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⑦そして、真実は明るみになった・・・。

 ついに真実が明るみになっていきます!

 クリフは半ばあきらめかけた表情をしたロックの袖を引っ張りながら、男どもが熱狂的に愛への情熱を燃やしている「春」の、真夜中の街中に出向いた。

 「・・・もし、今回の事件がオレの推測通りなら、何て嫌な事件なんだか・・・・・・。」

クリフは苦虫を噛み潰したような表情で、低くそう呟いた。何かを出そうと懐に手を突っ込みつつ歩き出すクリフの表情に、ロックな一抹の不安を感じていた。が、とにかくこの若き師匠を信じる事にして、男どもが「春」に狂いまくっている夜の街に二人いっしょに繰り出した。

 すると間もなく、さっきとは別の男二人がクリフとロックの所へと寄ってきたのだ。

 その瞬間、クリフは懐から取り出した五芒星を記した品をその男のうちの一人にぶつけた。

 するとその瞬間、男の身体からモヤのようなものが立ち上り、「それ」は急いで逃げて行った。

 「やっぱりな!」

クリフは確信を得た表情で笑みをこしらえ、それを見たロックは、さすが師匠だ!と、心の底から安堵したのだ。

 そして、モヤが立ち上り、去って行った男は、

 「あれ?俺、今まで何してたんだ!?」

と、さっきまでかなり色っぽかったその目つきも普通のヤローが宿す独特の目つきに変わり、周りをキョロキョロと見回している。

 どうやら、クリフがぶつけたものが原因で、正気に返ったらしい。

 「師匠、何なんですか、あのモヤは?」

 「ああ、ロック!お前にも視えたか。お前も霊感が相当強いからな。・・・・・実はオレ自身、認めたくねぇんだが、あのモヤは、オレの推測が当たっているとすると、聖なるものが関係している。だから、悪魔の力が宿った品を投げつけたら、その”主”が逃げ帰ったんだ。」

 「聖なる力って!?でも、聖なる力が加わっているとしたら、なぜ、こんなにも不浄な事が起こるんですか?聖なるものだったら、もっと清い現象が起きるのが当たり前じゃあないっすか!?」

そう、不思議そうに眼を丸くして言うロックにクリフは言う。

 「ロック。聖なる存在だったとしても、それが元人間ならばどうだ?そうすれば、どんなに聖なる人だったとしても、どんなに悟った人と言われていても、人間ならば、誰でも心に暗闇が必ず存在する。そして、ここは、聖都だ。」

そのクリフの言葉を聞くと、ロックはまさか!といったような心の叫びと共に目を大きく見開いた。

 「つまり、そういう事だ。オレだって、んな汚ねぇ事件に聖人が関与してるなんて、思いたくないさ。」 

 「・・・ってことは、やっぱり、この都のマザー・テルサンが、・・・・・・!!?」

 「いや、100%そうとはまだ断言できねぇが、聖人だった人間霊が犯している事に間違いはなさそうだ。」

 「師匠・・・・・・。だとすると、本当に嫌な事件ですね。」

 「オレもそう思う。だが、聖人といえども、単なる猿だかんな。」

そうロックとクリフが話し合っていると、

 「兄ちゃんたち、遊ぼうぜ!」

別のヤローが、またもや性目的で近づいてきたのである。男運の良いクリフがいるので、それも当然と言えよう。

 クリフは、今度は黒魔術に使用される呪いの人形を、その男めがけて投げつけた。すると男からモヤが立ち上り、そのモヤは急いで男から去って行ったのだ。

 モヤが全身から抜け出ると、男はきょとんとしてその場に座り込んだ。

 「あれ?俺は一体・・・!!?」

その男も正気を取り戻し、家へ戻り始めたようだった。

 変態だけれども優秀な霊能者であるクリフは、モヤが去って行く方向を見逃さなかった。


 そのモヤは確かに、マザー・テルサンが眠る霊廟がある方向へ飛んでゆき、霊廟に吸い込まれるようにして消えていったのだ。

 「やっぱりだ!オレは、最初っから、邪気が全く感じらねぇこの街が悪霊に襲われている、と言われた時に、かなりの違和感を感じてたんだ。やっぱりここは、あの聖女であるマザー・テルサンが絡んでいるらしいな。ロック、急いで霊廟へ向かうぞっ!」

