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私は優斗大好き。それでいい。

えー、なんとかレコーディングが終わった。もう帰りたい。すぐに帰りたい。幼馴染も大事だし、バンドも大事。でも、それよりも優斗が大好き。


それでもまだ私は親の傀儡という感覚を捨てきれずにいた。親に感謝して親のために死ぬ。次の世代に大量の財産を残して。相続税で国が動くほどの大金を稼いで死ぬ。使わないまま。終わらない親との縁に疲れ切っていた。月に30万の仕送りを親が知らない口座に入れてる。


だから、親は車の代金しか知らない。ここで、この口座をばらしたらどうなるだろうか。大金で人が狂うのを見て嘲笑いたい衝動があった。私、狂わないけどね。使うあて無いもん。パソコンも高いしなぁ。車も今あるから要らないし、スタジオとかは桶場さんに任せてるし、妹の学費はまだ大丈夫だし。


よし、親の葬儀めちゃくちゃ豪華に国葬にしよう。それがいい。ついでに親の追悼ライブで東京ドームから世界ツアーしよう。最も意味の分からないライブ理由で。


帰ろう。さっさと飛行機で帰ることにした。ちなみにレコーディングは赤坂でした。紅き炎の終焉は赤い坂でしてみようという洒落で。お洒落でしょ?いや、駄洒落か。あ、帰ったら日本酒飲もうかな。酒と洒落込もうというね。酒で駄洒落を言うならば、鮭で。


要らねぇよ。


眠たくなっても寝れないけどそれでいい。とにかく早く優斗に会いたい。優斗に「もうすぐ帰れるからね。明日は優斗と過ごす。一緒に住もうよ」と送った。


でも、実際には「一緒に住もう」が「一緒に相撲」になってて、優斗からは「それは俺が押しつぶされるのか?」と返ってきた。


確かにいつも私が上に乗ってるしなぁ。「あんたが重いからなんだよ」と言えたら良いけど、言わなくて良いんだよなぁ。てか、こういうところが可愛いんだよなぁ。返しが可愛すぎるだろうよ。 


途方もない時間に感じたけど、やっと徳島空港に着いた。遠い。飛行機1時間でも。


そこから40分。軽のターボを吹かして帰る。優斗の元へ。


やっと優斗の家に着いた。最近駐車場を借りた。さすがにずっと歩くの疲れるし。私、優斗のためなら頑張れるんだなぁ。手続き面倒だったけど。私は車で、自分の曲を流していた。未熟で慣れていなかった頃の『Caught in a shower』。


始まりは、いつも準備ができていない頃に来る。私に来たときは、まるで俄雨に会った時のようだった。あの日は単純に塾帰りで特に何もする気はなかったはずなのに。なぜかメロディーが浮かんで、俄雨とシャワーを歌にしていた。


自信がなくて、どこか世間の顔色を窺うような音色が私の耳に触れていた。


不安定な低音と高音。


揺れる音と、自尊心。


何事も慣れてしまうと、それが当たり前になってしまうようだ。昔は砂漠で水を求めるように欲しがっていた高音も今ではHihiDまで余裕で出てしまうから何も感動はない。ただ出るだけ。他からすれば羨ましいだろう。だが、これは本当に努力に見合った報酬なのか?という疑問が拭い切れない。


優斗が私に釣り合うか心配していることには気付いている。だが、私も同じように、優斗に釣り合うほど魅力的な女の子になっているのか不安になってしまう。


優斗に「着いた」と送って何分経っただろう。早く会いたい。


優斗から「了解」と来たのは5分後だった。長かった。でも、早いよ。空気読めよ。それでも、優斗が出てくるまで待つのも胸が痛かった。


「お、お待たせ。ごめんよ」

そう言う優斗に最後まで言わせることもなく、「会いたかった」とまるで数百年離れていたかと言うぐらい顔を涙で濡らしながら優斗に駆け寄る。


優斗は「えっと、その、大丈夫だったか?」と返してくる。相変わらず、不器用でイケメンじゃなくて、童貞っぽい雰囲気のままの優斗だった。この変に慣れてない感じが好きなのだ。きっと器用でイケメンの方がモテると思う。


