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この世界の人間は大きく2つのタイプに分けられます。
魔力を持つ人間と持たない人間。
魔力とは、魔法を使うときに必要なもので、生まれ持ったもの。
持たずに生まれた者は何をしても魔法を使うことは出来ません。
持って生まれた者でも、どんなに鍛錬しても魔力量を増やすことは出来ません。
魔法を使う者は魔術師と呼ばれ、攻撃、防御、回復といった魔法が使えます。
魔力量のランクは多い順に、S、A、B、C、D、Eとなり、魔力を持たない者はFとなります。
1つの魔法につき使う魔力は決まっていて、それ以上の魔力を使ったからといって威力が強くなる訳ではありません。
複数の魔法を重ねることで威力は強くなります。
しかし、魔法同士の組み合わせによって効果が変わったり、威力が上がったりするので、魔力量が多い方が強いというわけでもありません。
魔術師は基本的に攻撃、防御、回復の全ての魔法が使えますが、得手不得手があり、魔力を1番使うのは回復で、防御、攻撃と続き、回復だけは魔力量が多い者の方が有利となります。
回復が得意な者は、回復が得意な家系の者や魔力量が多い者ばかりです。
魔法は自分で作ることも可能なので、センスや閃きが重要となってきます。
カルアは魔力量はSランク、回復が得意な家系に生まれたようで、魔力量も多く、回復が得意ですが、魔力の調節が苦手なので無駄な魔力を使ってしまう攻撃、防御は苦手です。
しかし、センスがいいのか閃きが強いのか、魔法の組み合わせは良く、こちらが考えつかないような魔法を使ったりもしますが、魔法は1つの魔法に魔力を使いすぎると暴発することがあり、カルアは魔力量を考えずに魔法を使うので暴発することが多々あり。
だからワタシたちの方にまで魔法が飛んできたりするので防御しないといけないんですよね。
ワタシは魔力量はBランク、回復は苦手ですが、魔力量の調節は割と得意なので攻撃の連射や、威力の高い攻撃を速く打つことが出来ます。
が、相手の目を盗んで足下に動きを止める魔法を敷いたり、強い光を一瞬放つ目眩ましの魔法など、小賢しい魔法の方が得意です。
そういった魔法は攻撃と防御のどちらでもないような気がしますが、組み合わせ次第といったのはこういう魔法のことで、攻撃魔法ばかり重ねる、防御魔法ばかり重ねる、のではなく、攻撃も防御も混ぜて組み合わせることで作ることが出来ます。
あと、カルアのおかげで防御も得意になりました。
次に、魔法が使えない者のことですが、そういった者は剣や槍などといった武器を使って戦う者が多いです。
武器を使う者が多い中、時々素手で突っ込むような馬鹿もいるようですが。
そういった武器を使う人々は、魔術師より一撃の攻撃力は低いですが、体力とスピードがあり、接近戦に向いています。
もう少し細かく分けると、剣や斧や鎌、時々いる素手で戦う者はリーチが短いため、前衛と言われ、身体が屈強な者や、小柄でもスピードが速い者が多いみたいです。
他には、銃や槍や弓など少し距離の取れる武器などを使う者がいて、中衛と言われます。
体力は前衛程ではありませんが多く、スピードは速い。
シルラは中衛で、銃を得意とします。
カルアは攻撃間隔は長く、ワタシは短い方ですが、それでも前衛とのスピードとは程遠く、あまり敵に近づかれると困るので、シルラには前衛として戦ってもらっています。
中衛は前衛と同じ武器も平均的に使えるので。
シルラが前衛の時は鎌を使います。
まとめると、ワタシとカルアは魔術師、シルラは中衛、時々前衛で、
攻撃力は 魔術師>前衛=中衛、
体力は 前衛>中衛>魔術師、
スピードは 中衛>前衛>魔術師、
回復は魔術師のみが使えます。
ワタシたちが今いるアルミラは、西と南は海、北は山を挟んで他国と隣接した、比較的魔術師が多い国で、アルミラの東側に隣接するシーリアという国は、南は海、北と東は山を挟んで2つの国と隣接していて前衛や中衛が比較的多い国。
この2つのは同盟国です。
そして、シーリアで、8年前、王族直属の第一騎士団が北側の国とのいざこざを片付けようと王宮から離れたときに、大きな反乱が起こったんです。
シーリアでは代々、王族の本家が国を治めており、本家の人間は皆聡明で、どのように国を作れば平和で豊かな国が造れるかを理解しており、それを基に国政を行ってきました。
8年前の反乱は、自分の私利私欲のために国を治めようとする王族の分家が起こしたもので、王宮に1番強いとされる第一騎士団がいなかったこともあり、本家は倒されてしまいました。
第一騎士団は王宮が襲われたと聞いて、大急ぎで戻ってきましたが、時既に遅し。
王や王妃は亡くなっていました。
殿下も虫の息でしたが、分家の人間は亡くなったと勘違いしたのでしょうか、殿下をそのまま放置していたのです。
それに気付いた第一騎士団の当時の団長が他の騎士に殿下を連れて魔術師の多いアルミラに逃げろ、あそこなら誰かが回復してくれるだろう、と指示し、その騎士はアルミラに逃げ切ったようですが、助かったのかは不明。
ですが、最近殿下がアルミラで生きているという情報が何処かから生まれたようで、シーリアの現在の王が殿下を殺せと指令を出したようです。
殿下は当時10歳で、騎士は18歳と言われているので、現在は殿下は誕生日にもよるので17〜19歳程、騎士は24〜26歳程。
因みに、カルアは先ほども言いましたが17、もうすぐ18歳。
シルラはこの前誕生日を迎えたところで25歳。
アルミラは小国で、ワタシは情報屋をやっていて、他国との人の行き来も知っており、アルミラの国民の顔は皆知っているんですが、この2人は8年前、急にシーリアからアルミラに来たんです。
まぁ、来たというか、ワタシはもともとアルミラの国民で、シーリアとの国境に住んでいて、情報収集のために家から出たときに、家の前で2人が倒れているのを見つけ、その反乱で被害を受けたシーリアの国民なんだろうと思って拾い、苦手な回復を使って、手当てをしたんです。
………まさかとは思いますが、
「あなたたち、殿下と殿下を連れて逃げてきた騎士、なんてこと言いませんよねぇ。」
そう、そこなんです。
2人の歳は殿下と騎士の歳と一致していて、アルミラに来たのも8年前の反乱のとき。
あまりにも殿下と騎士の情報と一致しすぎている。
「……どうしよ、シルラ」
「仕方ないだろう、認めるしか」
……何であのとき拾っちゃったんでしょう。
でも、家の前で倒れてる人間を放っておく程、ワタシも薄情じゃないんですよねぇ。
「レイネの言う通り、カルアと俺は8年前、生き逃れた殿下と騎士だ。」
「はぁ……
日頃から面倒ごとは嫌いだって言ってるのに。
…確認ですが、カルアが殿下で、シルラが騎士で合ってます?」
「そうだよ!
よく分かったねー!」
よく分かったも何も、
「歳から考えれば分かるでしょーが」
「あ、そっか。
今まで黙っててごめんね。
助けてくれてありがとう」
「俺からも礼を言う。
だが、巻き込んで悪い」
……巻き込む?
「ワタシは確かにあなた達を助けましたが、そちら側のいざこざに首を突っ込んだ訳ではありません。
なのに巻き込むって……」
「もうすぐここにシーリアの人間が、俺たちを殺しにやって来るだろう」
そうすると、必然的に俺たちと共に行動しているお前が俺たちを助けたと思われ、お前も狙われるだろう。
そう、告げられた。