そう言うと、まだショックから立ち直っていないロックの腕をつかみ、クリフは走り始めた。 

 「師匠!やっぱし、聖人であるマザー・テルサンが主犯なんですか?だって、聖人ってのは、清い心を持っていた方なんじゃあないですか!?」

そう言うロックにクリフは苦い表情で言った。

 「聖人とて、ただの人間にすぎねぇんだ。必ず、闇の部分を持っている。だからオレたちで、その闇の暴走を鎮めねばならねぇ!」

 「・・・・・・。」

複雑な表情を浮かべ、ロックは無言でクリフのあとを追った。

 彼は正直、聖人も人間であるから、闇の部分が黒く暴走している、との真実をまだ信じたくはなかったのだ。聖人であるなら清らかであってほしかった。だが、クリフのいつにもまして真剣な表情そのものを垣間見て、信じざるをえなかった。


 二人は男どもの熱烈な誘いから逃げるように小走りにかけ、霊廟の中へと急いだ。

 霊廟の中に入って行くと、テルサンの像が

 「汚らわしき私をお許し下さい・・・・・・。」

と、そう繰り返し、語り始めたのだ。汚らわしき・・・ん?そういえば、テルサンの像は、その言葉を繰り返している。「汚らわしき」とは、一体どのような心境なのだろうか?ロックがあれこれ考えをめぐらせていると、クリフは同じ言葉を繰り返すその像なんかはそっちのけで、テルサンのミイラが埋められている場所に向けて語りかけたのだ。

 そこからは、ただならぬ性への強い執着の念がまるで井戸から水がこんこんとわき出るように、滲み出続けていたのだった。

 その強い執着の念が出ている場所に向けてクリフは言い放った。

 「おい!この王都のヤローどもを狂わせてんのは、テルサン、てめぇーだな!?」

そう言うと、いきなりテルサンのミイラが埋められているその場所から、ピンク色の煙が立ち上り、それが徐々に人の姿を形成してゆく。

 「おうっ!!」

クリフは思わず顔を赤らめた。若い男であるクリフは、それに見とれずにはいられない。

 ピンク色の煙は徐々に人の形となり、最後には、裸のナイス・バディーの美しい女性に変化したのだ。その煙から形成された女性は衣服を一切身に着けていなかった。

 美しい女性の裸体を目にし、クリフの鼻からは滝のように鼻血がしたたり落ちてゆく。勿論そのエロい裸の女は、テルサンの霊が見せている幻影にすぎぬものなのであるが、若いクリフには、かなり衝撃的な印象を与えたのだった。

 「霊能者クリフ!よくぞ、我の陰謀を見抜きおったものよ!そう、我はずっとずっと、セックスというものをしてみたくてたまらなかったのだ。

 だが、我は子供の頃からシスターになる道を歩むように言われており、そうしてきたが、ある時、教会で男女がエッチしている姿を見たその瞬間から、セックスしたいというその衝撃が強くなり、それは聖女として死ぬまで変わらず、我を苦しめ続けていたのだ。そのエロいシーンを教会で目にした時には、まだ我の名はマメリアという名前で、洗礼名を与えられていない、かなり若い時であったな。」

 「だからって、都の人々を苦しめて良いと思ってるのか!?」

クリフは実にシリアスな表情で言ったのだが、鼻血が彼の恰好良さを奪い、ギャグそのものの光景にしか見えない。

 テルサンの霊は続けた。

 「皆、勝手よのぅ。我が、都を救ったからということで、清らかな聖女として、我を祭り上げ、我の苦しみを知らずに、いつもいつも、自分勝手な欲望をこの我の霊廟で祈っておるものだからのぅ。

 例えば、旦那のオナラを臭くなくしてほしいだとか、〇〇ちゃんと結婚したいだとか、宝くじが当たりますようにだとか、若返って綺麗になりたいだとか・・・・・・。実に勝手にお願いし、そうして皆、好きなように生活を送っている。・・・我が、密かにセックスできなかった苦しみを抱え、まだその苦しみから抜けられないというのに・・・・・・!!!」

そうして、そのナイス・バディーの形をとったテルサンは、悔しそうに顔を歪め、涙を流した。

 「テルサン!大体の事は、理解したが、なぜ、よりにもよって、ヤロー同士をくっつけまくったりしてたんだ!?純粋にセックスの楽しみを得たいのなら、男女のカップルでも良いんじゃあねぇか!?」

