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合計点数はさんざん。特に数学と理科が悪かった。国語と英語はよかったし、社会もいい方だったけれど……。
「こんなんじゃ推薦入試合格できるわけないじゃんか……」
家に帰りたくない。親に見せたくない。どうしよう、あと1ヶ月しかないのに。
「純子?どうしたの、顔色悪いよ」
「えっ、そう……?」
「じゅーぶん悪いよ。今日は早く帰りな。どうせあたしはこれから補習あるから遅くなるんだし」
大丈夫だよ、と言いかけたらゆーすけ君達が前の方にいるのを見つけた。そんな私の視線に気づいた冬美は
「そうだ、黒崎君と帰りなよ」
とトンデモ発言をした。
「ななな、何を言ってるのよ……。第一、彼が誰と帰るのかわからないのに」
「おーい、くーろさーきっ君!」
「ちょっとおお!」
人の話は最後まで聞きなさいよ……という言葉は虚しく消えた。手をブンブン振る冬美にすぐ気付いたようで、ゆーすけ君は教室に戻る集団の中をわざわざ逆走してきてくれた。
「あ、藤村さんかー。どうしたの?」
「あのさ、黒崎君さえよかったら純子と一緒に帰ってあげてくんないかな。顔色悪いし途中で倒れられても困るし」
「わ、私は大丈夫だから……!ごめんね本当に。大丈夫だからっ」
ゆーすけ君は少し困った顔をしたように見えた。そりゃそうだよ、いきなりこんなこと言われたら……。
「んー……、それだけ大きな声で話せるんだったら倒れることはないと思うよ?」
ほら見なさい!
冬美の方を少し睨むと目が合った。ハッキリ顔に「こんなはずじゃ」と出ている。残念ながら冬美の望んだ展開はないよ。多分、私とゆーすけ君が付き合ってるもしくは恋愛感情があるって思ってるんでしょう。残念ながらそんなことありませ……
「……でもさ、個人的に一緒に帰りたいって気持ちはあるんだ。いいかな?」
冬美のドヤ顔が視界に入った。
「ごめんね、本当に……。顔色悪いって言われただけだったんだよ……」
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。今日はいつも一緒に帰る人が全員補習に出てるそうだからいいよって言ってくれたけど。
「もー、気にしないでよ。俺が帰りたかったから、これは俺のわがままなの。わかる?」
「……ありがとう」
恥ずかしい……じゃなくて、言われて嬉しいことをサラッと言えるって、きっと彼の長所なんだと思う。意外と深いことを言うことがあると言うかなんというか……。
「そういや、元気ないけど大丈夫?」
不意打ち。唐突にいつもより真剣な声で尋ねられた。
「何言ってるの。さっき倒れることないとか言ってたじゃん。大丈夫だよ」
「身体はね。でも、心は疲れてるっぽいよ」
……心って、ねえ。
「……どーしてそんことわかるの?」
「わかるよ」
「答えになってない」
ムッとして言うと、ゆーすけ君は立ち止まり、私をゆっくりと、まっすぐ見つめた。
「言葉が全てじゃないんだよ。言葉と同じくらい、もしくはそれ以上のものもあるんだ。だから、こうやって大声やごまかしの言葉は大したことじゃないんだよ。そればっかしだと何も癒えないんだよ」




