12/24②
早足で歩くとすぐに追いついた。後ろから誰か来ていることを感じたようで、藍川君が振り返ってくれた。
「あれ、緑辺さん?どうしたの?」
「あの、これ、藍川君のでしょ?道に落ちてた」
そう告げると藍川君はカバンの中を探って、「あちゃー、そうだわ。筆箱出した時に取れたんだと思う」
と苦笑しながら言った。
「ありがとね緑辺さん」
「ううん、いいの。それじゃっ」
「あ、おい緑辺」
このまま関わらず帰ろうとしたのに、赤井君に呼び止められた。無意識に「何?」と振り返ると少し驚いた顔をされた。少しむっとしたけれど私が悪いことに気がついた。無視することが当然になっているから、普通のことをしたらこんな感じになっちゃうんだ。
「あ、いや、その……」
「……言っとくけど、成績表の話ならしないからね」
「ち、違うわ!……あーもう何でもねーよ」
「な、何よ。呼び止めておいて。赤井君のバーカ」
「はあ?お前の方がバカだろバーカ」
おい近所迷惑だろ、と藍川君に言われてハッとした。
「……じゃあ。藍川君、また明日」
そう言うと私は全速力で駆けて行った。
「……ただいま」
すぐに、おかえりなさい、と台所から母さんの声がした。
「成績表、置いとくから」
そう言って私は自分の部屋に向かった。
別に今回が凄く悪かったわけではない。
「成績成績ってうるさいのは嫌だなぁ……」
上がった教科の方が多いけれど、数学と理科が少し下がっていた。高校は理系の特進クラスに進む予定なのに。絶対に怒られる。
受験生って自覚がない。中学生を卒業するって自覚がない。2月には推薦入試があるのに。
「……もう嫌だな」
そう言っても仕方がないことくらいわかっているけれど、言うだけいいでしょ。