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ソルナさんが掃除機みたいな勢いでご飯を平らげるのを見ただけでお腹一杯になった昼から暫く時間が経ち、もうすぐ日が変わろうとする。


遅い、暇。

不自由はしてませんが、退屈。暇、とにかく暇。

と、シーリアに着いたと漸く報告してきたルカに文句を言う。


呆れられながら適当に返事を返され、ソルナさんに魔物を呼ぶように伝える様に言われた。

え、あの怪奇行をまた見ろと。

しかもあれより動きが酷いとかふざけてるでしょ。

結局バロンたちは明朝に来ることが決まって、ラルは深夜に先に来るらしい。


「ソルナさん、魔物呼んでおいてください。

今回の主戦力になりそうです」


はぁい、と気の抜けた返事を聞いて、逃げれない様に格子が付いた窓から外の様子を見る。

深夜だからでしょうか、見回りはそんなに多くなさそうですね。


「出来るだけ小さくて、ラルさんがあなたの魔物だって分かるのっています?」


「ラルならほとんどの子を知ってるしねぇ〜、ミキーでいいかしら」


どこかの夢の国のねずみの男女の名前を組み合わせたみたいな。

一度パチンと指を弾いて手をバタバタバタッと大きく振ると出てきたのは、やっぱりねずみか。


そのねずみの耳程の小さな光の玉を出し、


「その子にこれを追いかけるように指示してくれますか」


そう言うと、手の平に乗せ顔の前に持ち上げ光を指差しながら、何かぶつぶつと言い始める。

暫く見守ると、


「は〜い、これで大丈夫よ〜」


と床に降ろして言うので試しに光の玉を部屋一周させるとちゃんと着いて行った。これなら大丈夫そうですね。


窓を少しだけ開け、地面まで落とす。

慌てたようにバタバタと暴れていましたが、そこは魔物なだけあって綺麗に着地した。ティルか。


さて、まずはラルと合流させないと。

十中八九正面突破はしないでしょうから、裏口の方に向かわせる。

この部屋は裏口側なのでちゃんとラルが来たかどうかは見えます。


見回りと遭遇させないように、その辺の茂みに誘導し、そのまま待機させる。

丁度見回りが過ぎて行って直ぐにラルが現れた。

ミキーをラルのところまで誘導し、ラルが気付いた所で裏口の方へと向かわせる。

ちゃんと着いて来てる辺り、ソルナさんの魔物と気付いている様ですね。


後は王宮の構造、見回りの経路を考え誘導する。

ここからは向こうの景色は見えないのでワタシの記憶次第。

もし違ったり、経路が変わっていればラルさんは簡単に捕まるでしょうね。


ゆっくり確実に動かし、後少しとなった所で、ドアをノックする。

何だ、そう言いながら部屋に入って来た騎士を思いっきり引っ張り、後ろに回って軽く首筋を叩き気絶させる。

今から魔力を使うわけにもいかないので、その辺にあった紐で手と足を縛り、口も塞いでおく。騒がれると面倒なんで。


適当に部屋に閉じ込め、光の玉をこの部屋の前まで誘導すると、扉が開いてラルさんが現れた。

光の玉を消すと、


「お前らか、バロンの仲間とやらは」


そうワタシとコトハを見ながら問うてくる。


「そうですね、仲間かどうかは微妙ですけど」


どうせバロンも言ってたでしょう、と言うと


「お互い信用してないってか。面倒だなお前ら」


つかそれでよくこんな危険なことに付き合えるわ、そう溜め息を吐かれた。

仕方ないじゃないですか、ワタシにだって目的があるんですから。


その辺りで話を切り、一旦仮眠を取ることにする。

このまま起きて本番力出せなきゃ意味ないんでね。


次に目が覚めたのはルカから通信が来た頃。

今更ながらに作戦を立てる。

出来るだけ殺さずに、中は任せた、とのこと。雑か。

今からこっちに向うらしい。漸くですね。

残りの三人も起こして、


