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ズテン。

重い音を立てて尻餅を付くのは大変不満ながら、私である。


「…きゅう」

「はぁ…たるとん、お前はいつになったら動きを覚えてくれるんだ」


申し訳なさそうに小さい目をこちらに向け、体半分で近寄ってくるのはモグラ型モンスターのたるとんだ。例によって例のごとく。名前については触れないことにした。

どうせ、タルトのような色合いが由来だろう。


「あははー!おっさんまたこけてるー!」

「…ぐるたん、殺れ」


酷く楽しげな笑い声に大人気なくも青筋を立て、ティルと動きの練習をさせていたアンデッド系モンスター、ぐるたんに命じる。向こうの言うことはわからずとも、ティルと私の関係からいろいろ気を使ってくれたようで、今やここにいる十一体のモンスターは私の命令を優先して聞いてくれる。

ぐるたんは魔法と言うか、念力のようなものが使えるらしい。意味がわからず、魔物の相手をしてもらった際、遠く離れたラビーをぐにゃりと捻ったように捻じ曲げ血を吹き出させ、ぼきりぼきりと骨を折り絶命させる様を見せてくれた。それをさっすがぐるたーんなどと笑って見ていたティルがちょっと怖い。私でもぐろくて吐くかと思ったのに。

ソルナの家系は仲良くなったモンスターに対し酷く寛容な家系であるらしい。

そう零した隊長のため息の深いこと。今あの時に戻れるならば、きっと私は深く同意できたことだろう。


ぐるたんは辺りのものならがおー暗いの重さまで何でも持ち上げ投げることができるらしい。効果範囲は、半径十キロ。もはや化け物。いや、魔物なんだが。一体どこで仲良くなった。父親役として非常に不安になった。

さて、そんなぐるたんが操る石ーーというか岩ーーに追い回されるティルは一旦置いておいて、今はたるとんのことだ。ちなみに、たるとんには兄弟がいる。今私はその二体と連携の練習をしていたのだ。


「もぐたん、お前は大体覚えているだろう。アドバイスとかできないか」

「きゅうぅ」

「きゅう!」


たるとんと同じくすぐ側にやって来て地面から半身を出したもぐたんーーもちろん、外見に差異はない。たるとんの方が不器用だから見分けているだけだーーの頭を撫でてそう言うと対象的な返事が帰る。そのまま兄弟で語り合うようにきゅうきゅう言うのを待ちながら他のところに目を向けた。

たるとん、もぐたんは穴を掘るのが得意なモンスター。他にも土を使った魔法なら下手な魔術師よりもずっと上手く強く行える。さらに言うなら、力が異常に強く、地中を移動するため神出鬼没。魔物の骨で試したところ、握力だけで骨を粉砕できた。突然的の足元に現れ足首を粉砕させる、なんてことも可能なのだ。強いわけである。

もぐたんは地中と地上の距離感を取るのが上手く、敵と想定したものの真下に移動することができるが、たるとんは何故か私の下や遠く離れたところに現れてしまう。はっきり言えば、方向音痴だった。体は柔らかいので踏んでしまえば殺してしまうかもしれないし、どこに出るかわからないたるとんは正直心臓に悪い。いいところを上げるなら、もぐたんよりも魔力も握力も高いようだが、それも宝の持ち腐れだろう。なんだか、何処かの王子のような魔物である。もぐたんは何処かの毒舌野郎のようになんでもーー剣の研磨や防具管理、ティルの子守などーー器用に熟すが。

良し悪し。それは、他の魔物にも言えることだった。


まず、らるりはレイネ達につけることにした。剣の腕が、例え3分だけだとしても、その辺の騎士より遥かに立ったのだ。さらに言えば、3分だけと言う制約も魔力量の関係が理由らしい。魔法職のところに付けておけば、魔力の補充とか…出来たらいいなぁと。正直、魔法がどこまでできるのか知らないからその辺は適当である。ただ、囲まれた時の3分は貴重だと知っているし、らるりは小さいから邪魔にはならないだろうと思った。それだけだったりする。

