なんか俺たちが友だちになった話
アイツと初めて会った日のことはよく覚えている。なにせ俺の人生に最も影響を与えたヤツだからだ。
三歳の頃、当時の俺はよく言えばマイペース、悪く言えばぼーっとしてる、大人しい性格だった。
活発にはしゃぎ回るより室内で絵本を読んだり、積み木やブロックなんかの玩具をああでもないこうでもないといじくり回している子供だった。
「すごくいい子なんですけど、少し、周りの子と馴染めていないところがあるのかもしれません」
幼稚園の先生談である。
そんな俺を心配してか、両親はなんだかんだと休みの日に、子供が集まる児童館や公民館なんかへと俺を連れて行ってくれていたのである。
ぽかぽかと春の陽気が眠気を誘う日、俺は父さんに児童館へと連れられていた。
その日は近隣の幼稚園や保育園の先生がボランティアに来ており、好きな遊びを選べる日だった。外で鬼ごっこやかくれんぼをする子もいれば、絵本や紙芝居を読んでもらったり、お絵かきをしたりと、屋内でのんびりする子もいた。
俺が選んだのは折り紙である。理由といえば、参加する子が少なかったから、というのに加え、単に当時の俺は折り紙が好きだったからだろう。
四角い紙が、様々な形に変化していくのがまるで魔法のようだと感じていたことを覚えている。
そこにアイツも父親と参加しており、俺たちの隣に座っていたのである。
「どうもこんにちは、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「ほら、挨拶できるか?」
「こんにちは、よろしくおねがいします」
「はいこんにちは、よろしくね」
「……」
ファーストコンタクト、まさかの無視。
「ああ、ごめんなさい。引っ込み思案な子なもので……」
「いえいえお気になさらず。知らない人に声をかけらたらびっくりしてしまうでしょうから」
我が父は流石大人の対応である。なお当の俺は普通にムッとしていた。勿論今となってはアイツのことをよく知っているから気にしていないが、よくよく考えてみれば中々無礼である。
――てんめ引っ込み思案で許されるなら俺もそうだったわてやんでいべらぼうめい!――
と、言ってやったのは確か十一歳の頃である。
まあとにかく、幼稚園の先生に心配されていた俺に輪をかけて、アイツは内向的だった。
そんな俺たちがどうして仲良くなったかというと、きっかけは折り紙であった。
「じゃあ最初は、みんなでチューリップを作ってみましょう」
「次はお家を作ってみましょう」
ぬるい、ぬるすぎる。折り紙マスター(自称)たる俺にそのような幼児向けの折り紙などできるものか!
いやまあちゃんと幼児だった訳だが、簡単すぎるお題に退屈した俺は、無視して一人別のものを折り始めたのである。
そう、それは幼児には超高難度ミッションであり、俺が折れる最も難しい折り紙、鶴であった。
手順は全て覚えている。ふっ、なあに折り紙マスター(自称)にかかれば鶴などお茶の子さいさい……あれ?これどっちだっけ?こっち?おん?こうか?そんでこうで?こっち?じゃなくて?こうで?こうだ!
見事華麗な折り紙捌きで、俺は鶴を折り上げたのである!!!
ただし間違えた折り跡でよれよれになったのは気にしないものとする!!!
「むふー」
「………………」
俺の手元を見つめる視線にちっとも気付かず、超高難度ミッションを完遂した俺は達成感に浸るのであった。
「………………すごいね」
ポツリと呟いたその声が、アイツが俺に発した最初の言葉である。
「これ、なあに?」
「えと、ツル。知らない?」
「知らない。どんなの?」
「なんか白くておっきい鳥なんだって」
「おっきいの?でもこれちっさいよ?」
「だってこれ折り紙。本物はもっとおっきいんだよ。バサーってしたら俺よりおっきいって父さん言ってた」
「そうなんだ」
アイツは折り紙の鶴も本物の鶴も見たことがなかったらしく、さっきの塩対応は忘れたかのごとく、喋り出した。
「すごいねー」
「うん、俺も本物見たことないけど、たぶんすごい」
「んーん、えとね、んー、すごいの作れるの、すごいね!」
俺は多分調子に乗った。いや多分じゃない、絶対調子に乗った。
そうでなければ幼稚園の先生に心配されるほどの俺が、その後にとった行動に説明がつかないのだ。
「……あげる」
「え?」
「だから、あげる。俺、作れるから、だから、あげる」
「わっ、いいの?ありがと!んひっ!」
今思い返してみれば、下手だし、よれよれだし、格好のつかない鶴だったと思う。
それでもアイツは妙ちきりんに笑って、喜んでくれたんだ。
だから俺はアイツと友だちになれたんだ。
そうして仲良くなった俺達は毎週のように遊ぶようになり、その後通っている幼稚園は違うものの家が近いことが判明したり、親同士が意気投合したり、同じ幼稚園に通いたいとアイツが駄々をこねて転園してきたり(なおこの時俺も両親に本気の駄々、秘技・床でジタバタを披露したことはアイツには絶対内緒だ)して、いつも一緒にいるようになったのである。
基本方針として1話2000〜4000字の読みやすさとテンポ感重視。会話シーンでは地の文少なめの会話文多め。頭をからっぽにして読むのが丁度いい塩梅。というか頭空っぽで書いてるというお話。
更新頻度は、やる気次第。




