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もういないって、どういうこと?頭の中がぐちゃぐちゃでグルグルと回る。
「えっと……それはいったい」
赤井君が言いかけると、目の前のゆーすけ君に似た人は言った。
「昨日散歩から帰ってきた後死んじゃったんだよ。もともと病気で、4、5ヶ月前あたりが余命って言われてたけど頑張って生きた方だよ」
え……?
「亡くなったのは……クロすけじゃ」
思わず口に出してしまった。目の前の人は首を傾げた。
「うちで飼ってた猫は『ゆーすけ』ただ一匹だよ?」
クロすけ……ではなく、ゆーすけという名の黒猫が埋められているところまで案内してもらった。男の人は黒崎優也といってA高校の三年生らしい。優也さんにお礼を言い、お墓には私と赤井君だけが残った。
「……何だったんだろうな」
赤井君がつぶやく。私は優也さんがくれた黒猫の写真を見た。
「この猫……私がずっと前に牛乳あげた子だ。近所でよく見かけた子だ」
「……言われてみたら俺も。前にカラスに襲われかけてたから助けてやったことあったけど、こいつだったのか」
お互いそれ以上何も分からず黙り込んでしまった。
「猫の恩返し、かな」
「何だよそれ。何の説明にもなってないだろ」
「でもそうとしか……」
ふと赤井君の顔を見ると驚いた顔をされた。気づいたらほおに涙が伝っていた。
今自分が何で泣いているのか分からない。大切な何かが抜け落ちてしまったようだ。それでも、どこかあたたかい……そんな気がした。それすら何故だかわからないのだけれど。
「赤井君、帰ろう」
立ち上がった私を見て少し間をおいてから「ああ」と彼は答えた。
「受験勉強しないとな。今度は五教科だけどお前なら簡単だろ」
「どうかなあ……。とにかく頑張らないと。っていうか赤井君、お母さんに勝手に外出してたのばれたときはちゃんと庇ってよね」
「わかってるっつーの」
「ほんとかなー」
泣きながら笑う私を見て赤井君も笑った。お互いの笑顔を見るのは何年ぶりだろうってくらいだった。
今はそれだけで凄く力が湧いてくる気がした。
帰ろうとしたけれど、赤井君に先に行ってもらうことにした。少しやり残したことがある気がしたから。
猫のお墓を振り返る。近くに木の枝があった。拾ってお墓の近くに字を書く。
『ありがとう』
聞いたことのあるような笑い声がどこかで聞こえた気がした。
これで本編は終了です。
ここまで読んでくださってありがとうございまし……たとはまだ言えない!
あと5話更新させていただきます。純子とは別のもう一人の主人公からの視点で補足的な話を4話、エピローグを1話更新させていただく予定です。
別視点回は明日から4日続けて、エピローグは別視点回4話目更新から3日以内を目標に投稿したいと思っています。
あと少しお付き合いいただけたら嬉しいです。




