サイコホラー小説【フェイクニュース】
速報。速報。速報。
テレビの画面いっぱいに赤文字。
「緊急国家放送」
だがアナウンサーは笑っていた。
「皆さん、落ち着いてください。本日の東京の最高気温は53度です」
背後でキャスター席が燃えている。
スタッフが走り回る。
誰かが消火器を持ってくる。
だが画面下のテロップだけは平然としていた。
【※この映像は安全です】
【※フェイクニュースにご注意ください】
俺は笑った。
「あはははは!!」
SNSを開く。
『日本沈没』 『東京壊滅』 『首都爆発』 『富士山噴火』 『首相逃亡』
全部トレンド1位。
でもその横で、
『猫がかわいすぎる』 『深夜ラーメンレビュー』 『ヒコキン新居ルームツアー』
も並んでいた。
世界が終わる時でも、 おすすめ欄は通常営業だった。
俺はお気に入りの配信を開く。
ヒコキン
「はいどうも〜!!今日はですね〜!!」
背景で空襲警報。
ドゴオオオオン!!
窓の向こうでビルが崩れる。
だがヒコキンは笑顔。
「1000万円のブランドバッグにヘリウム入れて浮かせたら宇宙行ける説〜!!」
コメント欄。
『逃げろ』
『後ろ!!』
『東京駅消えた』
『それCG?』
『案件ですか?』
『草』
配信は同接300万人。
スパチャが飛ぶ。
「世界滅亡記念スパチャです」
「日本最後の日なので初スパチャです」
「核ミサイル見ながら食う蒙古タンメン最高」
街へ出る。
空は真っ赤だった。
夕焼けじゃない。
燃えている。
雲そのものが燃えていた。
酸性雨が降る。
傘が溶ける。
コンビニの看板がジュウジュウ音を立てる。
だがテレビでは
「本日は弱酸性です」
「お肌に優しいレベルです」
アハハハハ!!
交差点では、 避難する人間と、 踊るTikTokerが混ざっていた。
女子高生が瓦礫の前で踊る。
「終末ダンス踊ってみた〜!」
再生数800万。
老人が叫ぶ。
「本当に戦争なんだ!!」
だが誰も信じない。
みなフェイクニュース慣れすぎた。
本物の地獄すら、 みんなネタだと思っている。
遠くで戦車。
赤い旗と★。
C国の兵士。
拡声器。
「本日より日本語は禁止です。」
だが若者は笑う。
「また陰謀論かよw」
「AI動画だろw」
兵士が実際に発砲する。
バババババ!!
血が飛ぶ。
それでも誰かがコメントする。
『演出すご』
『エキストラ乙』
『作り込み細かいな』
インフルエンサーがライブ配信。
「戦争ドッキリしてみたw」
本物だった。
配信は途中で終わった。
コメントだけ流れ続ける。
『続きまだ?』
『釣り?』
『死体リアルすぎ』
東京タワーが折れる。
スカイツリーが炎に包まれる。
渋谷スクランブル交差点に戦闘ヘリが墜落。
109が吹き飛ぶ。
それでも巨大モニターでは広告。
「春の新生活キャンペーン!!」
「あなただけの未来を」
未来なんかもう無い。
電車が止まる。
だが駅員はアナウンスする。
「人身事故の影響で山手線は遅延しています」
国会議事堂は崩壊。
政治家は最後まで会議していた。
「この戦争は存在するのか慎重に議論を」
その最中に天井が落ちた。
海外ニュース。
『日本、滅亡確認』
だが日本国内ニュース。
『現在一部地域で通信障害』
あはははは!!
最高だ!!
みんなフェイクニュースに慣れすぎて、 現実が敗北したんだ!!
子供が泣く。
母親が抱きしめる。
空から黒い灰。
海は赤い。
死体が浮く。
高速道路には放置された車。
その中で、 サラリーマンがまだノートPCを開いている。
「今日中に資料を…」
背後で核の閃光。
白。
白。
白。
それでもスマホ通知。
【明日の天気】
「晴れ時々滅亡」
サイコホラー小説【フェイクニュース】
日本 End




