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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ア、ク、ム

作者: 川犬

若干修正しました

 僕はこんな夢を見た。

 気がついたら暗闇の中にいて、そこで、2つの眼球がこちらを睨んでいるという夢。そして、徐々にその眼球が近づいてきて、僕は―――、

 ―――残念ながらいつもそこで汗をびっしょりにした状態で目を覚ましてしまう。シャツがべっちょりと背中に貼りついていて離れようとしないぐらい汗をかいてしまい、鳥肌が立ってしまっていた。

 『その時』は僕はその悪夢を別に『怖い』とは思わなかった。『気味が悪い』とも思わなかった。―――どうせ夢なのだから。

 次の日もそのまた次の日も、同じ夢を見た。前の日もそのまた前の日も、同じ夢を見た。……物心がついた時から、その夢を見続けていた。

 だから、慣れてしまったのかもしれない。この悪夢に。慣れてはいけないと気付かされる前に―――。


「お前、その性格どうにかしたほうがいいよ」「お前のせいでこうなったんだろ、どうにかしろよ。カス」「死ねばいいのに」

 高校に行くと、僕は必ず一日一回はこんなことを言われる。それでも僕は無言だ。こんなやつらのことにいちいち反応していたら、キリがない。こんなやつらに何言ったって無駄なこと。

「みんなやめてよ! 可哀想じゃない!」

 そんな僕に一人だけ、……一人の少女だけ、みんなから僕をかばってくる奴がいる。正直言って迷惑なのだが、一生懸命僕を守ってくれる姿を見ると、迷惑だと言う気が失せる。だから、黙ってる。

 みんなが舌打ちをして、僕から離れていくとその少女は僕の顔を覗き込んで、にっこりと笑ってくる。顔が近くて、その笑顔が魅惑的で、……必ず僕は目をそらす。

「顔が赤くなってるー」

 それでも僕は無視を貫き通し続けていても、いろいろと話しかけてくる。

 僕は。僕は、僕は、僕は僕は僕は―――、


 3ヶ月後、僕はその少女にすっかりと心を許してしまっていた。いつの間にか会話をするようになり、笑い合うようになり、友達になった。

 周りにいたみんなも、そんな僕と少女を見て、話しかけてくるようになった。そして、みんなとも友達になった。昔は僕のことを嫌っていたくせに。

 それでも、僕はこの高校生活が僕の理想だったので、楽しくて仕方がならなくなってしまった。スベテガ、ウマクイクヨウナキガシタ。そう思わなければ良かったのに。


 いつしか、僕と少女は付き合いだした。もちろんデートもしたし、アイスを食べ合ったりもしたし、……キスもした。人前で、いちゃいちゃとかもした。最高に楽しかった。

 それで、友達が嫉妬をしたりして減ると思っていたが、減らなかった。むしろ増えた。それで、僕は調子に乗り出した。

 いろいろなことに手を出してみたり、たばこを吸ってみたり、ビールを飲んでみたり、……とにかくいろいろした。それに、みんなも笑顔で一緒にやってくれたりした。

 挙句の果て、薬にも手を出していた。そうすることによってもっともっと気分がよくなって、すべてがうまくいっているようで。

 『その瞬間』は、僕の人生は、とってもとってもいいものでしたと言えるものだった。


 気づくのが遅かったのだ。遅すぎた。初めからこんなことあるわけがないと思っていたのに。いつの間にか、これを現実と勘違いしていたのだ。……いや、自己暗示していたのかもしれない。

 実際はそれは、全くの虚実で、無実で、異実で、反実だった。

 夢。

 ユメ。

 夢だった。それは、長い長い夢だった。やっと僕は目を覚ました。覚ましてしまった。

 ここは暗闇の中。そこで、2つの眼球がこちらを睨んでいる。そして、徐々にその眼球が近づいてきて、僕は―――、

 『恐怖』で立ちすくんでいて、動けないでいて。

 それでも、徐々に近づいてくる。

「ウゥゥヴァアァァアアアアァァアァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 叫んでも、その悪魔の行進が止まるはずもなく。

 ―――と、僕は何かをつかみとった。それを強く握って、震える手で鈍く光る眼球に投げつける。

 眼球に直撃し、貫通した。そこから、紅く光る液体がぬるぬると垂れてきて、気味が悪かった。


 セカイガハンテンシタ。


 僕は、自分の部屋の自分のベッドの上にいた。そして目の前には、つまり、ベッドのすぐ隣では、血まみれの少女がだらりとうつむいて倒れていた。いやな予感がした。

 僕は震えている手で、少女の顔を僕が見えるように持ち上げてみようと試みる。が、その手を止めた。

 どうなっている? どうなってしまっている? ミルノガコワイ? ミタクナイ? イヤダ?