でも私は、優斗だから恋に落ちたし、優斗の為だから頑張れる。


「うん。大丈夫だった」

普通に返したつもりだったのに涙が滲むし声が震える。今ビブラートなんてかけなくて良いのに。


「アニキは嘘下手だからすぐわかる。辛かっただろ?コーヒー飲むか?」


イケメンじゃないのにどうしてなのかな?童貞っぽい戸惑いが少なくなってる気がする。何で慣れてるんだろう。もしかして、男の子同士でナニかあったのかな?


「また、私を寝かせたいの?」となんとなく慣れてる優斗に嫉妬してしまって返しがキツくなってしまった。ほんとはそんなつもりなかったのに。


「おう。眠ってるの可愛いからな。あと、絶対寝れてないだろ?深夜に「人魂も蒼き焔か?」って何だよ。寝ろよ」と優斗に倍返しされた。


「ねえ。夜、配信しよ♡発表の許可出たから」と言うとノータイムで 「それは、いわゆるエロ配信か?」とだいぶ男の子だなぁって答えが帰ってきた。


「違うよ!!そんなに盛ってないから!!」

「ほんとにー?20回ぐらいヤラせて来たのは誰だった?」

「ヴァー、だって寂しかったし、離れるの辛いもん。無理だよ」

「まぁ、俺もラーメンがいつもよりしょっぱかった。お疲れ。とりあえず入ろうぜ、寒い」

「だよね。さっっっヴい。まじでバカクソウルトラフリージング寒いわ」

「出たな、アニキの謎語録」

「え?言わん?バカクソウルトラフリージング寒いって」

「言わん。言語センス独特」

「そっか」


中に入る為に繋いだ手は、冬の寒さも雪も溶かせそうなほど温かかった。そして部屋に入って思い出した。




「あーーーーー!!バイトーーー!!」

「今さら思い出したの?夜バイトだろ?だから、ヤラないからな。立てなくなったらヤバいだろ?」

相変わらず、冷静で普通の人だと思う。


「そうだね。えっと、お昼食べた?食べてないならラーメン食べたい。いつものところで」

「そうか。俺、昨日もラーメン食べた気がするけど」


「いいの。一緒にイこ♡」とドキドキさせようとしたら「ばら撒くな。あと、今日は絶対しないからな。バイトだろ?」と冷静なツッコミを入れられた。


で、豚骨ラーメン食べると、いつもよりしょっぱかった。おかしいな。なんか水流れてる?なんで?


「アニキ泣いてないか?どうした?何か辛いのか?」

「ツラくないはず。特に何もないはずなのに、何でだろうね」

「わからん。とりあえず、食べればいいと思う」

「うん。そうだよね」


食べきって店を出てすぐ我慢ができなくなってしまった。キスしたい。いつもの場所で。


寒いのに忌々しい程晴れた澄んだ空と空気。


優斗の唇に唇近付けると「今か?ニンニク食べたあとだぞ?って前の時もその前も言ったよな?」と返ってきた。童貞っぽい不器用さなのに、なんでこんなに余裕あるの?おかしいじゃない。余裕のあるお姉さんは私なのだ。テメェじゃねぇんだよ。


最強の俺としての自覚が優斗に対して強めのキスとして出てしまった。全部舐め回してやる。過去の自分と混ざった結果、なんか強火で燃え滾れストロングバーニングファイアって感じだ。


