2/27 赤井side
風邪は治った。言わなければ。朝からそれしか考えていない。
「おい緑辺」
「……何」
冷ややかな声。一瞬ひるんでしまったが、ここで言わなければ……ダメなんだ。男がすたる!
「……その、お前さ、大丈夫……か?」
そう言うと、顔をしかめられた。
「赤井君、あなたは私を嘲笑いに来たの?」
彼女は嘲笑気味に「大丈夫か?」の質問に答えた。顔がカーッと赤くなったのを感じた。違う……違うんだよ。
「んなわけないだろ……。俺は」
「じゃあ何よ」
強く睨まれ、つい口ごもってしまった。本気でこいつは……気づいてくれないのか。
「……てんだよ、心配してんだよ!お前のことを!!悪いか!!」
廊下の端から端まで聞こえただろう、生まれて初めてこんなに大きな声を出した。
「赤井……君」
緑辺は振り返った。見開いた目。半開きになった口。まるで創作物の表現のように。
ここ数年で、初めてお互いの目をじっと見据えた気がした。そして、初めて緑辺の心から動揺した顔を見た。
俺が……お前を心配するのはそんなにも意外なのか。俺がお前を心配するのはおかしいのか。嫌われている自覚はあった。嫌われるのは当然だと思っていた。
ただ……。
「お前の中に俺はいないのか」
そう言おうとしたが……唇を噛むことしかできなかった。それこそ……言ってどうするんだよ。
気がついたら走っていた。走って、走って、ようやく足が痛くなって立ち止まった時は……。
「……やっちまった」
校外だ。ここ外だよ。授業まだあるのに……サボってしまった。
「和也君?」
黒崎の声がした。気づいたらこっちに向かって歩いてきていた。
「あれ?今日学校あるよね」
「それはこっちのセリフだ。何で欠席してるお前が外に出てる。仮病だったのか?」
「あはは……見逃して。でも、サボった君もどうかと思うよ」
それは……。
「……純子ちゃんに何か言ったの?」
「……はい」
黒崎に全部話した。全て見透かされている気がする。あの時のあれは忠告だったのかな。
「君は何も考えずに行動するよね」
唐突に言われ、急に右腕を持たれ袖をまくられた。
「よかった。もう治ってる」
驚いている暇もなくすぐ手を離された。
「黒崎……?なんか今日のお前……」
「君の思いは無駄にしないよ。無鉄砲で勇敢で時々アホでとても優しい君を。君はそのまま、まっすぐでいて」
芯の通った強くも優しい声音。
「明日……明日でいいから、もう一度勇気を出して」
そう言って、黒崎は走り去っていった。
「……明日」




