないけど……まあいいや。


「お互いに興味がないのであれば、この場だけの話にしてしまえば良かろう。この話は儂等しか知らん話なのじゃからな」


 確かにそうなんだけど、なんか上手く誤魔化されてる気がするなぁ。


「さて、この話はこれで終いじゃ。それよりソータよ。マルシアがお礼と言っておったが、この後はどうするんじゃ?」

「ああ、そう言えばそうだった。もし知ってたら教えて欲しいんだけど……」


 異世界から召喚された事は黙っていた方が良いのかと少し悩んだが、どうせ近々知られる事になるだろうと思って正直に話すことにした。

 俺が異世界から召喚されたと聞いて、マルシアとクラウスは物凄く驚いていたが、クラス全員が召喚され、勇者と思われる奴は他にいる事も話しておいた。

 ちなみに俺の称号の話はややこしくなりそうだから話していない。

 何故かゲイルはそれほど驚く事もなく、難しい顔をしていたが、それも束の間、俺の世界の事に興味があるようで、話は弾んだ。

 そして宿の場所が分からず、迷ってしまったので何か知っている事はないか聞いてみたところ、ゲイルが人を使わせて確認してみてくれるとのことだった。


 その後、俺にとっては本命の食事にありつく事が出来た。

 美味しい食事に舌鼓を打ちながら、やはりというかなんというか、こちらではパンが主流なようで、王都では米を食す習慣はない。という話を聞いた。

 余程腹が減っていたのか、ひたすらおかわりし続ける俺を、マルシアが苦笑しながら見ていたのはご愛敬だろう。


 食事が終わり、話をしているところにゲイルの使いが戻ってきた。

 ありがたい事にその宿まで案内してくれるとの事で、流石にお言葉に甘えることにした。


「随分長居しちゃったな」

「いえ、こちらも楽しかったです。是非また来てくださいね」

「ああ、まだこっちには知り合いもいないし、そうさせて貰えるとありがたい」

「本当ですか? じゃあまた食事をご用意させますので、是非召し上がりに来てください」

「ふん、仲良くやっておるではないか」

「あ、いえこれはそういうわけではなく……」


 ゲイルが余計な事を言うから若干空気が変わってしまった。


「ったくおっさんが余計な事を……」

「誰がおっさんじゃ誰が!!」


 とは言え、話をする内にゲイルとも軽口が叩けるくらいには仲良くなった。おっさんと呼ばれた事に対して怒っているようには見えるが、口元は若干笑っているのが分かる。


「まあいい、お主とはまたすぐ会う事になるじゃろう。ほれ、案内の者も待っておる。早く行くが良い」

「ああ、世話になった。ありがとう」

「ソータ殿、今日は色々すまなかった。もし良ければ、また手合わせして貰えるだろうか」


 ちなみにクラウスとも仲良くなった。

 事情があってあんな態度を取っていたようだが、実際には結構紳士だったんだよな。

 マルシアに手を上げたのも、どうやら俺が止めるだろうと思っての事だったみたいだし。


「まあ気が向いたらね……でも今度は出来れば真剣じゃない方が良い」

「ありがたい。ではまたお願いする」


 そう言ってクラウスは俺に礼を告げる。貴族って庶民に対して尊大な態度を取るのかと思っていたが、どうやらクラウスはそうではないらしい。

 だが最初に俺に取った態度から見るに、実際にはそういう貴族もいるという事だろう。


「それではソータ様、案内致しますので私についてきてください」

「お願いします」


 そして俺は案内の人について、元々泊まる予定だった宿に辿り着く事が出来た。


 その後あの女騎士に叱られる事になったが、案内してくれた人が何やら話をしてくれて、それ以上お咎めはなかった。

 一体何を言ったのかは気になったが、夜も更けていたので、俺は自分に割り当てられた部屋に入り、そのまま寝てしまった。

出来るだけ毎日書いていきます。

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