僕と初めての人間関係(2)
☆1-Bの教室に居る彼について知っている。
知っていると言っても、名前が冬原夏樹君で本が好きな男の子。たったそれだけ。けどそれが全部な気がしていた。
図書室の誰も読まないような難しい本、古い本、人気のない本、色々な本を借りて行くあの子は図書委員の私には印象的だった。そして偶然かもしれないけど、毎週水曜日の朝休み、図書室のあいた5分後、私の担当の時間にやってきてたくさんの本を返して、借りてを繰り返していた。いつか、あの子と本の話がしたいと思いつつ、1-Bの教室を後にした☆
僕は他人に取って空気でありたいし、実際そうだ。
他人と本の話をできたらどんなにうれしいだろう、どんなに楽しいだろう。そう思ったことは何度もある。
けど、できなかった。
自分ではできなかった。誰か話しかけてくれないか、そういつも思っていた。
自分からでないと何も起こらないのは皆が知ってるのに。
だから満足した環境に浸ろうとしていた。けど、壊れないでほしかった環境は、
「なぁ図書館君、何読んでんの?」
この一言で崩れた。
でもそれでよかった。待ち望んだ、僕に友人を作る、チャンス。
「ニ、ニーチェの善悪の彼岸。」
彼は少し困った顔をして、
「ごめん、わかんねぇわ。俺は春城秋季。なんかお勧めの本あったら教えてよ。」
「、、えっと、あ、僕でよければ、」
「おうっよろしく!えっとね~最近読んだのは、、、」
想定外だけど、 入学して人生初の友達ができた