プロローグ
その日、世界は、謎のウイルス兵器によって変貌した。
その出来事が起こる少し前の事である。
テレビ、ラジオのチャンネルが急に変わると、謎の映像・音声が流れ出した。
『やあ、人類よ。約束の時だ。猶予は与えたはずだよね?でも、成果がなかったんだ。仕方ないよね?』
その発言、その声に皆注目を集める。
特に、テレビでそれを見ていた者達にはとても奇異なものだっただろう。
テレビに映るは、どこか会議室めいていて、それでかつ、SFチックを思わせる景色であった。
その中でも最たる注目すべき存在は、発言者であろう人型のナニかである。
白い紙袋のような物を頭からすっぽり被っており、顔がわからない。
代わりに、紙袋の様な物には…
両目があるであろう場所に目のイラスト。
鼻があるであろう場所にも目のイラスト。
そして、口の位置であろう場所にも目のイラストがなされていることだった。
声の主は、子どものような、機会のような、少女のような、青年のような、女性のような、態度と声を発する。
その身振り手振りは、異質であった。
それゆえに、人とは到底認められなかったのだろう。
紙袋のような物に負けないくらい真っ白で、そしていてだぼだぼのスーツの所為で、体つきは全くわからない。
スーツと紙袋のような物の間に見える首はとてもか細い物ではあったが、それ以上のことはわからない。
『おやあ、どうやら…キミ達の頭は、我々のことを話さなかったのかな?十年も前から、毎年毎年忠告してきたのになぁ…だから、ね…急なことではないからね?怨むなら、そうだね…』
皆意味がわからない。
十年前から?
首相や大臣は知っていたのだろうか?
だが、現役の者達は当然十年前とは違う、だが、声は言った。
十年前から毎年エライヒトに忠告を、と。
今から何かしら起こるというのならば、発言主ではなく、首相らを怨めということだろうか?
『…キミ達が、増えすぎたことを怨むんだね?』
増えすぎた?
そんな事を言われたって…
多くの人々がそう思った。
その時、空が輝いた。
20××年×月××日
日本時間では、昼を回ったあたりだったことは確かだった…。