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日が変わって。


「取り敢えずコトハたちがどこにいてるのか確認したいですね。

シーリアの騎士に連れ去られたなら城下町を通ってそうですし」


「そうだな。

襲われたのが今日だからまだその辺りにいるかもしれんしな」


「決まりですね。

じゃあ、一旦ルカの酒場の近くまで戻りましょうか」


「全員で聞き込みしながら追い掛けて間に合わなくても困るし、二つに分かれるか?」


「片方はシーリアで待つんですか?」


「その手前だな。

シーリアに入ってしまうのは危険だろう。

アルミラとソラトの国境付近がいいだろう」


「何でアルミラなんだよ?」


「シーリアとソラトの出入国は手続きが面倒でしたね。

アルミラとソラトの方が関係は良好ですから、出入国は簡単ですもんね」


「そうだ。

シーリアとの手続きは丸一日かかると言われてるしな」


「アルミラ付近に行くならワタシがそっちにいた方がいいですね。

連絡はどうやって取るんです?」


「……何か無いのかそういう魔法。

テレパシー的な」


「魔法が万能だと思ってんじゃないですよ」


「無いのか……」


「………………………無くはないですけど」


どっちだよ、と突っ込まれましたが、面倒なんですもん、あれ。

繋ぐの時間かかりますし。

ワタシのはもう一回やり直さないといけないですし。


「………ルカ、あれってまだ使えます?」


「使えねぇって言いたいんだが」


「何でそんな乗り気じゃないんだ?」


「「面倒くさい」」


「綺麗にハモったな」


呆れた目を向けられましたが、面倒くさいものは面倒くさいんです。


「えー、やります?

