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推薦入試当日。雨が降りそうで降らないような、そんな天気だった。
「緑辺さん、頑張ろうね」
一列になって待機してる時、小さい声で青木さんが声をかけてくれた。緊張で吐きそうな私と違い、ほんの少ししか緊張してないように見えた。その前の赤井君の方が涼しい顔をしているんだけど。
「では、今から移動します。N中学校の人から順についてきてください。」
とうとう、始まる。
試験は数学と理科、それと面接だ。流石は推薦入試の問題、すごく難しい。頭がこんがらがる。でも、過去問なんどもやったし、大丈夫、大丈夫、大丈夫……。
ふっとクロすけが頭に浮かんだ。今思えば具合悪そうだった。大丈夫だよね……。
ってクロすけのことばかり考えてちゃダメだ。集中集中……。
「……私は何で推薦入試を選んだんだろう。何で理系の進路を選んだんだろう」
クロすけの事を頭の片隅に追いやったら、代わりにこの言葉が頭を占めた。ダメだ、考えちゃダメだ、ダメだ、ダメなんだ……。
それからの事ははっきりと覚えていない。ただ自分の中が物凄く気持ち悪かった。覚えているのは高校を出てからの事だけだ。
雨は結局降らなかったけど、雷の音が近づいている予感がした。
「神さへいといみじう鳴り」
この前読んだ古典の文章がふと浮かんだ。
「これから落ちるであろう雷は、神ではなく母なのだけど」
鼻がツンとしたけれど、それだけで後は変わりない私だった。いや、それどころか『無』でしかなかった。
「神さへいといみじう鳴り」
は、伊勢物語の芥川から引用させていただきました。現在私が古典で習っているところです。