 見たら後悔するかもしれない。精神崩壊するかもしれない。発狂するかもしれない。

 それでも。

 好奇心で、僕はその少女の顔を持ち上げた。

 フルエタ。

 僕は、思わず離れた。逃げた。

 その少女は、目を、眼を、ハサミで突き刺されていた。そこから、ぬるぬると真紅の血が静かに流れている。

 誰がこれをしたのだろう。ねえ。誰。コレヲヤッタノハ。誰なんだよ!! 一体。 誰が。 これを。

 恐怖。嘔吐感。

「……僕が、これを…………?」

 違う。そんなはずがない。そんなことあってはならない。

 違う!! 僕じゃない!! 僕なわけがない!!

(お前がやったんだよ)

 頭の中から声が聞こえてきた。

「誰だ!!」

 僕は発狂して、狂うように声をゲンジツのクウカンゼンタイへ撒き散らす。

(お前が、こいつを、殺したんだ)

 そう頭の中で響いて、僕は再び少女に近づき、その少女の眼を見る。凝視する。はさみは、根元の部分まで、突き刺さっていて、……脳が破壊されていると断定した。了承した。確定した。

 勇気を振り絞って、ハサミを引き抜く。なかなか抜けず、力を込める。

 ぐちゅりと、音が鳴って、ハサミはゆっくりと抜けた。

 赤いハサミ。少女の赤。オナジイロ。マッタクオナジ。

「ウァアアアァアアヴァアアァアウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 僕は、再び絶叫した。今度は現実で。

(これはお前がしたことなんだ。認めろよ。カス)

 頭の中から響く声は、あの学校のみんなだった。

 違う。僕じゃない。信じてよみんな? 僕じゃないんだよ? ねえ。 ねえ!!


 グサリブスリズサリ。

 次の日。学校ではこんな音が響き渡っていた。

 その時のみんなは、もちろん笑顔だった。殺す時も。死んだあとも。にこにことにこにこと。気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪いんだよ。貴様ら。

 普段なら、みんなが僕に対して笑顔を向けると、僕もいい気になる。でも、今は別だ。みんなが笑顔になって、僕は『恐怖』した。

 それから、しばらく、殺し続けた。殺しまくった。みんな、ミンナコロシテヤル。おまえらが悪いんだ。そんな風に僕をいじめるからさ。

 グチャリブチュリヂュチュリ。


 あっという間だった。簡単。みんなを殺すことがここまで、簡単なことだとは。

「……ふふふ、アハハハハハハハハハハハ!!」

 また前みたいに楽しくなってきた。もっと楽しみたい。楽しみたい。殺すことって楽しいね。

 最高。

(お前、堕ちたな)

 声が聞こえた。どこから? 僕の頭の中から。 今、なんていった? 堕ちたなと。

 そこで僕は不快になる。気分最低。

「誰だって聞いてんだよ!! てめえは誰だよ!! 誰なんだよ!!」

(さあね、僕は君さ。そして、君は僕。つまりはね―――)

 頭が痛くなった。嘔吐感。それから、胃酸が混じったねばねばする液体を嘔吐した。口の中が酸っぱかった。

(てめえなんだよ)

 意味がわからないことを言ってきているのに、僕は『恐怖』した。怖い。コワイ。誰か。助けて。

 徐々に僕の呼吸が乱れてくる。

(どうした? 怖いか? 怖いのかよ、僕)

「やめてくれ!! 違う!! お前は僕じゃない。僕はお前じゃない!!」

(あれを殺したのも僕。もしくは、君。それを殺したのも、君。もしくは、僕)

 僕は、目を大きく見開きながら、がっくりとひざをついた。

 こんなの……夢だ。そう、ただの夢。だから、なにも怖がることなんてない。だって、夢なんだから。……ユメなんだから。

(夢じゃないよ。そうやって、君はいつもいやなことがあると現実逃避する。いや、現実回避と言ったほうがいいのかな。それで、いいのかい? そんなんで、本当に良かったのかい?)

「ハァハァ……良かったよ。これでよかったんだよ」

(ちなみに、これは君が夢だと思えば、夢だよ。君は、長い間寝続けているんだよ)

 もうどちらでも良かった。長い時間寝続けている? 何のことだよ。そんなもの知らない。どうでもいい。


 死にたい。死にたい。死にたい。楽になりたい。こんなのはいやだ。もう嫌だ。


(ソウカ。キミハ、シニタイノカそれじゃあ―――、)


 僕は、気がついたら屋上にいた。いや、時間がたっているようには見えないから、きっと気絶されて誰かが運んできたというのは無いだろう。皆無に等しい。ありえない。

(死ぬか死なないかは、キミノハンダンニマカセル。さあ、ドウスル、僕?)

