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それから数日後。

シーリアでは、城の整備や騎士たちの処分が漸く終わったため、王位継承式が執り行われた。

その式には立会人として、アルミラからは俺とジークとマシルと国王が、ソラトからはナナシさんとレオンハルト様が参列した。

特に事もなく式が終わると、パーティが開かれた。


それにはシーリアの貴族たちも参加したため、かなりの人数がいた。

そのため早々に人酔いをし、そっと会場を抜け出して庭にあったベンチに外套を頭からすっぽり被り膝を抱えて座ってから暫く。ふっと隣の空気が揺れた。彼が敵だったならワタシは殺されてましたね。


「貴方が抜けて来て大丈夫なんですか」


「問題ないだろう。いざとなればルカがいるしな」


ルカの扱いが雑な気がする。ワタシが言えたことではないかもしれませんが。


戦闘があった所為でルカの家は建て直ししなければならないほどに荒れ、それならうちで料理人やればいいじゃん、というカルアの一言によってルカはシーリアに移ることになった。


コトハ家族はあの村に戻りたく無いらしく、自分たちから城で働かせて欲しいと申し出があり、そのまま採用に。クライさんも呼んだらしいが、彼はあのまま村に残ることにしたのだとか。


ナナシさんはそのままソラトに住んでいますが、頻繁にバロンの元へ遊びに行っているためほとんどシーリアにいる様なものらしい。


「お前こそいいのか」


「ジークがいますから」


魔術師ですから頭も悪くないですし。

……魔術師ですから。


「酒にでも酔ったか?」


「人です。お酒は強いですよ」


「あぁ…、お前が酔っ払うのは想像できないな」


「バロンは何しに来たんです」


「……酔い覚ましだ。歳を取るとどうも酒が回るのが早い」


「おっさんですね」


「うるさい。お前だってそう変わらないだろう」


「三十超えてるのと超えてないのじゃ結構差あるでしょう」


そこで返す言葉が見つからなくなったのか、会話が止まる。

騒ぎ声も届かないこの場所はとても静かだ。


「いつになったら終わるんです?」


「もう終わる」


「戻らなくていいんですか」


言いながら顔を上げ、外套を取ると辺りはすっかり真っ暗だ。随分長い間ここにいた様ですね。


「時間は伝えてある。時期に殿下が解散にするだろう」


戻るか?そう聞くバロンに首を横に振る。どうせあいつらは探しに来る。


「悪かったな、巻き込んで」


「八年、ですからね。本当はもっと早く動くと思ってましたよ」


「殿下がどこにいるのか分からなかったんだ。お前が上手く匿うから」


「匿わなきゃ貴方が見つける前に前国王に捕まってたかもしれませんよ?」


「…それもそうだな」


「そうですよ。ま、八年もあれば色々仕込めましたけどね」


「……仕込んだ」


「ティルと同じですよ。

普段はあんな馬鹿ですけど、いざとなればちゃんと出来る様に刷り込んでおきました」


「お前に刷り込まれたならうちも何とかなりそうだな」


「その辺りも考慮して報酬を考えて欲しいんですけどね」


「そういうことか」


「ふふ。何でもいいって言われましたけど、そちらにお任せします」


それで貴方たちの思うワタシの価値が分かりますからね。

そう付け足すと、溜め息を吐かれた。

ここ数ヶ月でバロンはいくつ幸せを逃したんでしょうね。


「また意地の悪いことを」


「楽しみにしてます」


と下に向けていた視線を上げると、


「レイネー!!」


大きく手を振って俺を呼ぶ馬鹿が見えた。


「余った料理持ってきて外で飲もうかってー!」


「態々持って来たの?」


「外の方が気持ちいいじゃん!空綺麗だし!」


と言われたので上を見上げると、確かに綺麗な三日月と満天の星が見える。


「あー、確かに」


「今!?見てなかったの!?」


「酔い覚ましに出てきただけだからね」


「酔い?あぁ、人ね!」


「とか言って本当は話するのが面倒くさかったんだろ?」


そう言いながらジークが近づいてきて俺にお酒を渡す。酔ったって言ってるやつにお酒渡すなんて中々意地悪だ、なんてね。有難く受け取って口を付けると、


「ほら。普通気持ち悪いって言ってるやつが酒飲まねぇだろ」


「これそんな度数高くないんだからジュースみたいなもんでしょ」


「お前な、」


そう始まろうとしたジークのお小言は、


「「「花火したい!!」」」


向こうで騒いでいた、マシル、カルア、ティルの声に遮られた。お前らはいつでも欲望に忠実だな。


「レイネー!花火持ってない?」

「持ってる訳ないでしょ」


「あ、俺持ってるぞ」


何で俺に聞く。そして何で持ってる。そう思う俺を他所にジークはごそごそと持っていた荷物から手持ち花火のセットを取り出す。だから何でだよ。


「前にちょっとしかやらなくて残ってたのを、そのまま入れたままにしてただけだからな?」


ちょっと引いてた顔をしてたのか、弁解するように言いながら、マシルにそのセットを渡す。花火鞄に入れっぱなしなの?邪魔じゃない?


「わーい!花火ー!!」


それに目を輝かせて奪い取るようにして向こうに戻って行ったマシル。あいつ何歳だ。俺より年上でしょ。


「……お前らちゃんと仕事、」

「してます」

「してる」


ジークと二人、即答する。分かりますけど。上に立つのがこんなのだと不安になりますけど。一応やることやってますから。


「ジーク!火点けてー!」


……一応。

しょうがない、と向こうに行って火を点けてあげるジーク。

向こうにいた奴らは全員花火を持たされ、ジークも火を点けた後、巻き込まれてた。


カルアたち三人は、それぞれ片手に三本ずつ両手に持って、走り回ったり振り回したりしてる。良い子は真似しちゃ駄目なやつ。


他の奴らもそれに、熱っ!とか文句を言いながらも何だかんだ楽しそうに花火をしている。

それを側から傍観して、思わず漏れた声がバロンと被った。


「「平和だなぁ…」」


去年の12月から始めたこのお話。今回で完結となります。

時系列が前後したりと、読みにくいところもあったかもしれませんが、最後までお付き合い有難うございました。

お気付きの方もいらっしゃったかもしれませんが、奇数話と偶数話で視点を変え、それぞれに担当を決め、二人で執筆しておりました。どちらのお話が読みやすかったでしょうか?評価、感想など頂けると幸いです。

有難うございました。

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