act 3
「諦めた?」
柊也は微笑んで言う。
澄麗はぷいっと横を向く。
「…いいね、その怒った横顔。益々俺のものにしたくなるよ。」
柊也はかなりご機嫌だ。
「あたしは絶対小林君の思い通りになんか、ならない。」
その時、柊也は澄麗の腕を引き寄せて言う。
「小林君、じゃない、柊也だろ?」
その声に、澄麗はびっくりしてすくんでしまった。
「…柊也…君?」
「あ〜まぁいいだろ。これからは俺の事はそう呼べよ。」
彼の言葉には、逆らえない威圧感がある。
何故だろう?
この時澄麗はまだ柊也の正体を、知らずにいた。
ふと柊也を見る。切れ長の黒い瞳
さらりとした黒髪…
どちらかと言えば、可愛いタイプの柊也だが、何故か誰も逆らおうとはしない。
澄麗はそれが不思議だった。
後になって柊也の正体を知った時、納得せざるを得なくなる。
「もう陽が暮れる。送ってやるよ。」
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夕闇迫る街中を、ふたりは手を繋いで歩いた。
いや、正確には柊也に引き摺られる様な格好だったのだが…。
…―繋いだ手が熱い。
澄麗はそう思った。
なんだかちょっと楽しいな…。
「…みれ?―…澄麗?」
不意に名前を呼ばれてびっくりした。
「あ…何?」
「お前ウチ何処?」
そういや言ってなかったっけ。
「あ…ごめんなさい。横町なの。」
「なんだ!俺んちと同じじゃねぇか。」
柊也はにっこり笑いながら言う。
可愛い…―。
澄麗は思った。
でも何故みんな柊也を恐がるんだろう?
「柊也君?あたしのウチここなの。」
柊也は立ち止まって澄麗を抱き寄せ、縛り付ける様に唇を落とした…。
「じゃあな!明日から迎えに来るからな。」
「え…本気?」
「俺は嘘は嫌いなんだよ。」
その言葉に身体が熱くなる。
あたしは柊也が好き…―――。
澄麗は確信した。