表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

1.ツンデレお父様大歓迎です


わたくしがこの世界に生まれ10歳になった年の誕生日にお父様から二人の少年を紹介された。

彼らにわたくしは初めて会う筈なのに既視感デジャブを感じそして、突然の頭痛。

そのまま意識を失ったわたくしは熱を出し寝込んでいたらしい。

意識を取り戻したのが4日目の朝で、目覚めた瞬間わたくしは額に手をあて大きな溜息をつきながら一言もらした。


「誰か嘘だと言って……」





「エタカリーナ、様子はどうだ?」


体は良好だけど、気分は最悪だわ……。

と、声に出して言えないわたくしは、ベッドで横になっている状態だ。

モゾモゾとシーツから顔を出すと、ベッドの近くで紫紺の鋭い目つきの30代後半の精悍な顔立ちをした男性と目があった。


は大丈夫ですわ。お父様」


精神的にはやられていますわ。理由はお父様には話せませんが。

お父様は視線をわたくしに外さないまま


「自分の体調管理ぐらいお前には出来ないのか?これだから女は軟弱だから嫌なのだ」


病み上がりのわたくしにキツイ言葉を投げつける肉親である筈のお父様の言葉にわたくしは傷付いた。


……そう、倒れる前の何も知らないわたくしであったなら。


わたくしはお父様から紹介された彼らに出会った事で、ある記憶がわたくしの頭の中で解放された。

寝込んでいたこの数日にわたくしは走馬灯の様に夢に出てきて思い出した。





わたくしが生きるこの世界は実は前世でプレイをした事がある乙女ゲームの世界という事に……。





部屋から去ろうとするお父様にわたくしは声をかけた。


「……お父様の顔を見るだけでとても元気になりました。不肖な娘の為に仕事がお忙しい中、わざわざ来ていただきましてありがとうございます」


あえて嬉しそうな声で話しかけた。

お父様は進めていた足を止めたので、わたくしに何か言うのかと数秒待ったが、何も返答もないまま部屋を出て行った。

実の娘の言葉に無視をする父親はどうなのかとツッコミを入れたくなるが、わたくしは知っている。

お父様は銀色の肩までの髪を一つにまとめている為、後姿であり顔は見えなかったが感謝の言葉を伝えた瞬間に耳が赤くなっている事をわたくしは見逃さなかった。


「ゲームの設定通りにお父様はわたくしに対してツンデレなのね。それにしても、お父様ったら起きた早々あの態度は普通だったらあり得ないわ」


わたくしはうんうんと頷きながら先程の事を思い出していた。

お父様の言葉をわたくしなりに解釈する。


「自分の体調管理ぐらい、お前には出来ないのか?これだから女は軟弱だから嫌なのだ」


エタカリーナ解釈

『私のエタリ~!本当に心配したんだぞ!本当ならばエタリ~の世話は私が朝から晩までしたいけど、鬼宰相が嫌がらせなのか私に仕事を山のように与えてエタリ~に会う時間を削るんだ! エタリ~はとてもか弱い女の子なのに……心配だ!!』


……そうね、間違えて無い筈。

お父様はわたくしの事を心の中でエタリ~と名前を省略して愛称で呼んでいる事もね。

ゲームをフルコンプしないと、知る事が出来ないお父様のデレ仕様の衝撃の事実。


「お父様のツンデレはいいとしても、この世界に転生はないわ……それもエタカリーナって」


わたくしは改めて頭痛がしそうになった。




*****



ファンタジー系乙女ゲーム『略奪~僕は君の物~』




何?この題名と思われる方がいらっしゃると思いますけど、決して18禁では御座いません。

一応R15規制はかかっていますけどね。


15歳になったばかりのヒロインの少女が神の啓示で聖女になり、お城の保護のもと聖女活動をしながらお城で出会ったイケメン攻略キャラの騎士達と恋に落ちる物語。

何故、略奪なのは王女専用の騎士達と恋に落ちる為、王女から奪う形になるのでそんな題名をつけたらしい。


泥沼系恋愛シミュレーションゲームに思えるけど、話の流れはわりかし明るい。

ただ、ヒロインである聖女のライバルの王女の性格が恐いだけ。

嫉妬に狂った王女が聖女に嫌がらせをするのに、虐めや拉致監禁に誘拐などやらかし、最後は国を売るような真似をするので処刑される。

聖女はその後、攻略対象の騎士とハッピーエンドを迎えると言う訳だけど……。



皆様そろそろお気づきの方がいらっしゃると思いますけど、わたくしがその悪役ライバルキャラの王女に転生をしてしまったようです。

ゲームの中の攻略キャラ全員のハッピーエンドでは必ずと言っていいほど王女は処刑をされているというわたくしにとっては気が気ではない嫌な展開。

そのイベントがあってこそ聖女と攻略キャラは幸せになるらしい。

それもその筈。

王女であるわたくしにはある力があり『血の契約』をしてしまうと主であるわたくしには逆らう事が出来ないみたい。

ゲームのスタート時には彼らは既にわたくしと『血の契約』を結んでいたそうなので、攻略キャラの騎士達がわたしくしの呪縛から逃れる為には、主であるわたくしが死なない限りは一生無理みたい。




さて、考えを整理をしましょう。

わたくしが生き延びる為には、先ずは攻略キャラの騎士達と『血の契約』をしない事。

その契約をする事でわたくしは確実に死亡フラグを立ててしまうから。

そして、これから出会う騎士達と良好な関係を築く事!

既に2名に会っているけどあと1名はいた筈だったわね。

ゲームの中のエタカリーナは出会った頃から彼らに対し暴虐無人な態度を取り続けていたため、信頼関係を築けていなかった為に、あっさりとヒロインである聖女側に行ってしまったのも死エンドの原因の一つだったかもしれないわ。


最後に、これは個人的な希望だけどツンデレお父様と仲良しになる事!!

これは外せないわ。

萌えは必要!

ゲームの本編ではツンはあっても一切デレは見せなかったお父様。

王女であるわたくしと王であるお父様の絡みはゲームの本編ではなかったけど、ゲームの制作側が遊び心で、ファンディスクで絡みまくっていた様な……。

そのおかげで、本編では嫌われ者のエタカリーナもファンディスクではお父様のやり取りで少しだけ株が上がっていた気がするわ。

まぁ、余談はいいとして、聖女がお城に来るまでの5年後までにわたくしは自分の地位の確立を絶対的な物にするわ!!


絶対に処刑されない様に道を間違えない!






まさか、この決意が思わぬ方向に進むなど、この時のわたくしには知る由もなかった。








ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