【配信】ハンバーグ
私は「そっか。もしかして見られてる?」と優斗に返す。優斗は「そうかもな。だって人気歌手だろ?」と微笑んでる。
私は「そうかなぁ?まだ、300万人しか登録者いないはずだよ。最近見てないから知らないけど」と疑っていた。そんな私に優斗は「最近したアレあるだろ?ホラゲーの」と投げかけて来た。
「あれの何が良かったの?私の反応お世辞にも面白く無いと思うんだけど」
「共通テストの英語が少し楽になりそうとかリスニング対策とかで聞いてる人がいたらしい」
優斗の言葉に「何してんの?勉強しろよ」とツッコミを入れたら周りにも聞こえるほどだったらしく、ノーパンツッコミ女とかいう怪奇がまことしやかに囁かれるようになったという。
そういえば、そんなシーズンだったなぁ。今週末かな?英語系配信者としては英語取れて欲しいなぁと思う。今度、2次試験対策の英作文講座でもしてみようかな。何もやったことのない、全く説得力の無い英語日記とかの英作文とかを。
私、何してんだろう。ツッコミ待ちかな?
優斗にも「声デカ、さすがアーティスト」とイジられた。私、確かに昔から声量あったからなぁ。小学校の校歌斉唱で叫ぶなって怒られた記憶あるしなぁ。やっぱ声量あるがやおね。急な土佐弁。
「いや、言うてもほんなにないやろ?ほなってライブってマイクありきやし」
「なんで訛りだした?キャラ設定急に作るな」とツッコミを入れられた。だって聞こえてるならキャラ設定作りたくなるじゃん。かわいいって思われたいし。ストーカーはノーサンキューだけど。
会社とその人が互いにサンキューって言い合える産後休暇とかいいよねっと何時も思っている。あー、私、こっからどうなるのかな。
「ねぇ、私これからどうなるのかな?抱き締めてくれない?ちょっと寒いし」
「お、おう。もうすぐスーパー着くのに、今?」と戸惑っている。私は「今じゃなきゃだめ」と上目遣いで言いながら抱き着く。どうやら元彼女の知り合いがこれを見てたようで、「リア充爆発しろ」と元彼女に送ったらしいことを元彼女から知った。何でこうなんの?
「いつも同じ匂いだけど、他のお茶試さないの?」と優斗に言われた。まだ、だいぶ残ってるのよね、ジャスミン。次はダージリンにしようかな。
私が「次のやつも探したいけど、やっぱりジャスミン茶飲んだ時にふと私がよぎってくれたら嬉しいなって思うから、やっぱりジャスミン選んじゃう」と微笑むと優斗は、「そうか。俺も使ってみようかな。オススメとかある?」と興味津々かもしれない。
私は「なら、緑茶かな。自然なお茶の香りで、和風な落ち着く香り。焙じ茶もいいね。香ばしい、どこか実家に帰ったような安心感を与えるお茶の香り。この2つがオススメ」と勧める。
優斗が「実家みたいな男ってこと?貶してない?」とツッコミを入れてくるけど、私は「それだけ、安心感があって、身を任せられるってことだよ。でも、おばあちゃんちが1番安心する気もするけどね」と返す。
「そうか。ハンバーグの材料買うんだろ。何買うの?」
「えっと、赤ワインと合挽き肉と、アレ、あのサムシング。ナスの植物の前に付いてるやつ。卵だ。なかった気がするから。片栗粉とかあったっけ?」
優斗は「ある気がする。飲むものとかあるのか?」と気を遣ってくれた。私は「うん。ある。でも、ストーカー思い出すから、守ってくれるよね?」とかわいいことをわかった上で聞く。
「お、おう。アレは大丈夫なのか?」
「ど、どうしよう。別に、同僚いないから良いんだけど。啓一郎君ここでバイトしてるでしょ?色気ない人だって思われそう」
「それでいい気もするけどな。俺が不安じゃなくなるから」
「そっか。系列店だから不安だけど、大丈夫だよね。それともこのままの方がいい?」
「ちょ、え、おい、何を?辞めとけって危ない」とめちゃくちゃせめぎ合ってそうだった。なので、そのまま手を繋いであげた。
私は「でも、買わなかったら意外とバレないかもよ?普段買わないし」と悪戯する。どうしよう。このままだと尻軽とか言われてしまうのかな。せめて、足軽。できれば戦国大名になりたいな。時代錯誤だけど。
