誰が為の報酬
「よくぞ魔王を倒し、戻って来てくれたな、勇者一行よ」
そう口にするは、勇者一行を送り出した国の王。
どことなく疲れた印象を周囲に与える感じで、あまり威厳はない。
まだ四十にも達していないはずなのだが…。
ここはとある王国の謁見の間。
長きに渡り続いていた魔族との戦いに、ついに終止符が打たれた。
強力な魔族の軍勢だったが、実のところ魔王の力に頼ったもの。
率いる魔王さえ討ってしまえば、あとは瓦解するだろう。
少数精鋭の勇者一行が極秘任務を受けて、
巧みに魔族の軍勢を避けながら魔王城へ赴き討伐に成功した。
狙い通り魔族は散り散りとなり、現在はその祝典の最中である。
「もったいなきお言葉です、国王陛下。
我ら、微力ながらも力を振るい、難行を成し遂げられました。
これも仲間達、そして協力して下さった多くの方々のおかげ。
わたしはともかく、仲間達には報いてくださいますよう、
心よりお願い申し上げます」
そう答えたは、勇者として選ばれた冒険者の男。
謙虚であり、仲間思いであり、無私無欲であり、勇敢な若者。
彼は背丈こそ高いがまだ十六であり、容姿にも優れていた。
どこぞの国の王族貴族のようと評されても疑う者はいまい。
王は勇者の言に頷き、言葉を続ける。
「勇者らしく実に欲のない事である。余は称賛したいぞ。
しかしそちに褒美を取らせぬ訳にもいかぬのだ。
偉業にはそれにふさわしい報酬がなければ、
国として、王としての器量を問われてしまうでな。
よって、だ。
そちには我が国の姫を伴侶として贈りたい」
王のその言葉に勇者は首をかしげる。
現在国王夫妻には子供が二人、いずれもまだ幼い王子である。
公爵家や侯爵家にも、妙齢の未婚女性などいなかったような。
まさかこの為だけに養子でも入れたのだろうか?
「勇者には、我が一番上の姉を嫁がせることとする!」
…国王の、姉?今国王は三十九歳、その姉?一番上の?いくつ?
勇者の明るかった笑みが無感動なものへと変化する。
あれか、国王一家の端にいて、もじもじしてる女性。女性?
前後左右の厚みは王の倍以上はあろうか。頭も体も。
着ている高級ドレスはぱつんぱつん。二の腕とかはちきれそう。
多分美人ではあったのだろう、今から二十年以上前ならば。
現在の姿からは予想もつかないけれど。
勇者が「報酬」のあまりの衝撃に思考停止している間に、
怖いもの見たさで目が離せなかった体脂肪が近づいてきた。
あんな体格で。信じられないような速度で。ぐいぐいと。
◆
「と、いうのがわらわを討伐した後のお主の運命だな。
どうする?わらわを亡き者にし、脂身と添い遂げてみるか?」
と魔王が勇者一行へ判断を迫る。
なんでも先代魔王が引退し、数日前代替わりしたばかりだそうだ。
戦争中になんで?とも思うが「魔王やるの飽きた」らしい。
無責任にも程がある。
代替わりした新生魔王はまだ若い美少女である。
父親から「好きにやっていいぞ」と言われ、戦争もやめた。
戦うのが好きではないそうだ。もう争う理由もない。
今「未来視の水晶玉」で見せられたものが現実になれば。
勇者の仲間達はおいしい思いをするだろうが、勇者はババをひく。
しかも一生涯保証だ。なぜ努力が地獄で報われねばならぬ。
「いっそわらわの婿にならんか?
同じ姐さん女房でも、アレよりはましであろう?」
年下に見えるが、これでも勇者より三つ上なのだそうな。
勇者は迷わず婿入りを決めた。
仲間達とは魔王城で別れ、勇者は相打ちになったと伝えてもらう。
王の姉君の歩く脂身は嘆き悲しむかもだが、そんなの知らん。
冒険者は依頼を受けて問題を解決するのが生業とされている。
だからと言って問題人物を押し付けないで頂きたい。
生還した仲間達の誰かへの報酬が、コレになったりすると怖い