 ボクハ。ボクハ、ボクハ、ボクハボクハボクハ―――

 飛び降りた。

 自由に、なりたかったんだよ。こんな世界から、解放されたかったんだよ。よくよく考えてみれば、おかしな世界だった。こんなにうまくいくはずがないんだ。これもあれもそれもどれも何もかも。

 ……そうだ。そうだよ。これはきっと夢なんだ。だから、こんな嫌なことばっかり。きっとどこかで、夢と入れ替わったんだ。じゃなきゃおかしい。おかしすぎるよ。何なんだよこの世界。何なんだよみんな。何なんだよ!!

 夢なら目を覚ましたい。こんな嫌な夢久し振りだ。いや、はじめて。リアルすぎていて気持ち悪いんだよ。本当。


 ―――さあ、目を覚ませ。


 僕はプツリと意識を断った。



 気がついた時にはベッドの上で寝転んでいた。それで、目を開けて体を無理やり持ち上げようとしたが、動かなかった。目すら開くことができない。口も動かせない。手も、指も足も頭も何もかも、動かせない状態だった。

 意識だけがあった。

 鼻にはチューブのようなものが差し込まれていて、全身包帯のようなものを巻きつけられている感覚がある。それで僕は、ここが病院だということを理解した。

 僕の耳に男性同士の会話が聞こえてくる。

 ―――――「彼が自室で少女を殺害した後、学校中の生徒を殺害して、なぜ自殺しようとしたのか。それは、ご存じだと思いますが、一応伝えておきましょう」

「ああ」

「彼は、薬物中毒だったんですよ。普段から薬物を乱用している跡が残ってます」

「それだけで、自殺……なんてするか?」

「いえいえ―――、彼について調べてみたのですが、彼は、その自室にいた少女と交際していたらしいのです。おそらく、夜を共に過ごそうとした日に、薬が切れたのでしょう。それで、少女が悪魔か何かに見えてしまい、近くにあったハサミで、目を突き刺した」

「……なるほど。少し無理やりすぎる気もするが、確かにそうかもしれないな」

 違う。そんなわけない。アクマ? 違うよ。違うんだよ。夢だったんだよ、あれは。

 ……僕はまだ夢を見ているようだ。長い長い悪夢を見続けているようだ。早く目覚めないかなあ。早く。早く、早く早く早く早く。早く、早く、早く早く早く早く、早く早く早く早く早く早く早く。

 会話はまだ続く。

「彼が眼を覚ましたら、……残念ですがおそらく裁判で無期懲役もしくは死刑という判決が下されるでしょう」

「残念ながら、そうだな。……助けたいところだが、もう戻れないところにまで達してしまったしな、こいつは」

「……それにしても、なぜ彼は、『2階から』飛び降りたのでしょう」

「屋上と間違えたんだろ。薬中だから、屋上にいるという幻を見たんだよ、きっと。夢とでもいうべきだな」

「しかし、それにしても彼は運が悪いですね。うまく死ぬことができず、こうして植物人間状態になってしまっているのですから」

 …………………………。なんだこれ。

 何だこれ。ナンダコレ。なんなんだこれ。おかしい。アクムから目を覚ましたんじゃないの? ボクハ……まだ夢を見ているんだね。見続けているんだね。

 あー、早く目を覚まさないかなあ。もう嫌なんだ。夢を見ることが。こうやって、身動き一つすらとることができないだなんて、前よりひどい夢を見ているじゃないか。

 前の悪夢は、まだ良かったよ。だって、ただ暗闇の中で眼がこっちを見てくるだけの夢だったんだから。少しの間、耐え続ければいい。だけれど、こっちは、たぶんず―――……、


 僕は再び意識を失った。



 それは。



 もう。



 目覚めることのない。



 永遠のアクム。



 ピ―――――――ッ。

 高音が鳴り響く。

「……ん? おい! こいつ、心肺停止しやがったぞ!!」

「な―――ッ、急いで看護師さんをお呼びしましょう」


 とある病院のとある病室。この日、一人の少年が亡くなった。

 ~前日談~


 ……実はこの小説の元ネタは、友達の夢からなんですよw

 友達が、「俺こういう夢みたんだよ~」だとかいって、俺が、「ほう。それはいいね。それで小説書こう!!」ってなったのが、この小説を書くきっかけになったってわけですw

 正直言って、書く気はそのころ皆無だったんですw

 ですが、その友達が、なんか「絶対かけよ~」だとか言いだして、『仕方がなく』最初は書き始めたのですが、書いてる途中だんだんとヒートアップしちゃってww

 それで、この小説が完成したわけなんですw

 まあ、この小説の元の夢を語ってくれた友達さんに感謝ですwありがとうございましたww

 ―――そんな小説を最後までご愛読ありがとうございましたっ!!

 それでは、またいつか―――、、、

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― 新着の感想 ―
[一言] 小説を拝見させて頂きました。 とある人が言っていました「死は最後の安息」だと。 だが、彼の場合は安息では無く永遠のアクム。 彼に安息はもう来ない。
[一言] 序盤で引き込まれましたが、若干地の文章に難があるような気がしました。
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