優斗は「アニキがいいならいいんだけど。明日の分とかあるのか?」と心配してくれた。私は「良い気もするんだけど、お腹壊した時には不安だなって、でも優斗を興奮させたい気持ちもあるの」と判断をゆだねる。優斗は「買うのは決定だとして、恥ずかしいなら先出とく?」と聞いて来た。「どっちが?」と聞きたくなる心を抑えて、「いや、一緒に買うの。恥ずかしいから、選んだ下着とか見ないでもらえると嬉しいんだけど、優斗だからいいかな。なんか気を遣わせてごめんね」と女の子する。いわゆるブリっ子であろう。優斗は「お、おう」といつも通りだ。
やっぱり恥ずかしいし、隠しカメラがあるかもしれないから、履き替えるのは優斗の家にしよう。履いてないから少しだけ股下が心許ないけど、なんかいけない事をしているような高揚感で体が火照って来てしまった。股下寒い。家着いたら抱き締めてもらおう。
「やっぱり寒いね」手を繋いで歩きながら話しかけた。優斗は「そうだな」と視線を上下にウロチョロさせる。やっぱり男の子なんだなぁと微笑ましく思えてきた。私は「どっちだと思う?」と悪魔の質問をしてみる。優斗は「さあな。腹冷やして風邪ひくなよ」と取り合ってくれない。確かに昔踏み込まれるの苦手って言ってたけどやっぱりこのラインなんだなぁ。少しだけ頬を膨らませると、優斗が膨らんだ頬を押してきた。やっぱりかわいくない音がした。
なんとなく居心地の悪さを感じて優斗の横にピッチリとくっついて歩く。私の体温が直接優斗に伝わっているのかなっとか意識しちゃって心がドキドキした。この鼓動も伝わったらいいのに。なんて言えるはずなくて90度回転した蒸気機関車になって帰る。
「外、寒かったねー。エアコン生き返るーー」と荷物を置いて手を洗いうがいをしてくつろぎ始める。優斗は「それな」とそっけない返事だった。ハンバーグ作ろうと思ったけど、微妙にお腹空いてなくて、床に横たわる。スカートでこんな無防備なことしちゃいけないってわかってるのに、なんかムラムラしちゃうのだ。
私は優斗に「ねぇ、優斗も一緒にごろごろしよ」っと自分の横の床を叩く。優斗は「昼飯は?」と聞いて来たけど、「後でいいでしょ?私、寒かったのあっためて」と優斗に抱きつこうとする。まだ、床に寝そべってくれないので、下に抱き着く感じになってしまった。
優斗が「ちょっ、ま、」と焦ってるのを見て楽しんでしまった。ちょっと寝てから作ろう。起きて、ぽやぽやの頭で配信をしようと思いついた。
「ねぇ、配信しようと思うの。撮っててくれない?」
「おう。やるか。アニキのスマホでいいんだろ?」
「うん。お願い」
と言うことで、優斗に携帯を渡して配信を始める。先に開始のウィスパーをしておく。さて、始めていきまっしょい。
「こん夢幻桜。あなたのお料理にも彩を。夢幻桜輝奈子です」
『こん夢幻』
『こん夢幻桜』
『待ってた』
『実写助かる』
「今日はハンバーグを作っていきます。まず、熱湯を沸かして、肉に塩コショウをかけて、パックから出すっと。出す時も直接手が触れないようにパックを持って出すよ。で、出した瞬間にパックに熱湯をかけていっきまーす。だって触りたくないもん」
『触りたくないは草』
『ハンバーグだと触らないと無理なのよ』
『流行りのパックハンバーグか?』
「あ、そんなのもあったね。でも今回はビニール手袋でハンバーグをこねていきます。あ、たまねぎーーーーー」
『玉ねぎ絶叫で草』
『玉ねぎ絶叫助かる』
「玉ねぎ切ろうか?」と優斗が言ってくれたけど、私は「今、優斗が撮ってくれてるんだよ。どうやって配信するの?」と返してしまった。
「何とかなると思う。携帯置いていいか?」
「うん。ちょっと画面変わるかも。ちょっと待ってね」と話し、玉ねぎを切ってもらう。涙が出かけている優斗もなんかかわいらしくて切り終わったのを確認して抱き着いた。優斗は「ちょっ。危ないだろ」と叱ってくれた。本当にいいパパになりそうだなぁ。そのためには全国ネットのテレビに出られるくらい頑張らないと。
あ、履き忘れたこと思い出した。ま、いいや。あとで考えよう。さて、卵とパン粉と牛乳を入れてこね始める。冷たくて、もにゅもにゅした感触が気持ちいいような不快なような微妙な感じだ。その間に、優斗には私の手元を映してもらっていた。
『小さい手助かる』
『可愛い手』
『手、可愛い』
「で、ハンバーグ並べるために油引いたり、ニンニク入れようとか思ってたけど、切り忘れたし、いいかな?」
「良いと思うけど、段取り考えてなかったのか?」
「考えてたけど、忘れてたの。久々に作るんだもん」
「そうか」と優斗の返答は短かったけど期待してくれていることがわかってわくわくしてしまう。
