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第18話 エリナ


執行隊の厳しい尋問を終えた後、ようやく二人はその場を離れた。

緊張感が徐々に消え、周囲の空気も次第に平穏を取り戻していった。長時間の緊張から解放された瞬間、少女は深呼吸をして、肩を上下に動かしながらリラックスした。それでも、目の前の拓海が気になって仕方がなかった。


「ありがとう、助けてくれて」

少女は少し照れながらも、心から感謝を込めて言った。拓海はその言葉に無意識に微笑んだが、すぐに表情を引き締めて冷静さを取り戻した。


(感謝されるのには慣れてないな、というか、今までクズ扱いされてばかりだったし)


「別に。俺はただ、女子がいじめられるのが嫌いなだけだ」

拓海は微笑みながら言ったが、心の中では別の考えが渦巻いていた。

彼にとって彼女を助けたのは、単なる偶然に過ぎないが、そこから得られる可能性がないとも言えなかった。

何しろ、彼女は「刀の魔晶」のような超レアアイテムを持っているのだから、拓海にとっては今、手を貸しておくべきだと思った。


「私はエリナ、エリナ・サクラ。貴族家系ではないけど、名前だけはそれっぽいでしょ?」

エリナは少し照れくさそうに微笑みながら名乗った。


拓海はその名前を聞いて、少し驚いた。サクラという名前は、冒険者界では非常に有名な家系のものだ。しかし、エリナはその家系に属していないという。


「サクラ? あの有名なサクラ家のことか?」

拓海が疑問の表情を浮かべると、エリナは軽く首を横に振った。

「違うわよ。うちの家は特に名門でもなんでもない。単に、私の両親が東京のSSS級ダンジョンに初挑戦して命を落としただけ」

拓海はその言葉に驚きの表情を浮かべた。


「東京のSSS級ダンジョンが…最初のダンジョンだったのか?」


エリナはゆっくりと頷き、目を伏せながら続けた。

「ええ。あの頃、世間はダンジョンについての知識がまだ浅かったから…」


拓海はその言葉を聞いて、エリナの過去に何か孤独な影があるように感じ、心の中で複雑な思いが湧き上がった。

そのことに気づいた拓海は、視線を外し冷静さを保とうとした。その瞬間、思考が数年前のあの夜に引き戻されたような感覚があった。


「それからは、祖母に育てられたけれど、自分の力で生きると決めた」

「私は必ず25レベルの『元素大法師』になる。そして、東京のSSS級ダンジョンを制圧するんだ」

「その前に、まずは第一歩として、天空の試練で最高報酬を獲得し、15段に転職して魔物の楽園である東京への資格を手に入れる!」

エリナは強い意志を込めて言った。彼女の声には若干の疲れが感じられたが、その目には揺るぎない決意が宿っていた。

「そのためにも、天空の試練には絶対に勝たなきゃ!」


エリナは続けて言ったが、その表情には一瞬不安がよぎった。

「でも、これで安心できるわけじゃないね」エリナは眉をひそめて言った。

「あの赤瞳ハゲ、また私を狙ってくるかもしれない…」

拓海はその言葉に無表情で頷いた。


「そうだな…じゃあ、今はとりあえず一緒に行動した方がいいかもしれない」拓海は冷静に言った。

「それが一番かもね。」

エリナが頷く。拓海は心の中で、自分の行動計画をもう一度整理しながら歩を進めた。


「実は俺も、明日から試練を受けるために鉄血城に来たんだ」

拓海はさりげなく話題を変えた。「天空の試練が、俺にとっても大きな挑戦だ」

エリナは少し驚いた表情で拓海を見た。「試練? あなたも受けるの?」

拓海は頷いた。

その言葉を聞いたエリナの目が輝き、にっこりと笑いながら言った。


「じゃあ、一緒に頑張ろう!」

拓海は心の中で微笑みながら答えた。

「うん、一緒に頑張ろう」


「ところで、次のダンジョン配信に、君を特別ゲストとして呼んでもいいか?」

拓海はさりげなく提案した。


エリナは誰が見ても完璧な美少女で、彼女をゲストに招けば視聴者数を大幅に増やせるだろう。

そして、少しでもスキンシップを取るだけで炎上値も多く稼げるに違いないと拓海は内心で考えていた。


「え? 私が?」

エリナは驚いた表情を見せたが、拓海は彼女の真剣な目を見つめながら、”熱心”に説得した。

「もちろん! 君のような強力な冒険者がどんな戦いを繰り広げるのか、視聴者は絶対に期待してるはずだ。」

「それなら、私も…やってみるわ」

エリナは照れくさそうに言った。拓海は満足げに頷き、二人は簡単な食事を取りながら、明日の試練に向けて話し合った。

......


一方、鉄血城の冒険者公会大楼では、別の人物が拓海のことを気にしていた。

彩羽はその情報を受け取ると、冷たい表情を浮かべながら呟いた。

「あいつ…拓海がついに来たのか…」


彼女はその名前を呟くと、目を細めて何かを考えていた。

「おかしいな、私はあいつを憎んでいるはずなのに、どうして試練でまた会えることを期待してしまうんだろう…」

「もういい! 明日、試練の集合時にあいつと顔を合わせた時に、自然とはっきりするだろう!」


彩羽は小さく呟き、資料を握りしめながら考え込んだ。目には決意の光が宿っていた。

「今回は必ずあいつを徹底的に倒して、あの恥を晴らしてやる…」

「だって私はもう10段に突破したし、秘密武器もある」

彩羽は資料を閉じ、剣に油を塗りながら、静かに呟いた。


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