1/13③
「言葉で癒えないものって、何なの。ゆーすけ君、時々わかんないよ」
猫よりタチが悪い気がする。ちゃんと考えて、何か意思があって言ってるってわかるから、何を考えているのかつかめない猫よりも断然悪い。
「……だから、怒って言ってもしょうがないでしょ」
それは……そうだけど。落ち着いている彼を見ると怒っている自分が恥ずかしく思った。けれど、不満げにつぶやいてしまう。
「でも、やっぱり分からない」
ゆーすけ君は少し笑って
「わかんなくていーよ」
と言うと、それっきり黙ってしまった。
家に帰ると当然のように怒られた。ただ黙って、時々ごめんなさいとうつむいてでも言ってたら30分以内に小言は終わる。もう慣れてしまった。
「……お姉ちゃん大変だね。春子もこれから怒られること多くなるのかな」
妹の春子がポツリとつぶやいた。胸の中がモヤっとしたけど押し殺した。
「春子は大丈夫だよ。今だって文武両道できてるじゃん」
「んー……まあそうだけど。でも、春子も理科苦手。英語も。よくわかんない」
「わからなくてそれだけ点取れてたら十分だよ」
「そっか。そうだよね。これからもっと難しくなるから気合い入れなきゃ」
前向きに捉え、前進できる時間がある妹が羨ましい。私にはそんな時間、ない。




