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幼馴染くんと幼馴染ちゃん  作者: 一般通過純愛スキー


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4/6

なんか俺たちが大人になりたかった話

 幼さとの訣別、大人になるための儀式、それはいつだったか。高校を卒業した日?成人した日?大学を卒業した日?

 いいや違う。俺たちにとってそれは、もっと早く、そう九歳の頃に訪れた。


「ちゅうもーく!」

「はい!」


 俺はかつてないほどの怒りに支配されている。世の理不尽に嘆き、悲しみ、憤怒の炎をたぎらせている。


「大人はずるい!」

「そうだそうだ!」

「いつも俺たちに嘘をつくなと言うくせに、自分たちは平気で嘘をつくし約束を破る!」

「不公平だー!」

「なぜ、なぜ大人が俺たちをこんなにも軽んじるのか分かるかね!」

「分かりませーん!」

「それは、俺たちが、子供だからだーー!」

「なんだってー!」


 土曜日の昼、自分のベッドの上に仁王立ちをして、俺は気炎をあげる。

 土曜日の昼、なのである。本来ならば俺たちは今頃、冬山の中雪上を滑走していたはずなのである。


ーー丁度週末にみんなのタイミングが合いそうだから、スキーとか行ってみるかーー


ーーあー、ごめんな。ちょっとどうしても外せない仕事が入っちゃって、行けなくなったーー


「許せん!許せん!許せん!かくなる上は大人に俺たちの本気を思い知らせてやらねばならない!」

「おー!」

「その為には!」

「その為には!?」


 ベッドから飛び降り、おもむろに相棒の手を握る。


「んひっ」

「それだあああああああああ!」

「うぇっ、ぅうぇうっ?なになに?」

「んひーだの、むふーだの、子供っぽいから禁止だあああああ!」


 俺たちは大人へと反旗を翻す第一歩として、幼さを捨てなければならなかった。


「いいか、俺たちは子供だ。残念ながらそれは変えようのない現実だ」

「うん、確かに」

「しかし、少しでも大人に近づくための努力はできる!」

「それが、んひ禁止?」

「イエス!あといい加減ほんとに子供っぽくて恥ずかしいかもしれんことに最近気が付いた!」

「!?」


 声もなくショックを受ける相棒。分かる、分かるぞその気持ち。俺も気付いた時、ショックで膝を突きかけた。


「まだ、まだ手遅れじゃないんだ。俺たちは気付けた。ならこれから先、変わっていけばいい。幼い自分に別れを告げるんだ」


 グッバイチャイルドフッド。ハローニューワールド。


「うーん、分かったけど、でもそれだけじゃおじさん達見返せないよ?」

「そう、その通りだ。だから、作戦会議をするぞ!」

「作戦会議!」

「よし、まずは準備をするぞ!しばし待て!」


 この会議は長丁場になるだろう。よって糖分の補給は必須である!


「母さん、おやつとジュースちょうだい」

「はーい、テーブルの上に準備してるから持って行ってねー」

「ありがとー」

「あんまり部屋で大声出したり、バタバタしたらダメよー」

「はーい」


 ふっ、俺にかかれば補給物資の横流しなどチョロいものだぜ。


「戻ったぞー」

「おかえりー」


 部屋に戻ると俺のベッドが相棒に占拠されていた。


「おい、部下が上官より高いとこにいるのはダメなんだぞ」

「えー、別にいいでしょー」

「よくなーい!全然よくなーい!」

「んーと、ほら、隠れてるの!こうやってお布団の中に隠れて、見つからないように作戦を立てるの」

「!?」


 なんと、それは、それはお前……


 キシッ、モゾモゾ、ガバッ


「我が天才参謀長官の案に乗ろう。確かにこれで敵に見つかることはない」

「でしょー?」


 幼馴染、天才だったわ。


「さて、では参謀長官、何か案はあるかね」

「はい、まずは正面からぶつかるのはどうでしょう。約束を破るなんて最低だーと」

「却下だ!」

「えっ、早い」

「それはもうやった。確かに効き目はあった。すごい申し訳なさそうな顔で謝られた」


 我が父ながら哀愁漂う姿であった。あんな顔をあまり父さんにはさせたくない。


「んー、それじゃあ泣き落としとか?」

「却下だ!」

「えっ、またっ、早っ」

「それもやった。確かに効き目はあった。母さんに撫でられて涙は引っ込んだ」


 滅茶苦茶楽しみにしてたから、普通に泣きそうになった。母の愛は強かった。


「じゃあもう、こっそり二人で行くとか?」

「却下だ!」

「えっ、アタシと二人、嫌だった?」

「そうじゃない!子供二人で遠出なんて危険だ!万が一お前に何かあったら俺は泣く!ワンワン泣くぞ!いいのか!」

「う、うん、ごめんね」


 それからああでもないこうでもないと作戦会議を続けたり、おやつを食べたり、ゲームをしたり、宿題を進めたりしたが、結局作戦は決まらず次回へ持ち越しとなった。


「いいか、次までに案を考えてくるんだぞ」

「了解であります」

「よし、会議終了だ」


 後半はもう会議なんて影も形もなかった気がするのは気のせいだ!


「よし、じゃあもう帰るよな。送るぞ」

「うん、ありがとー」


 我が幼馴染にして天才参謀長官を危険に晒すわけにはいかんからな。俺がきっちり送り届けねば。


「ただいまー」

「おかえりなさい」

「あれ?父さんおかえり。早かったね」

「ああ、休日出勤なんてさっさと終わらせてさっさと帰ってくるに限るよ。もう帰るところか?」

「はい、お邪魔しました」

「気をつけて帰るんだよ。お前もちゃんと送ってあげるんだぞ」

「言われなくても分かってる」

「そうかそうか。ああそうだ、今日は二人ともごめんな」

「もういいよ。仕事だから仕方ないもんな」

「アタシも、あんまり気にしてないですから」

「おぉ、母さん、二人ともこんなに大人になって……」

「はいはい、変なところで感動してないで、それよりもっと大事な話があるでしょ」


 ほう?大事な話とな?


「みんなで合わせて、来週の金曜日から有給取ったからな!来週こそ絶対に行けるからな!」


 どうやら次回の作戦会議は無期延期になりそうだった。




「さ、行くぞ」


 手を取って歩き出す。


「んっ……はもうダメだから、我慢我慢」

「別に二人の時は関係ないからいいんだぞ?」

「んひっ」


 大人はまだ遠そうだと、実感する夕暮れであった。

こどものこーろのゆめーはー

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