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「あ、レイネ!

この前言ってたやつ出来たよー」


この前……

あぁ、あのブレスレットのことですか。


魔力を貯めておくことが出来るブレスレット。

これがあると戦闘中に魔力を使い果たしてもここから貯めておいた分の魔力を回復することが出来るんです。


と言っても、ブレスレット自体に魔力を貯めるのではなくて、パワーストーンなるものに貯めるのですが、パワーストーン1つに貯める事が出来る魔力は魔力量が平均的なCランクの1割。


それをいくつ繋げるかでバランスが変わってきて普通は3、4個ですが、カルアが作ったのは6個。

6個繋げるのはかなり魔力を消費するので、Bランクのワタシでは作れませんが、魔力量が最高のSランクのカルアには割と簡単に作れます。


ただ1つ問題があって…


「魔力はまだ貯めてないんでしょうね」


今回でこのブレスレットを作るのは2回目。

パワーストーンがそもそも希少価値の高いもので、集めるのに時間と手間がかかるんですが、前回作ったときはカルアが魔力の調節が下手くそなくせに魔力を貯めるとこまで自分でやったので、敢え無く壊してしまったんです。


「まだ貯めてないよ!

前回はそれで失敗しちゃったからねー。

今回はレイネが魔力貯めてくれるんだよね?」


そう、今回はこの魔力馬鹿の代わりに俺が魔力を貯めることになってるんです。


「そうですね、前回はあなたのせいでパワーストーンを集めなおしましたもんねぇ」


パワーストーンは使い捨て。

1度魔力を当てると使えなくなってしまうので、また1からパワーストーンの集めなおしたんです。

この馬鹿のせいで。


「う…、ごめんって!

だってあんなに簡単に壊れるとは思わなかったんだよ」

「あなたみたいな魔力馬鹿で調節も下手くそな奴がやれば、そりゃ壊れるでしょう」


魔力量が多い人って、魔力の消費を気にせずに使ってしまうので調節が下手なんです。


「……そんなに即答しなくてもいいじゃんか」


「事実ですから。

こんなことで拗ねるなんて本当に餓鬼ですねぇ」


カルアは今、17歳。

あと少しで18歳になるので成人するんですが、こんなに子供っぽくっていいんでしょうか。


「な…!拗ねてないし、餓鬼じゃない!」


「そうやって返してくるから餓鬼って言われるんですよ。クソ餓鬼」


「むかつく!