そう質問するクリフに対し、涙を流しつつ、テルサンの幻影は答えて言った。

 「・・・我も清らかな教えを得て、生前をずっと過ごしていたシスターだ。プライドというものがある!それゆえ、男同士にしたのだ。男同士なら子供ができない関係なんで、神も我を許してくれると、そう思って・・・」

 「男同士、女同士って関係ねぇーだろ!?今、おめぇのせいで、都中の特に女の子たちが泣かされてるんだ!お前は聖人だが、悪い事をした、その事実は確かなんだぜっ!」

クリフは、突き刺すような強い言葉でテルサンの幻影に向かって声を荒げた。

 聖人として祀られているマザー・テルサン。だが、今は聖女というよりも、どう見ても性的な念に囚われすぎている魔物そのものだ。

 「確かに我のしている事は、良からぬことと心得ておる!・・・・・・だが、我のミイラに詣でる人々の願いも非常に邪まで勝手すぎる!!時には誰かを呪い殺したいだとか、トイレで用を足しているのをのぞきたいだとか、犯罪が成功するように、だとか・・・・・・!人とは、何と邪まな部分を沢山持っているものよ!そのような邪まな願いを聞き続けるうちに、我は自分ができなかった事もやろうと、そう決心したのだ!」

テルサンの霊は、悔しそうに顔を歪めながら、そう言ったのだ。

 「だからって、女の子たちを苦しめるのは、聖人として、あるまじき事だぜっ!!」

テルサンの霊に対して、強くそう言い放つクリフ。

 すると、

 「霊能者のクリフさん、ちょっと待って下さい!」

後ろの方から、いきなりしゃがれた声が聞こえてきたのだ。

 「何だ!?」

驚いてクリフとロックが後ろを振り返ると、そこにはかなり年老いたバアさんの修道女が立っていた。

 「イズラたちがあんたに依頼した、という事で、わしは興味本位から、あんたがどんな事をしているのか面白そうなんで見に来てみたんだが、あんたは女性の気持ちを全く分かっとらんな。」

静かにそう言ったシスターの顔には年齢を感じさせるシワが沢山存在した。年月を沢山生き抜いてきた人生経験豊かなシワシワのばあさんのシスターだ。

 そのシスターのバアさんは、いきなり、ポッ♡と顔を赤らめ、言ったのだ。

 「霊能者さん、あんたはまだ若いから分からぬとは思うが、どのような女でも、例えそれがシスターだとしても、一度は素敵な男性と一夜を共にしてみたいと夢見るものなのさ。」

そう言うと、シワシワのバアさんはテルサンの方向を見て言ったのだ。

 「我らが崇めしマザー・テルサン様、何も自分が契りを交わしたい、というような事を恥ずかしがらんでください。わしにだって、日ごろシスターとして生きている時でも、男の人と素敵な一夜を過ごしてみたい、そのような煩悩は潜んでおります。だって・・・」

そこでババァのその目は夢見るシンデレラの様な輝きを帯び、頬を赤らめ、言ったのだ。

 「私たちって、聖女とか、シスターとかでもあるけど、その前に生物学的に女性じゃないですか。だからテルサン様、女性としてのあなたの苦しみ、私にも分かります。」

そうして頬を赤らめ、しばし感慨にふけっていたバアさんだったが、急に真面目な表情になると幻影に向かって言ったのだ。

 「どうでしょう!ここは、思い切って性願望を満たしてみては?そうすると、あなたの苦しみも取り除かれますぞ。」

 「・・・でも、体の無い身の我がどうやって・・・・・・!?」

そう、とまどいつつ言うナイス・バディーのテルサンの幻影にババァは言う。

 「なに、あなたが女性の体に乗り移り、男性とのセックスを体験すれば良い。そうすれば、あなたの苦しみも治まる事でしょう。」

そう言うバアさんに、テルサンは不安げな表情で、

 「でも、そんな事してくれる女の人っているのでしょうか?」

と言い、困惑を隠しきれない。

 するとバアさんは、とんでもない事を言いだしたのだ。

 「テルサン様は、わしのこの体に乗り移り、性的な快楽を体験してはどうですか?わしはもう十分にシスターとしての役割を全うしてきました。

 だから、わしが媒体となり、男と契りを交わした後には、わしは普通のばあさんとして生きてゆく。」

 「・・・・・・!!!」

そのようなバアさんの申し出に、テルサンは顔を覆って泣き出したのであった。

 さて、次なる運命は、クリフたちを、どう動かしてゆくのでしょうか!?

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