結局、そのままハンバーグを焼き始める。並べ終わってすぐ、ビニール手袋を外し、ビニール手袋とボールを熱湯消毒して手を洗う。さて、やっとひと段落したので、雑談でもしようか。
「さて、やっと肉も焼けてきたし雑談でもしようと思うんだけど、話題欲しいな、ね、優斗」とすぐに雑なフリを優斗に投げる。優斗は「お、おう。そうだな。輝奈子結局どうすることにしたんだ?」と聞いて来た。
「そうだなー。歌手として頑張りたいけど、そうするなら、名前変えようかな。夢幻桜輝奈子に。過去の遺産strengthではなく、新しい私で。今までバンド名もメンバーとしての名前もstrengthにしてたけど、親に説明しないまま、自分自身で切り開いたあの生き方も間違いではなかったけど、親に説明して、自分として生きていきたいな」
『おお。新しい歌手の誕生か?』
『夢幻さんと呼べる』
『やっぱり歌手になってくれないと日本の損失だよ』
コメントを見て愉悦に浸ってたら、ハンバーグに結構火が通ってて「ハンバー―グ」と歌い上げてしまった。
『ハンバーグの歌助かる』
『普通にやばい高さ出してて草』
『歌手になる決意してくれて助かる』
ハンバーグができた。皿に盛りつけると優斗が「キャベツ千切りしとくから適当に雑談しといて」とスマホを返してきた。私は「さっきまで、優斗が撮ってくれてたの。つまり、私のスマホ渡してたの。検索履歴見られてなくてよかった。見られたらさすがにちょっと恥ずかしいかも」と真相を話す。
『そうだったのか』
『輝奈子さんの彼氏さんに対する信頼の厚さ羨ましい』
雑談してたら優斗に「食べるだろ?あ、ワインどうする?」と皿を持って来た。私は「飲むよ。開けようか。栓抜きある?」と聞いて探すけど、優斗が「これだろ?開けるわ」と開けてくれた。そういえば、いつ履こう。
「ありがとう」どうしよう言いにくい。まだ、履いてない事を。でも、これ、優斗も触れないよなぁ。どうしよう。悟ってもらおう。
そう思ってたら優斗がハンバーグを机に置いて、ワインを入れてくれた。私は「ありがとう。優斗も飲んでくれるでしょ?乾杯」と晩酌する。
ワインは、恋みたいな味だった。酸っぱさと苦さが強くて、アルコールの匂いがする。甘さがなくて、大人っぽい味だった。個人的には少し苦手な味だった。
「おいしいね。でも、ワインちょっと苦手かな」
「そうなのか?結構うまい気がするが。ハンバーグとめちゃくちゃ合うしな」
「そうだね。ワイン、大人の恋みたいな味だったね。ハンバーグどう?味薄くない?」
「うまい」
「そっか」
『ワインの解説嬉しい』
『うまいのか』
『ハンバーグ食べたい』
『今度作るわ』
食べ終わった後ワインを飲んで、優斗の手を握り、自分のスカートの上に乗せる。
「ちょ、おい。まだ、配信中」
「でも、もう我慢だめかも。優斗と遊びたい。ねぇ、だめ?お風呂も一緒に入りたいし」
「どんだけムラムラしてんだよ。熱とかないか?」と私の頭に手を乗せてきた。やっぱりかっこいい手をしてる。
「熱は無さそうだな。配信終えるか?」
「うん。そうだね。おつ夢幻桜」
『お風呂一緒なのか』
『ベタ甘え輝奈子さん可愛すぎる』
『輝奈子さんって甘えてるとき可愛すぎない?』
配信が終わった後、私は優斗の手をスカートの中に導いてみた。優斗は「えっ?何で履いてないんだ?前は履いてただろ?お腹冷えてないか?」と聞いてきた。
「お腹冷えてないけど、ムラムラしちゃって、ねぇ、優斗一緒に寝よ?」と布団に誘う。ご飯食べたらゴロゴロしたくなるのだ。
優斗は「おう。いいけど、履かないと腹冷えるかも知れんだろ。トイレとかなら見えんと思うから、パジャマにでも着替えるか?」と聞いてくれた。優斗もパジャマに着替えてた。
なんか、汚いとか不潔とかではなく、私の心配するところが、優斗らしくて愛おしい。優斗もムラムラしてくれてるのかな?
まだ、2時とかだった。だいぶ早いな。さて、私もパジャマに着替えて、優斗と一緒にお布団に入る。優斗と手を繋いで寝る。優斗がすぐに寝た。だから優斗の手に私の花園を少しだけ当てる。体温伝わるのかな?優斗のエクスカリバーに片方の手を触れて、楽しむ。なんかあったかいなぁ。くっついて寝られる事が幸せで溜まらない。
おやすみ、私。おやすみ、優斗。夜ごはんどうしよう。食べた後なのに、すぐにご飯の事を考えてしまうの悲しい性だな。ムラムラした心を沈めるためにも寝る。