蒼き焔を優斗に移すように温度を共有するかのようにキスをする。


唇も全部包みこんでやった。どうだ?かわいいだろ?とんこつラーメンの味が口に広がってきた。やっぱキスとしてはナシな気がする。


今度から考えようと思うのに、なぜかだいたいラーメンなんだよなぁ。というより、私たちのキスの象徴としてとんこつラーメンのこの味が働いてしまっているのだ。


時給を払う気は無いけどね。いや、確かに役割を果たす意味では働いているけども、労働じゃねぇだろ?これまでは可愛い女じゃないと好かれないと思っていた。


何度も身体を重ねたが、可愛い私の価値があるからそうして貰えているのだと思っていた。でも、蒼き焔と紅き炎の夢を見て、ガスバーナーの比喩を思いついた時、私は期待された燃える炎ではなく、一緒に作り上げる蒼き焔に心を惹かれた。


もう、光を他人に任せなくて良い。闇色に輝く光を灯す。紅も蒼も取り込んだ紫の炎を燃やす。唇を離すと無意識に「フェノールフタレインファイアー」と呟いていた。


「何それ?」

優斗の距離は変わらない。なのに胸を焦がす焔が灯る。空気が満たされて行く。期待の紅い炎が蒼く変わって行く。


とんこつラーメン紋のエンジンオイルが満たされる。そして、ボクサーサウンドを響かせながらどんどん変わる。ギアが周り始める。突き抜けてやる。


心で燃える炎と真逆に口から出たのは「あ、えっと、ボクサーエンジンしない?直噴ターボで」だった。


「何それ?」

相変わらず、鈍い。でもそれで良い。だから、私はもう1度補足する。


「帰ったらエクスカリバーを花園に突っ込んで欲しいな」

「しないって言っただろ?」

「でも、ボクサーエンジンは相互作用しないと動かないんだよ?」

「好きだよなぁ、ボクサーエンジン」

「大好きだよ。ボクサーエンジン。だってそれにしか出せない音を出しながら進むんだよ?そして、どんな困難も己の道を貫き通して進んでいる。カッコ悪いわけないでしょ?」と熱量込めると、「輝奈子、ステイ。とりあえず、早く帰ろう。寒い」と返ってきた。


こういうところが可愛い。やっぱり私より優斗の方が可愛い。私は可愛いではない。強く燃えて冷えた色をした蒼き焔、コールドフレア。だから、私は眩しい女の子になる。そして、きっと麗しいとか美しいとか言われるようになるんだろう。


「少なくとも麗しいとか美しいとかは無いと思うぞ。綺麗な顔してるけど、オヤジギャグ好きだし、ボクサーエンジン語る女の子だからなぁ。かわいいぞ」

どこから漏れてたんだろう。あれ?おかしいなぁ。


「そ、そうか。それは良かった。じゃなくって。「そ、そうか」ってなるのは優斗の役割だから私のじゃないから」

「そうか」


そんなこと言ってると家に着いた。もう、優斗の家と呼ぶのは辞めた。ここは私の家でもある。あ、でも、2月ぐらいに引き払うとか聞いてたな。


どうしよう。とりあえず、介護で働いてから考えるか。いいや。2ヶ月ぐらいは入社まであるし、なんとかなるだろ。知らね。






その後エクスカリバーと花園で楽しくボクサーしてからアルバイトに来た。



今度からちゃんと我慢しよう。始まる前に優斗に送ろう。



「すまん。ごめんね。会いたくて会いたくて失った熱を埋めたかったんだと思う」


終わってから見た優斗からのTXTには「そうか。俺もそうだったかもしれん。すまん。自制心壊れてた」と来てた。



バカヤローだな、俺ら。いや、バカヤローだな、私達ら。


私達に「ら」をつけること無いけど、「ら」ーメンのせいなので「ら」をつけてやろう。


なんだこの話。昨日までの日記というか小説というかがわけわからんけど、もういいや。


豚骨ラーメンキスはココから2人の焔に変わる。


ちなみにバイトは2.4L直噴ターボのボクサーサウンドをガンガン吹かしているぐらい絶好調だった。


最後にギャグを1つ。





紅潮先生、絶好調。紅き炎が頬に灯るが満足気な空気に触れて心に蒼き焔を灯す。

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