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6話 僕の破壊衝動と感情の消去

僕は家に帰って手洗いうがい。いつもの様にステータスを開いた。

「おお。読心生えてる。ぶっふwww何このスキルw村瀬スマイルとかwww」

しかも完璧超人村瀬スマイル裕也という称号が付いている。

 

唯芽さんに魅了が生えた事で発覚した。

熟練度が一定になるとスキル化するのだが特定のスキルはデフォルトで常時発動に分類されているらしい。


僕らは顔を見ればだいたい人の気持ちが漠然と分かる。

それは僕が人心掌握の講師に相手の心を察して的確な言葉かけをし自分の望む方向へ誘導する様にと何度も言われてきたからだ。


「そうか、これが常時になってたから感受性の高いBは人の気持ちが刺さる様に痛かったんだ。」

川釣りの時聞えた声が病気じゃなくて良かったな。


「あれ?この称号……。多重……」


 

村瀬裕也

「ふふっ。交代の時間だ。」

さてと。

僕の可愛い可愛い弟君は優秀なんだけどいかんせん余計な事に気付きすぎる。あの観察眼のせいだったのだ。


称号は唯芽さんに見られたから消す訳にいかないけど、余計な疑問や勘繰りはまめに改竄で消してやらないとな。

にしてもステータス別なのになんであっちに表示されるのかなあ。ああ、体が共有だからか。僕の方にもあるもんね。多重人格。

ユメカは単なる役割分担だと思っている様だけど。


しっかり対策して僕らの多重はなるべくバレない様にしたいものだね。


僕は映像記憶に保存してあった完全鑑定を複製。ちょちょいと改竄してCのステータスに重ねた。

「これで同期する。よし。」

重ねたステータスをはがして同じになっている事を確認。

それから記憶をざっと改竄。これでよしと。

僕は完全鑑定の項目を空白にして頭に描く。


鑑定+文書作成+改竄。


フラバが起こらない様に明るい事から慎重に埋めていこう。趣味と、特技と……。

と考えただけで生い立ち部分にCの知らないピアノに関する記憶が書き足された。


やはり、知っている事は書かれる。

僕は芋づる式に鬼婆の記憶が引きずり出され、フラッシュバックしそうになり今の感情を改竄で消去した。


僕から分離された一番上手い日のピアノを弾くピュアボーイCには決して共有してはいけない記憶だ。

やっばwピュアボーイって称号付いちゃった。消さないとw


こうして記憶の整理をしながら鑑定項目を埋めていけば、僕の詳細鑑定に書かれる項目が増える可能性もあるのだ。

完全鑑定は唯芽さんの固有スキルだろうけどそれに近いスキルが発現したら嬉しいなあ。


冷蔵庫からお守りを取り出した。

これがあると食べ物が傷まないのだという。


だけどあれだけ鑑定持ちが居て何故誰も冷蔵庫の中を鑑定しないんだろうね。謎だよ。あそっか。看破と鑑定併用の発想が無いんだ。


ふふ。じゃあまだ内緒にしとこ。そのうち和樹君あたりが気付くでしょ。


あの優秀すぎる弟とはなるべくステータス差を付けておかないとどうも最近操り辛くて困るんだ。さすが僕のスペアって感じ。


「くふふっ。ほんとに優秀で可愛いんだから。」


僕が道を間違えない様にお前の事守ってやる。それが長男たる僕の役目なんだから。

「おっと。いかん。」

僕は自分の衝動の元となる感情を改竄で消去した。

穢れた衝動は元から断たないと。


僕は感情が昂ると破壊衝動というデバフが付くのだ。

面白いや楽しいの感情では出ないが破壊衝動が出るのは負の感情だけとは限らない。


愛情が高まる時、強烈な壊したい衝動が起きる。

それは僕があの鬼婆と血が繋がってる証拠。


 鬼婆は僕を殴らなくなってからというもの僕自身の代わりに僕達の大切な物を目の前で繰り返し壊して見せた。

何度も何度も。

 

けたたましく笑いながら壊す。

ナイフで切り裂き、ハンマーで叩き潰す。

あいつは執拗なまでに僕に愛してると繰り返す。

僕を苦しめ傷つけながら、僕の心も壊した。

僕はまた感情が高まりかけて全て改竄で消した。害のある感情はまめに消さないとね。


「気を取り直して。」

自分の周りに聖域のお守りを囲むように並べ、僕は神に祈った。

 

「神様、弟を守る力を下さい。」

今まで毎日祈っていたのは別の神様なんだけどこれからは実際に僕らを助けてくれる神に祈らないとね。改宗だ。


「さて。」

鑑定と看破の紐付けスキルを発動する。

「鑑定看破。聖域。」

[聖結界 熟練度アップの恩恵がある 聖なる魔力が満ちている]


僕は何故かステータスが別だからMP増やし放題なんだよね。

なるべく増やして会社の連中の魅了を解かないと心が休まらないんだよ。


それもこれもCのせいだ。


 あいつは全く理解していないが、僕らが村瀬化学で次期社長として上に立つ為教育されてきた事を一サラリーマンが実践する必要は皆無だ。営業ならともかく、知財部や社食のおばちゃんにまで好かれる必要は無い。誰にでも温和で完璧な村瀬裕也にならなくても良いのだ。


