てとりあしとり
「ダ、ダンスの指導や礼儀作法の勉強のようにしてくれればそれで良い。さ、教えるのじゃ」
そう言って第3王女はまだ発育途中の胸の前で手を組んでつま先立ちをする。あごはねだるように上がったまま。普段強気の瞳はか細く閉じられ、まつげの先が不安げに震えている。
「姫様……。どこで覚えたのですか」
とは、まさか聞けない。
完璧。
ここまでされては止めようにも手も足も出ない。
窓の外の月は恥じらうように雲に隠れる。風に揺れるカーテン。潮騒のようにくり返される衣擦れの音。甘い、吐息。
夜は、こんこんと――。
おしまい
ふらっと、瀨川です。
他サイトの同タイトル企画に出展した旧作品です。瀨川潮♭名義。2009年。
朝っぱらから夜の吐息が聞こえてきそうなお話を投入です(