大序 寺田医師の証言 第一話
脚本・演出を手がける「地球舞語り」公演(2024年7月上演)
そのなかの『銀河忠臣蔵』を自らノベライズ化(笑)
歌舞伎、時代劇の名作「忠臣蔵」を宇宙、そして地球環境に視点をおき展開する壮大なハイ・ファンタジーです。
奇妙なことに、同じ悪夢に悩まされる人が続出している。
少なくとも、ぼくが医師として働く睡眠障害外来では、睡眠中の共通の夢で体調不良を訴える患者が後を絶たない。確かにストレスが原因で不眠や悪夢を見る症例は多い。しかし家族でもない、同居もしていない他人が、同じ夢を同時多発的に見るというのは異常と言わざるを得ない。
患者の訴える夢の内容。多少の相違はあるものの、概ねこういうものだ。
星が動いている。一方向ではなく激しくランダムに。
星々の異常な動きで、患者は緊急事態におかれていることを察知する。地面の微かな揺れも感じる。ともかく、ここを離れよう…でも、ここは、どこだ…改めて周囲を見渡し驚く。あたりを埋め尽くすゴミの山。ゴミ処理場に迷い込んだか、それとも…このとき再び地面が揺れる。地震か。世間が騒いでいた例の南海トラフとかいう地震で、日本は崩壊した…家族はどうなった。居ても立ってもいられず、ゴミを踏み越え走り出したものの、人の姿がない。みんな、みんな、どこに行ったんだ…患者は一様に、恐怖と絶望に足の力は萎えゴミの山に座り込んでしまったという。
どのくらいの時間が経ったのか。足元に積み重なる進化と繁栄の代償、大量生産と大量消費の結果を自分自身に重ねる、とある異変に気づく。ゴミの奥底にわずかに光りがこぼにれる箇所があるのだ。患者は夢中でゴミを払いのけると、光りは次第に確かなものとなり、あるとき、巨大な光の柱がそびえ立つた。その光りのなかに…