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休日の今日、家には私だけ。誰か来ても居留守を使おうと決心していた。
……んだけど。
『おい、緑辺。いるんだったらさっさと出てこい』
赤井君が訪ねてくるとは想定外すぎた。
「……何よ」
急いで人前に出れる格好に着替えてドアを開けると、最敬礼状態の赤井君がいた。予想をはるかに上回っている。なんなの、なんなの、なんなの。
「ちょっと、頭をあげてよ。いきなりどうしたの」
そう言うと、少し頭を上げてくれた。その目はとてもまっすぐだった。
「お前が奮い立ってくれたらと思って色々言ってきたけど、それが逆効果だということに気付けなかった。今までの言動を許してください」
赤井君はそれしか言わなかった。今までの言動って……。
ああそうか、あなたは私のためを思って言っててくれたのか。
長い沈黙の後、私はいつもの……、いや、いつもより少しだけ優しい口調で言った。
「許してほしかったら『お願い』きいてくれないかな」
今私は赤井君と二人でゆーすけ君の家に向かってる。『お願い』は、勉強せず外出したことがバレた時にかばってもらうこと。ゆーすけ君に遅かれ早かれ会って昨日のお礼を言いたかったのでちょうど良かった。それに、きっと家の近くにクロすけを埋めてるはずなのでお別れもちゃんと言いたかった。赤井君もゆーすけ君に言いたいことがあったらしく、快く受けてくれた。
「えっと……あ、ここの細道の先の家なんだって」
「へー、こんなとこ住んでたのか」
お互い普通の口調で話せている。そのことが以前は歪に思えたけれど、私が勝手に「赤井君は嫌な奴」って決めつけてたからなんだな、と分かった。
そうこうしているうちに家が見えてきた。チャイムを鳴らすと、すぐにはーいと声がした。インターホンはないみたい。
「どちら様ですか」
そう言って出てきたのは……ゆーすけ君?
いや、違う。似ているけれど、雰囲気が違う気がする。それに身長とか髪の長さも。ほんの少しだけれど、違う。この人はゆーすけ君ではない。赤井君もそれに気がついたようだ。
「えっと……黒崎さんのお宅ですよね。優介君はいますか?」
赤井君が尋ねる。すると目の前の人は驚いたようだった。
「ゆーすけのこと知ってるの」
私たちも驚いた。
「えっと、友達ですし」
そう言ったら苦笑いされた。
「君、おかしなこと言うね。でも、ありがとう」
思わず赤井君の方を振り返るけど、彼も訳が分からないようだ。この人が何を言いたいのか分からない。
「あの、ゆーすけ君は……」
そう言いかけたら、目の前の人は悲しげに微笑んだ。
「今まであいつと遊んでくれてありがとうね。でも、もういないんだ」




