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7.お城ではお父様にただならぬ事件が起きていたようです

わたくし達が森でわちゃわちゃしていた頃、お城ではお父様と宰相のゲルダ様の間でこんな会話がされていました。




「陛下、その書状には何と?」


ゲルダは眉をひそめ難しい顔で書状を見ている王に尋ねた。

王の様子を見る限り喜ばしくない事が書かれているのだろう。

その書状は、先ほど隣国の使者より届けられた物だ。

王家の紋章が入っている書状を持つ王の手が震えだし


「……あいつめ、私の可愛いエタリ~を嫁にくれだと!?それも相手は奴に顔と性格が瓜二つと言う噂の次男に欲しいなぞとふざけた事を抜かしやがって!!あの糞王が!!」


怒りを露わに怒り出した王をゲルダは冷めた目で見た。

自分が仕える目の前の王と隣国の王は、国が隣同士だったので幼い頃からの知り合いである。

年齢が近い為か昔から事あるごとによくケンカしていたが、当時から知るゲルダの目から見れば子供のケンカで非常に低レベルであった。

やれ勝手に物を食ったとか昼寝中に顔に落書きしたとか将来、国を治める者がそれで大丈夫なのかと憂いたものだが、性格の中身はおいといて表面は立派に王位継承者らしく成長する二人を見て安堵したが、王に即位してもゲルダしかいない場では二人のお馬鹿な部分丸出しに付き合わされるこちらの身を考えてほしいとどれだけ注意した事か……。

因みに目の前にいる王は自分の娘に対しきつく当たっているが、裏ではデレデレの娘馬鹿だ。

意味が分からない。

何故そんなおかしい態度を取るのか、と前に聞いた時に


「……私はエタリ~の父親である前に一国を統べる王だ。王は威厳がないといけないだろ?それに、エタリ~にお父様素敵!と思われたいのだ」


いや、やり方を間違っているだろ?傍から見たら明らかに娘を苛めている様にしか見えないぞ?とゲルダは思ったが最近の王女の様子を見ていれば、王の考えがばれている様に思え進言せず放置する事にした。

王の見えない所で王女が悶え顔をニヤニヤしながら父親である王を見つめていたからだ。

それはいいとして、隣国の王は執務に飽きるとすぐ脱走をすると隣国の宰相が嘆いていた。

そんな脱走癖のある隣国の王には息子が二人いて長男である第一王子は今年22歳で父親に似ず出来た人間でゲルダから見ても隣国は将来安泰だと思われる。

王位継承者がしっかりしているのが理由かは分からないが次男の第二王子は19歳になったばかりで悪い事に父親のふらつき癖を受け継いだのか放蕩癖があり、色んな国や場所をフラフラしているという。

性格は隣国の王とそっくりと聞いたので、ゲルダとしても評価は微妙だと思う。

ただでさえこの娘馬鹿の王は、婚約者を決めるのはまだ早いと自国の貴族から申請があっても拒否しているので無理だろう。


―――さて、どうやって断りの手紙を送ろうか……。


多分、その仕事はゲルダに回ってくるだろうと考えていると怒りで震えていた王の体がピキッと固まり、顔が紅潮していたのが突然青ざめてきたのだ。

王の目線は書状の最後の部分に向けている。

一体何が書かれていたのかと確認するまでもなく王が蚊の泣きそうな声で


「王妃達で勝手に約束されていたらしい」


その言葉でゲルダは断るのは無理だと悟った。



両国の王は昔からのケンカ仲間だがある一点だけ共通している事があり、その部分は同志として共感し時々傷の舐めあいをしているらしい。


隣国と自国の王の王妃達は2人共『恐妻』である。


この王妃達は外見は儚くか弱い女性に見えるが、神経は樹齢100年並みの太さがあり自分達の夫である王を上手に手綱をとっている(調教している)


そんな王妃達の約束を二人の王が反故できる筈も無くこの婚約は成されるだろうなとゲルダは遠い目をした。

この後、拗ねた王を宥めるのは宰相である自分の役目だ。

かなり面倒くさいがそれをしないと仕事にひびくので溜息をつきながら王を見据え、今この城にいない当事者に当たる王女に思いを馳せた。


――――――姫様、頑張ってください。と、


宰相であるゲルダが全てエタカリーナに丸投げした瞬間であった。






そんな事もつゆ知らず


「ヘッブシュン!!……あら?嫌だわ。風邪かしら?」


最近やけに鼻がムズムズするわね。

風邪ではなく花粉症かしら?

ズズッと鼻をすすっていると


「ぷはっ……はははっ!!可愛らしいお嬢さんからそんな豪快な、くしゃみが出るなんてその服装を見る限り貴族だろ?お嬢さんは全然貴族らしくないな!!」


王族なんですけどね。

わたくしは内心呟きながらガシガシと大笑いをしながら頭を撫でる男性を見て


「わたくしはエタカリーナと名前がありますので、お嬢さん呼びは止めて頂けませんか?ついでに貴方様のお名前も教えて頂きたいのですが?」


「ああっ、まだ名前を言ってなかったな。俺の名前はバルトだ」


ファンディスクの新キャラの名前はどうやらバルトと仰るのね。

やはり、ゲームをしていなかったので名前を言われてもピンときませんわ。


「よろしくお願いします。バルト様」


微笑みを向けると、新キャラ改めバルト様は居心地悪そうな表情をし


「バルトでいい。お嬢さんに言われると何だか背中が痒くなる」


名前を教えた筈なのにお嬢さん呼びは止めてくれないのですね?

口には出さないが心の中で突っ込みをしていると、バルトが私の左手を突然手に持ち


「……血が出てるな」


小さな擦り傷だけどいつの間に怪我をしたのかしら?と考え事をしていたわたくしは、バルトが妖しい笑みを浮かべたのを見逃していました。


《血の契約にて姫に忠誠を誓う》


気づいた時には、バルトは擦り傷の部分に口をつけ舌で血を舐めとる動作をした。

それだけだったらまだ良かったけど、その前にバルトはわたくししか知らない呪文の言葉を言い放っていたのだ。

その瞬間わたくしの体から光を放ちバルトを包み込んだ。

初めての体験だけどわたくしは知っている。

今起きているこの出来事は契約が結ばれたのだ。

何故、バルトがその事を知っているの?


『血の契約』


驚愕したわたくしにある事が頭をよぎった。




血の契約なんてしたら処刑エンドまっしぐらではないのよ!!!!






この時起きた出来事を羨ましげに見つめている3人の騎士の存在をわたくしはすっかり頭から抜けていたのでした。



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