「ソルナさん、出来るだけ大きな騒ぎになる様な魔物を裏口の方に」


指示を出す。

多分あいつらは今いる場所からしても、正面から来るだろう。

となると人は裏に集めておいた方が始めやすい。

ラルさんにまた国民に被害が行かない様に結界を張ってもらって。


「王宮や団舎を壊さず、人を殺さない程度に暴れさせてください」


そう言うとすぐにワイバーンが出て来た。

この親子ワイバーン好きですね。

ばさばさと大きな羽音を立て耳を劈く様な声で威嚇をする。


当然城内はパニックになる訳で。

廊下から怒号や急く足音が聞こえる。

ちらと外を見てみるとかなりの騎士達が集まっていた。

思ったよりの集客率ですね。

暫くすると廊下からは何も音が聞こえなくなる。


「じゃ、まずはコトハの武器を取り返しに行きますか」


ワタシがシーリアの騎士達に捕まったときには既に弓はコトハの元にはなかった。

となると、騎士達に取り上げられ捨てられたか何処かに隠したか。


ワタシたちを連れ去った理由は戦力集めでもあった。

そうなると、勿論武器を捨てるなんてありえない訳で。

隠した場所はどうせ武器庫。

序でにシルラに銃弾でも取って来ましょうか。


と静まり返った廊下に出、地下へと向かう。

途中にいた騎士たちは軽く倒しながら。

着いた先には誰もいないものの、ドアには番号キーが。


「鍵かかってるわね〜」


そんなソルナさんの声を無視して番号を入力する。

勿論一発で開くわけで。


「……侮れんものだな、情報屋も」


「一人はいると便利でしょう?」


そう言いながら中に入る。

剣、槍、鎌、斧、鉈、銃、飛び道具……と色々な種類が揃う中、弓の所に行く。

今はもう大分弓の使い手は少なくなったためか、両手で数えられる程しかなく。

コトハの弓を見つけるのは簡単で。

あとは他に使えそうな物を少々拝借して、武器庫から出ると、


金属同士がぶつかる音が響く。

思ったよりバレるの早かったですね。


「やはりあの騒ぎはお前らか」


「あの騒ぎ?何の事でしょう」


「惚けるな。だったらそいつはどうやって入った」


「彼なら深夜に来ましたよ」


深夜の警備って緩いですよね、そう少し口角を上げながら言うと、剣にぐっと力が籠るのが分かる。

こいつと力勝負なんてしたくないんですけどね。


「だったらあの魔物たちはどう説明する」


そいつの仕業だろう、そうソルナさんを指しながら言う。


「指示をしたのはワタシですけどね」


そう言い切るかどうかのうちに蹴り技が飛んでくる。

後ろに飛んで避けたものの。

またすぐに次の一手が飛んでくる。

一旦魔法弾を飛ばして距離を取った一瞬の内に、コトハたちに先に外に出ろと伝え、また殺り合う。


一瞬躊躇した様にまごついていたものの、ラルさんが二人を引っ張り直ぐにここを離れた。

指示を素直に聞いてくれるのは有難い。

さて、こいつをどうしましょうか。


「逃したところで直ぐに捕まるぞ」


特に逃げるのを妨害する様子もなく、一瞥するだけだったこいつが言う。

だけど、


「それはどうでしょう」


だってもうすぐ本格的に反乱が始まる。

魔物が襲って来てパニックになってる中、反乱まで始まれば人質なんて構ってる場合じゃないだろう。


「どういう意味だ」


その言葉と同時に短剣を落とされ、胸ぐらを掴まれ壁に叩きつけられる。

痛いなぁ、もう。

前衛が本業相手じゃそりゃ力勝負で勝てやしないけど。


「お前なら気付いてるんじゃないの」


シーリアがどういう状況なのか、俺が誰なのか。

そう言うと少し緩んだ手を掴み捻り上げ、鳩尾に蹴りを一発。

諸に受けたものの直ぐに態勢を取り直した辺りは流石と言うべきか。


「どうしてお前が生きている」

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