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幼馴染くんと幼馴染ちゃん  作者: 一般通過純愛スキー


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3/6

なんか俺たちが初めて喧嘩した話

 喧嘩、そう、喧嘩である。俺たちは初めての喧嘩をした。6歳の夏のことであった。


 俺たちは仲がいい、どれほどいいかと言うと、アイツは常に俺にくっつき、俺もアイツがいない時はわざわざ探して手を繋ぐ程度には仲がいい。

 アイツは俺と一緒にいる時は基本ご機嫌で、んひんひ笑っている。俺も俺でアイツが笑うのが嬉しくてむふーっとなるのである。


「二人一緒でいつもご機嫌さんね」


 幼稚園の先生談である。


 先生に心配された俺と俺以上に内向的であったアイツの、むふんひコンビであったが、互いの存在と3年の歳月のおかげか、少しずつ園児たちと接するようになり、そこそこに社交的にはなれたのである。


 さて、問題が起こったのは夏のある日、俺の家で遊んでいた時のことである。

 子供用ビニールプールで、俺とアイツが遊んでいるのを見守っていた我が母の素晴らしい提案が事の発端となった。


「二人ともスイカ食べる?」

「食べる!」

「食べるー!」


 夏のスイカとは日本人の原風景の一つなのではないか。春の桜餅、夏のスイカ、秋の月見団子、冬のみかん、これらは我々日本人の心とは切っても切り離せぬ……なに?食べ物ばかりだと?それの何が悪い!


「美味しい?」

「うん!」

「おいしー!」


 スイカの種は飲み込んでも別に芽が出たりしないことを知っている俺に恐れるものは何もない!

 勿論我が幼馴染にも惜しみなく智慧を授けている。

 もはやスイカの種など我らむふんひコンビの快進撃を止める障害にあたわず。

 あっという間にスイカは数を減らしていくのであった。


 そして最後の一切れに手を伸ばしかけた時、俺の頭に電流走る。


「……食べていいよ」


 ああ我が心のなんと慈悲深く気高きことか!己の欲を押し殺し、我が半身たる幼馴染へスイカを譲るこの行為こそ、まさにイエスの説いた隣人愛そのもの!


「んーん、いいよ、食べて」


 あゝ……!なんと、なんということか!我が半身もまた、我と同じ境地にいるというのか!

 まこと尊きものが、このままならぬ世にあることを齢六つにして俺は知った。

 ではやはりなおのこと、この一切れは彼の者にこそふさわしい!


「俺はいいの、いらない」

「ダメ、食べるの!」

「いらない!」

「食べるの!」

 

 子供というものは、時に頑固なものである。そう、今の俺たちは、俺の父さんの方のお爺ちゃんより頑固者なのだ!

 なおお爺ちゃんは俺に会うとデレデレで、俺には全く頑固でないことは見ないこととする!


「なんで食べないの!」

「ちがうもん!アタシが食べるんじゃないもん!」

「んーーぃー、ばか!もう知らない!嫌い!」


 この、この愚かな口を誰ぞ縫いつけよ!何故心ない言葉を吐くのか!イエスの説いた隣人愛?笑止千万!

 ほら見てみろ、貴様の言葉がもたらした現実をまざまざと見せつけられるがよい!


「ゔぇっ、ひっ、うえーーーん!き、きーらーいー!んお゛ぉおんお゛ぉん!」


 ギャン泣きである。子供特有のギャン泣きを、我が半身が全力で披露なされていた。

 もう一度言うが俺たちは仲がいい。どれほどいいかと言うと、アイツは俺に何かとつけては頬を擦り寄せ、すきーすきーんひーなどと囁き、俺もぎゅーっと抱きしめて、おれもすきーむふーなどと囁く程度には仲がいい。

 アイツは俺がそばに行くと、それまで泣いていたとしてもすぐにんひんひ笑い、俺も俺でアイツが笑うのが嬉しくてむふーっとなり、アイツの前で泣いたことなどなかったのである。


 つまり、俺はこれまでアイツの泣き顔なんて見たことがなかったし、アイツもおれの泣き顔なんて見たことがなかったのである。


「んぐっ、ん゛っ、ぐおぉん゛おんおん!」


 ギャン泣き二号爆誕である。


「ゔぇーん゛ぉお゛ん」


 二号に釣られ一号のギアも上がってしまった!


「あぁほらほら、喧嘩しないの」

「でも゛ぉ……」

「だっでぇ……」

「二人ともえらいからねー。二人ともどーぞができてえらいえらい」


 二人一緒に抱きしめられてしまった。ああ俺の隣人愛のなんと浅ましいことだったのか。この母の愛の前では、俺は子供同然ではないか。いや同然というか子供そのものだが。


「ほら、ちゃんとごめんなさいして?嫌いって嘘言ってごめんねって」

「ぅん、ごめっねっ、きらいじゃなっいから、うそだからっ、ごめんね」

「あたっしも、ごっめんね、あたしもっ、うそっだから、きらいじゃないよっ」

「二人ともよく言えたね。えらいえらい。はい仲直りのぎゅーだよー」


 あゝ……ぎゅーこそ愛の象徴。母の愛も隣人愛も、このぎゅー一つで伝えることができる。


「んーー好きーーーむふーーー」

「んひーーーだいすきーむふひー」


 何か混ざったような笑い方をするアイツを抱きしめながら、こうして俺たちの初めての喧嘩は5分で終了するのであった。


「あっ、喧嘩の原因はお母さんがこうしちゃおっ」

「あっ」

「えっ」


 その後、我が母vsむふんひ連合軍の戦争が勃発したのは言うまでもない。

 なおこの戦争は30分という長期戦となったが、母の抱擁の前に連合軍は白旗をあげざるを得なかったのであった。

この作品のぽけぽけ要素は、主に幼馴染くんのモノローグで構成されています

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