がおーは私に言われたことが悔しかったのか毒を吐きたがったので、トールンと組ませることにした。因みにとんたんはコトハにつかせることに決めたので、早速追ってもらっている。豚鼻らしく、鼻がいいようで所持品から匂いを追えるという。コトハにもらったと言う布ーー恐らく、転んだ際に手当されたーーを嬉しそうにとんたんに嗅がせたティルが元気良く見送っていた。手紙を加えさせたのは言うまでもない。半ば魔物であるカロと会話できるだろうし、そんなに心配はいらないはずだ。


「がぁあ♪」

「……」


がおーの方をみた私はそっと目をそらした。まさか、あの一言がお前をそうさせるとは思わなかったんだ。許してくれ、トールン。植物で顔がないはずのお前の顔が、青ざめてるように見えたのはきっと、幻覚なんだろう?きっと、がおーの口の中に入れられてるように見えたのもまた、幻覚に違いないんだ。

視線を移した先には残り四体の姿があった。なんと言うか、微笑ましい。決して、幻覚を見たあとだからではないと信じたい。


「きゃっきゃ」

「きゃ」

「ぶぅ」

「わん」


元気に鳴き声を上げ時々キラリと光ることによってしかあると認識出来ない糸を引く姉妹の魔物とその糸の生産元である風の谷に攻め込みそうな魔物、楽しそうに尻尾を振るーー人面犬。

最後のお前。わんって鳴く意味はないだろう。お前、人の酒を飲んでおっさんの如く私に愚痴を零していただろう。見事な肉球でグラスを掴んでいただろう。


そんなツッコミはさておき、人面犬は変装というか擬態が得意だ。レイネほどじゃないが、情報を集めてくるのがうまい。レイネとは違う方面に長けているというか、普遍的な犬の振りして民衆の噂話を集めてくるのが得意だ。それ以外にも、相手にその魔法をかけることもできるため、街に行く際などにティルにかけさせている。もっと早く呼べよと言いたいが、ルカの酒場に行く途中で拾ったと言うのだから仕方が無い…いや、それでもあの時の騎士を巻けたのになにやってんだと言いたいが。

目を離した隙にそうして捕まえてくるから物凄い数になるのだな、と学んだ瞬間だった。

そんな人面犬、残念ながら戦闘は苦手だ。なのであの姉妹を付けて見た。

姉妹はアリアドネという希少な魔物らしい。魔物というか、神獣というか…神の名を付けられるくらい、その道では貴重な生き物なのだとか。ソルナが拾ってきた番いの子供らしい。なにやってんだあの人は。

糸を編むのが上手い。だけでなく、精神方面の魔法の天才なのだとか。要するに、意思あるものなら何でも操れるチートな姉妹だった。ソルナはこれの母親をいつも連れているらしい。二匹はとても小さく手乗りサイズなので恐らく捕まった時にも連れてるだろうとペラペラ話してくれた。お喋りな姉妹だが会話するのにも魔力を使うらしい。双子だからか性格が似ていて、双方気が強い。人形のような二頭身の可愛らしい容姿をして居る。

最後に、糸を吐き出す赤い目を持つ芋虫のような魔物。それ以上の細かい描写は特になし。

名前は、人面犬がポチ、姉がツンで妹がヤン、芋虫がおーむんだ。

楽しそうな彼奴らが編んでいるのはおーむんの糸、酷く細く殺傷能力が高い。今やこの森の其処彼処に仕掛けられていて、姉妹の確認なく歩けば忽ち身体中から血を吹き出すことになる。何気なく一番恐ろしい。

そんな、まあ、変わり種の魔物軍団だ。頼りになると言えばなるし、不安と言えばかなり不安。ティルが増えたようなもの。私の癒しはもぐたん兄弟にある。

そんなことをしてから、私たちはがおーの背に乗ってようやく出発したのだった。

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