あいつは執着され始めてから邪険にするが元となるきっかけを作ってはいけないのだ。


だが課長と佐竹ミカに魅了耐性が出たのは有難い。天才課長と敏腕秘書佐竹ミカは僕に関わってから明らかにポンコツ化が著しかった。それはデバフ魅了によるものだった。魅了が切れて二人のポンコツが治って良かった良かった。


それにしても僕はあの和樹君には絶対会う訳にいかない。彼は僕や課長と同じ直感のスキルを持っている。

和樹君に会う役割はCで徹底しないとダメだ。


唯芽さんに治癒をもらってCは病院に行けなくなってしまった。

体中に無数にあった切り傷が治ってしまったからだ。

今はカルテが共有されているから僕に傷跡が無いなんておかしいんだ。


治癒の熟練度アップは急務だ。

僕は腕を切っては治癒を繰り返す。

「ううむ。飽きてきたな。」


治癒はメンタルにも効くから別に切る必要は無いのだが試した時フラバが起こって危なかったのだ。

僕はリアタイ干渉ができるからあいつが弱った時気付かれずに回復してやれる。

問題は僕があいつのメンタルに影響されやすい事だな。一緒になって破壊衝動が出たら共倒れだ。


「インフルで病院行けないと困るな。治癒しても症状だけ治ってウイルスが残ると迷惑になるが、診断書がなくては困る。ウイルスだけ浄化とかできないかな。」


僕はインターネットで様々なウイルスの画像と名前を見ながら看破しまくった。だがCが調子に乗ってこの部屋を浄化しまくったせいでウイルスも菌も無いのだ。


あまりに除菌しすぎると耐性が無くなってしまうぞ。冷蔵庫の卵すら無菌。クーラーにカビ菌も無し。意味が分らない。


かと言って外に出たくないんだよな。

逆ナンとかされたら精神削られる。

仕方ないな。もうちょい根気よく探すか。

条件の指定が大事なのだ。


看破、僕に害のあるもの。

「ダニ発見。ええ、僕まさかのダニアレルギーなの?嫌なんだけど!よし、試しにやってみよ。」


[浄化 僕に害をなすダニをこの部屋から浄化]


「おおう。一瞬でMP枯渇。かーらーのー全回復!おお。謎の神聖魔法獲得。よく分からないけどMP自動回復と消費削減出たよ。すごいなぁ。生き物消せちゃった。浄化って神聖魔法なんだ。おもしろ。嫌いなやつとか消せたらすごいのに。」


僕は嫌いなやつの顔を思い出そうとした。

「プククwwやばいw自分を一番殺したいww」


僕はお腹が減ってしまったので水道水をペットボトルに入れた。浄化して砂糖をどっさり入れる。

「これが一番安い。」

飲んだら治癒治癒~。糖尿病は嫌だからね~。

「タンパク質も脂質も要るか。きな粉とサラダオイルが一番安いのかな?サラダオイル飲むのはやだなあ。」


栄養補給しながら並列思考で考える。

にしても、唯芽さんって変わってる。

何故身近に天才の課長が居るのに課長の秘密を知ろうとしないんだろう。僕だったら真っ先に鑑定するね。


「まあ変わってる僕が言うのもなんだけどね。でも多分僕より彼女の方が変わってる。僕より変な人初めて見たんだけどw」


唯芽さんは自分が人にされたら嫌な事をしない主義で、課長に絶対にステータスを見られたくないから課長のステータスを絶対に見ないんだとか。

全く意味が分らない。

好きな人の事を知りたくないのも意味不明だし、自分が強くなれる秘密がそこにあるのに見て参考にしないのが理解不能だ。


あの膨大な数のスキル、称号。

「ふふふ。僕も神童とか言われて結構な数のスキル持ってたけど、本物の天才やばすぎww唯芽さん隠し通せると良いよねwでもバレた方が多分良い結果になると思うけどねぇ。」


そう考えると微かに嫌な予感がした。


「うわ。そこで直感働いちゃう?意味不明。天才課長にバレるとダメなやつなのか。じゃあ僕も隠すの手伝ってあげないと。会う機会とかどうせもう無いけどね。」


毎日課長を読心して何かあったら和樹君に連絡するぐらいしか無理だなあ。


 僕が唯芽さんに人生捧げるのは当たり前だけど、和樹君に監視されてステータスアップに制限かけられるのやなんだよね。何もかも全部共有されるの理不尽。だって僕を救ってくれたの和樹君じゃないもん。


まあ僕はステータス別だし隠蔽も偽装もあるからね。


ていうか唯芽さんは、課長がよその女に秘密を共有しても良いのだろうか。

自分には絶対明かさない秘密を例えば彼女の部下、変態美春さんにだけこっそり教えても平気なんだろうか。


「そんな訳ないよねw君、想像力無さすぎww視野狭すぎwwwふふっふふふっ無意味で無駄な拘りめっちゃ可愛いんですけどww」


ドン!!

隣の住人から怒りの壁パンチを貰ってしまった。

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