というか取り敢えず馬車乗ります?」


「そうだな、行くか」





ということで、ナガルの家を出てコトハたちが襲われた馬車の停留所まで行くと、丁度馬車が止まっていたので乗り込む。

他に客はいませんでしたが、一応奥に座る。


「で、何とかならないのか?」


何とかって言われてもねぇ……。

魔力をそんなに消費する魔法ではありませんが、高度な魔法ですし……。


プレートの付いた革紐のブレスレットを取り出す。

ルカのはそのままで使えますが、ワタシのはプレートが割れてるので、新しいのに付け替える。


付け替えた新しいのに魔力を当てながら、通信用にするために詠唱を始める。

この時点で長いんですよねぇ……。


「はい、出来ましたよ。

ルカ、準備出来てます?」


「……一応な」


ものっっっっっっ凄い長いですからね、あの詠唱。だから嫌なんですよ。

それをしている内に、チーム分けをしてもらう。


プレートに魔力を弱く当てながら、そんなに魔力を使うと最後まで持ちませんから、頭に流れてくると詠唱を唱えていく。

繋ぐ相手とワンフレーズ毎に交互に唱えていくんですが、やっぱり長い。

詠唱なんてしなくていい魔法が殆どなのに。

だから、この魔法本当に嫌いなんですよね。





と、漸く終わった頃に城下町の停留所に着いた。

ルカのチームにはさっさと降りてもらう。


残ったのはカルアとシルラ。

三人か、少ない。

まぁ、コトハの両親とかいても困りますけど。


「初期メンバーですか」


「だな。

と言うか俺としてはまだお前が着いて来てるのが意外なんだが」


そう言えば、始めは嫌がってましたもんね。


「途中で目的が出来たんですよ。

あなたたちに着いて行ってる方が効率がいいんです」


「目的ー?」


「別に気にしなくていいですよ。

勝手にやってるんで。

ま、でもその目的のためにはあなたたちに最後まで着いて行くことになりますかね」


だって、あそこにあいつがいるから。

別に嫌いとか憎いとかいうわけでもありませんけど。

理由によれば殺すかもしれませんね。

なんて、絶対言いませんが。


「ふぅん。

レイネがいれば僕たちも心強いしね、何でもいいけど」


カルアはこういう時だけは空気が読めますからね。

それ以上は何も聞いてこない。


「で、俺らは何処まで戻るんだ?」


「オスト村近くのアルミラとの国境付近ですね、アルミラに入ります」


「でもシーリアに直接戻るってことはないのか?」


「恐らくないでしょう。

今のシーリアは凄い不安定ですからね、王族たちは焦ってます。

そんな中一日もかけて入国手続きしないでしょう」


「そうか、シーリアはカルアを連れ去ったと考えてるもんな」


「……どうでしょう。

確かに第一優先はカルアだったかもしれませんが、誰でも良かったのかもしれません」


「どういうこと?」


「シーリアが不安定だと言ったでしょう。

もういつ反乱が起こってもおかしくない状況です。

そうなったときに対抗できるよう戦力を集めているんでしょう」


だから二本撃ちが出来るコトハが連れ去られたってことです。


「……それはさ、バロン先輩たちは知ってるのか?」


「知ってるんじゃないですか?

考えれば分かるじゃないですか。

カルアは魔術師なのに連れ去ったのは弓使いなんですから」


そうか、俺は思いつかなかったわ、とか言ってるシルラに呆れた視線を投げかける。

シルラも何気にボケてますからね。


「それってさ、ちゃんとつながるの?」


「試してみます?」


そう言って魔力を当てると、伸びてる糸みたいなのが見えて来るので、それを辿ってルカのところまで行って、


「聞こえますー?」


『聞こえてる』


そう返って来たので、ちゃんと魔法が成功してることが分かる。

さっきテストしてる暇なかったですからね。


「よし。成功ですね。

因みに何でコトハが連れ去られたかは分かってますよね?」


『……レイネがコトハが連れ去られた理由分かるかって言ってるが』


「それって俺らには相手の声聞こえないんだな」


「そう。だからカルアには無理です」


「ちょっと、どういう意味!?」


「そのままです。

馬鹿だから無理だって言ってるんです」


と言いながら、スプリットボールを渡す。

ちょっと存在忘れかけてましたけど。


「アルミラまで時間かかりますし、しっかり練習しときなさい」


『お前の台詞だけで何となく相手の言ってることも分かるよな』


「じゃあ、一々通訳なくても大丈夫ですね」


『いや、それは困るだろ。

つか、ナナシが戦力集めじゃないか、つってるが』


「あ、ちゃんと分かってるんですね。

シルラがボケかましてくれたんで、ちょっと不安になっただけです」


『反乱対策ってとこか?』


「そうでしょうね。

ワタシかあなたならスパイとしてシーリアに連れて行かれても問題無いんですけど。

コトハは通信出来ないですからね」


『俺は御免だが。

まぁ、確かにそうだよな』


「そっち何か情報ありました?」


『いや、まだ無い。

結構聞き込みしてるんだけどな』


「一回リオンのとこまで行ってみたらどうですか?」


『今向かってるが、あいつコトハのこと分かるか?』


「この前特徴教えてますから、大丈夫でしょう」


『は、いつの間に?

そんな話全くしなかったじゃねぇか』


「メモ渡してます」


『……抜かりねぇな、そういうとこ』


「そりゃどうも。

こっちはまだアルミラにも着いてないんで、取り敢えず着いたらもう一回連絡しますね」


『分かった。

こっちもまた何か分かれば連絡するわ』


そう言って通信を切る。

ずっと繋ぎっ放しだと魔力足りませんから。


「向こうはまだ何も掴んで無いですって。

ワタシとルカの知り合いのリオンって人のとこに向かうそうです」


「そうか。でも、俺らがアルミラに向かってる途中でコトハくんたち見つけられないか?」


「無理じゃないですか?

そんなに分かりやすい道通らないでしょう」


「それもそうか。

俺らってアルミラ着いたら何するんだ?

ずっと待ってるだけじゃないだろ」


どうしましょうか。

あんまり国境を離れすぎると見過ごす可能性もありますから。

その近辺で動くとしたら……。

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