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【04】女子力皆無の自覚無し Side桜

クリスマス需要も一段落付いた手芸屋っていうものは、実に暇。

だもんで、お客さんも常連さんしか来なかったりする。

それも常時来店するってわけじゃないから、今はカウンターに一人で座りながら雑誌をペラペラと読んでいる。


既に本番さながらのイヴは終わったとは言え、クリスマス特集が組まれた雑誌は実に華やかだ。

いつも買っている雑誌とは言え、毎年毎年こんなにも特集を組んでたらネタが無くなりそうなものだと思うけど、そこは流石に編集者の腕で毎年違う趣向が凝らされている。


クリスマスファッションから始まり、毎年限定で発売されるクリスマスコフレ。


あ、ここのコフレ欲しい。でももう予約販売だけで予定数終わっちゃっただろうなぁ。早めに予約しておけば良かった…。


色とりどりの限定コフレに見惚れつつ、違うページを(めく)ると特集アンケートがあった。その中では、彼氏におねだりするプレゼントといざ自分があげるプレゼントの内訳が発表されていて、一位は毎度お馴染みのジュエリーやらブランドバッグだった。


おー、やっぱり彼プレにかける金額は自分が貰う物よりも安っ!まぁ、毎年のことだけど現実は結構シビアだわね。男子連中頑張れよ!

あははーんと思いながらも、次の項目を読み進んでいく。


また、そこには『手編みのセーター』が番外編でランクインされていて、あたしは内心「嘘だ!」とせせら笑った。

手編みのマフラーならまだしも、手編みのセーターって相手に重いって思われがちかと思ってたらそうでもないわけー?だって、手編みだよ?既製品だったら買って「はいどうぞ」って渡せるけど、一から編むとなると寸法測らなきゃならないじゃんか!

いや、待てよ?付き合ってる彼氏だったら測らせて貰え……いやいや、そうなったら編むの許容してるって事になるよねぇ。って事は、編んで欲しいと思ってるわけ?



うーん……




結局結論は出ないままでいると、お客さんが来店したので雑誌をパタッと閉じた。

その際に裏表紙の靴の広告に出てたモデルを見て、少し挙動不審になったのはお客さんにばれていないはずだ。




桐生美奈。



日本のみならずアジアのモデル業界の頂点に立つ彼女。

九頭身とも十頭身とも言われる完璧ボディに、そのボディに負けない華やかな正統派でありながらも魅力的な超美人。

モデル業に専念しているので滅多にTVに出たりはしないけど、出たら出たで全く高飛車で驕ったところがない豪放磊落な性格で更に人気が上昇。

今や老若男女問わずの絶対的な人気がある人だ。


でも、兄が。

あの義妹命の超ド級のシスコン、桐生秀人。


あ、勿論実妹の美奈も大事にしているらしいけどね。

その人で、ちなみに不本意ながらもあたしが好きな男だったりする。




とは言え、第一印象はお互い最悪。


あいつの可愛い義妹ちゃんとあたしが二人で店で遊んでいると、突然現れたあの男はこう言った。



『おい、そこの唯に近づいてる男。唯から離れろ。』



この言葉は何年も経った今でも忘れもしない。

当時高校生だったあたしは、部活でソフトボール部だった。そのため、髪はベリーショートだし、屋外競技の為に日焼けで真っ黒、おまけにピッチャーだったから下半身もガッシリしてたわけだ。ピッチャーしてたから、勿論肩もガッチリ。

詰まる所、あいつが付き合ってた女達とは真逆な立ち位置にいたあたしは、あいつの中では男認定されたらしい。


確かに女子高に通ってた当時のあたしは悲しいかな、女子にモテた。そりゃあもう、悲しいくらいに…。

多分それに対する鬱憤も溜まっていたんだと思う。

秀人の言葉を聞いたあたしは当然キレて、義妹ちゃんが見ている前であいつと大喧嘩した。それは迎えに来た祥子さん(義妹ちゃんの母親で、秀人達の義母)が止めるまで続くという、あたし達の中では黒歴史として封印されている。



それからと言うもの、なにかとつっかかってくる秀人とそれにいちいち反応していたあたしは、完全にお互いの立ち位置がはっきりした。

とは言え、会えば犬猿よろしく喧嘩するあたし達だけど、あたしは必要以上に秀人と関わらないようにしている。




「さて、帰るかー。」



クリスマスだし、もう客は来ないだろうってんで店長判断でいつもより一時間早く店を閉めた。

さて、帰ってご飯作ろうかな。そういや今年ケーキ食べてないな…。ま、どうせ一人寂しくケーキつつく羽目になるのは目に見えてるんだし、特段気にしない事にしよう。途中スーパー寄って、見切り品の惣菜を二、三点買ってこの前冷凍したカレーでもレンチンして食べよう。そう言えば買いおきのビールあったっけ…。


店を閉める段になってカバンから携帯を取り出そうとしたのだけれど、手ごたえが無かった。

あれ?そう言えば今日携帯見てないな。…アパートかな。朝すっごいバタバタしてたし、充電して忘れてたのかも。

…。

うん、アパート。朝の事なんか思い出したくも無いし。


さ、帰ろ!



なはずなのに…。



「おい、お前携帯、僕のマンションに忘れて行ってたぞ。」



鍵を閉めて振り向いた先には、ナイトメアが存在してました。


ナイトメアはビフォアじゃないの?

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