27話 大手通信会社社員、コーチダルケ大森林から帰れない
アムに助けてもらった後、フルフルさんと合流するためにコーチダルケ大森林を進む。
かなり遠くまで来ていたみたいで、合流するのに30分以上かかった。
川を渡れなくてかなり迂回したからね。
**
「あ、フルフルだー」
「ああ、おつかれ」
「おわあ!」
って、この子はまたスッポンポンじゃないの!!
「ふ、フルフルさん! 服は!?」
「焦げた」
「こ、焦げたって……」
スッポンポンのフルフルさんは、焚火をしながら何か食っている。
「着るもの無いんですか?」
「無い」
目のやり場に困る……。何か服の代用は出来ないものか?
葉っぱとかで服を……そんな器用じゃないな。
アンチマジックウィドーの糸……はなんか気持ち悪そうだな。仕方ない。
「こ、これ着てください!」
僕は上着を脱いで渡すことにした。
「……いいのか?」
「そのままだと、目のやり場がありません」
「――ありがと」
いそいそ着替えたフルフルさん。ちびっこなのでいい感じに隠すべき場所が隠れている。
そして服をクンクン匂うフルフルさん。
「いい匂いだな」
「ちゃんと洗濯してますから」
「そうか」
そんなに汗かいてないはず。男は清潔さが大事。
とにかく僕の目のやり場を獲得することが出来た。
「ふ~ん、フルフル随分派手にやったんだね~」
アムは何かを見上げている。
「こ、これって!」
「少々ムキになって、やり過ぎてしまった」
アンチマジックウィドーと思われる黒焦げな何かがそこにいた。
アンチマジックウィドーを中心地に爆発したように、周囲まで焼き焦げている。
どういう方法でこうなったか見当もつかなかった。
「ぷぷ、楽しかった?」
「ん? まあ……な」
「よかったねー。あ、食べてるのウィドーの肉??」
「ああ、中々美味いぞ。魔力も回復させないといけないしな」
「確かに~、アタシも食べよっと。デンも食べる?」
「え……蜘蛛はチョット」
ゲテモノは苦手です。
「そうか? 美味いのに」
「美味しいよ~」
「うう……勘弁してください」
その後、糸に引っかかっていた鹿の肉をいただきました。南無阿弥陀仏。
**
「さて! 採取したら帰りましょうか!」
日が陰る前にアンチマジックウィドーの糸を回収して帰ろう。
焼け焦げて採取できない糸もあるけど、それでも収納空間一杯のアンチマジックウィドーの糸は採取出来るだろうし!
「デン」
フルフルさんは申し訳なさそうに頭を掻いた。
おねしょしちゃった子供みたいに見えるなあ。
「なんでしょう?」
「すまんが、帰りは二人で帰ってくれ。我はもう少しここに残る」
「そうなんですか??」
「うむ、魔力が足りぬ」
「あれ? 魔石がありますよね?」
「もう使った。だが足りぬ。魔力をこんなに使うとは思ってなかった」
「あら……」
あ、でも魔石はまだ残ってる! リュックに詰めたはずだ!
「だったら、僕の持ってる魔石で……」
「あ、ゴメン。もう使っちゃった。てへ」
「え??」
アムは指を折りながら考えている。
「え~っとお。川を越えるのに音化して、『爆ラード』ぶっ放しちゃったから」
「やはりか……。我も雷化して戦ったからすっからかんだ」
えっと……。なんか嫌な予感が。
「ねえ……アム。街に戻れるよね?」
「もっちろん! ――2日後には……」
「ふ、2日!!? み、店はどうするんだよ!?」
「ん~? 臨時休業?」
「良いではないか2日ぐらい」
そ、そんな簡単に。
「ま、魔力回復する方法は無いの??」
「あるよ! モンスター倒して、魔石から魔力を」
「それだ!」
フルフルさんが頭を振った。
「デン……、誰がモンスターを倒すんだ?」
「え……? それは……2人が」
「こんなすっからかんの状態でか? 主も中々鬼畜じゃのう」
「それにアタシ達、燃費良くないからな~……」
「そうじゃな。倒すのに使った魔力と得れる魔力はどっこいどっこいじゃろ。
ここは……デンに倒してもらうしかないのう」
「……2日後にしましょう」
泣く泣く2日待って、ソロモンシティに帰る事にした。
書き置きも無しに2日も休んだもんだから、お客さんに迷惑かけないか心配だなあ。
とにかく……アンチマジックウィドーの糸がたくさん手に入った!
やったねー!(ヤケクソ!)
**デンとフルフルの会話**
アムが眠った。
大森林の中で野宿してるんだけど、警戒は二人に任すことにした。
僕じゃ警戒なんてできないからね。
僕は寝る前に、少しフルフルさんとお話しすることに。
「しかし……今日は大変でしたね」
「あれほどの巨大化したアンチマジックウィドーがいるとは幸運だったな」
幸運か……。なかなかのバトルジャンキーだな。
「やっぱりあれって強かったんですか?」
「――そうでもない。我と相性が極端に悪かっただけだ」
「相性??」
「うむ、我は遠距離からの雷撃と、超接近して戦うのが得意だ。
人間で言うヒットアンドアウェーとかいう戦い方も得意じゃな」
「なるほど」
「じゃがアンチマジックウィドーは、遠距離魔法に対しては極端に強い。
更にあの巨躯では超接近しても一撃では仕留められぬ。なかなか手詰まりだったのう」
「なるほどな~」
相性って要素はいいよね。正統派の強者を相性の良いハメ手で倒すとか燃える。
強者の牙城を1つ1つ、「それはもう対策済みだ!」みたいなのもいいね。
「もしも、あいつを倒すなら剣士が良い。糸を切断出来るレベルの剣士なら苦労はせんだろう。
それにアム一人でも倒せるだろう」
「アムがですか?」
「ああ、アムの魔法は特殊だからな。魔法属性、物理属性どちらにも属さない。
耐魔法系の敵も苦にしないだろう」
「へ~~、やっぱアムって強いんだな~」
僕の膝で寝ているアムは、普通の女の子にしか……まあ角が生えてるけど。
「ん~、でも前に、『アタシは武闘派じゃないからそんなに強くない』って言ってた気が」
「ククク、好戦的な魔族はたくさんいるが、アムに勝てる奴が何人いるか。
ただ、燃費は悪い。そして魔力の総量も並みだ。継続戦闘に向いていないのは確かだ」
「なるほど。短期集中タイプですね」
「――そうだな。だが……」
フルフルさんが何かを言いかけた時――
「むにゃ~、良く寝た~」
お、アムが起きたみたいだ。
「おはよう」
「おっは! フルフルもオツカレ!」
「ああ」
アムは元気いっぱいだね。
「後は任せて~、2人とも寝てていいよ」
「それじゃ~寝ようかな」
「我はもう少し起きている」
「そうですか、じゃあお先に」
「膝枕しよっか?」
「い、いいよ! おやすみ!」
さてさて……今日は疲れたな~。楽しかったけどさ。
**
「アム……起きてたな?」
「ん~? 途中からね」
「そうか」
「そ」
「――そろそろじゃないのか?」
「ん~?」
「父上が……」
「ん~、なんとかなるっしょ」
「なんとかなるか」
「なんとかなるなる! えへへ」
「わかった、さて、寝るか」
「オヤスミ~」
「ああ」
アムはフルフルに手を振る。
「なんとか……ネ」
コーチダルケ大森林の夜は更けていく。
満天の星空の下、アムはぽつりと呟くのだった。