そういうレイネだって、俺と5つしか変わらないじゃん!」


「はぁ?5つも違えば大分変わってくると思いますけど。

あぁ、クソ餓鬼だからそんなことも分からないんですか」


「クソ餓鬼じゃない!」

「お前ら何喧嘩してんだ」


あぁ、そうか、いつものツッコミがないなーと思ったら、出掛けてたからですね。

パシったのはワタシですけど。


「おかえりなさーい」


「あれ?シルラ出かけてたの?」


「ただいま。

あぁ、レイネに頼まれてちょっとな。

これで合ってる?」


頼みごとしてたの忘れかけてましたけどねー、と心の中で思いながら受け取ったのは、ビー玉みたいなのがたくさん入った袋。


「あぁ、これです。

ありがとうございます」


「え、何それビー玉?」


「これが何かも分からないなんて。

魔術師としてどうなんですか、それ」


と鼻で笑うと


むかつく!と地団駄を踏んでいますが、そういうところが餓鬼って分からないんでしょうか。


「落ち着け。

で?レイネ、それ結局何なの?」


はいはい、説明すればいいんでしょう。


これはスプリットボールって言って、魔力量の調節を練習するときに使うものです。


ビー玉と言ってましたが、柔らかく、大きさは5種類あって、小さいものから順に、直径10mm、15mm、20mm、25mm、30mm。

色は小さいほうから黒、紫、緑、橙、赤で、魔力が飽和状態になると透明、青、黄緑、黄、桃に変化します。

大きいもののほうが扱いやすく、飽和状態のままにしやすいです。


魔力が飽和状態のままでどれぐらいキープ出来るかで魔力が調節できる量がどの程度かがわかり、魔力が飽和状態より多くなるとパチンと弾けてなくなります。

パワーストーンと違って魔力を貯めることは出来ませんが、弾けない限り何度でも再利用可能です。


因みに、スプリットボールのスプリットは弾けるという意味のsplit openが語源だったりします。


「へぇ、そんなものあるんだ。

でも、レイネは魔力の調節上手くない?」


「あなたよりはね。

パワーストーンに魔力を貯めるための練習にと思ったんですが、あなたの魔力の調節の下手さを懸念して、トレーニングしてもらうのにも使おうかと思いまして」


パワーストーンはスプリットボールのように色が変化したりしないのでどこまで貯めてもいいのかが分かりにくい。

更に、ブレスレットなどの場合その状態を保ったまま魔力を貯めないといけないので、パワーストーン1つずつではなく、今回の場合6個同時に均等に貯めなければならないんです。


だから、その練習のためにパワーストーンと同じ量の魔力を貯めることが出来る緑色のを買ってきてもらおうと思ったんですが、ついでに他の大きさのものも買ってきてもらって、いい加減、カルアのトレーニングをしようと思い立ったんです。


魔力の調節がカルアより上手いのをさらっと認めたのが何かむかつくー、とボヤいてましたが、その後の言葉聞いてました?


「っていうか、トレーニングは遠慮しとく!」


あぁ、聞いてたようですね。でも、


「却下。

毎度毎度、戦闘で敵じゃなくてあなたの攻撃から自分とシルラを守ってるワタシの身にもなりなさい」


何が悲しくて味方の攻撃から身を守らなきゃならないんですか、と吐き捨てる。


戦闘の度にあり得ないほどの出力で魔法を放ち、魔法の効果の範囲も考えずに打つ馬鹿なので、当然ワタシたちのほうにも魔法が飛んで来ることが多々有り。

そのため、敵の攻撃よりまずカルアの攻撃から身を守らないといけないんです。


「う…、分かったよー。

やればいいんでしょ」


「…頼むから家を壊さない程度に練習してくれよ」


そうですね、こいつは何の考えもなしに魔力を消費するやつですから。


……って

「「いたんだ」」


「お前ら…!

そのスプリットボールとやらを買って帰って来たときからいただろうが!」


馬鹿とハモったのは不満ですが、そういえばいましたね。

ワタシたちの喧嘩を止めたのもシルラでしたし。

魔法以外はバランスよく出来る中衛タイプで、割と強いし常識人なんですけど、何か気配が薄くて存在を忘れちゃうんですよね。


「あぁ、そうでしたね。

すみません。」


「……謝罪に気持ちが篭っていないような気がするのは俺だけか」


「あ、バレました?

でも、事実を言っただけなんですけどね。

何であなた、そんなに気配が薄いんでしょう?」


人が気にしていることを…、とぶつぶつと文句を言っていたが、カルアにドンマイ、と慰められてました。

慰めたところで変わりませんが。



「そういえばこの前、情報収集に行って来たんですが、隣の国のシーリアの話で、8年程前に反乱があって亡くなった前王がいたじゃないですか。

その息子、つまり本来国を継ぐはずだった王子が、護衛と一緒にこの国に逃れていたかもしれない、っていうのを聞いたんですけど」


我ながら急な話題転換だと思いましたが、その日のうち言おうとしていたことを忘れていたのを、今思い出したので話しただけだったんです。


もし隣の国の王子が本当にこの国に逃れていれば、何か被害がこちらの国にも来るかもしれないので、2人の耳にも入れておこうと思ったんですが…


「あれ、2人とも何か知ってるんですか?」


2人ともビクリと肩を震わせたのを見逃さなかった。

次回は1話の続きです

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