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【配信】土日の憂鬱

今までは小説に土日を入れて来なかった。だって、読んでても面白くないだろうから。でも、配信でなら話せるだろうか。そんな事を思いながら実写でWETUBE配信を開始する。開始のウィスパーもして。


「皆、こん夢幻桜。あなたの土日に彩を。夢幻桜輝奈子だよ」

可愛く作った声でいつものように媚びている。なぜ、こんなに気分が下がるのだろうか。親と生きているだけなのに。


『こん夢幻桜』

『相変わらず、急で草』

『こん夢幻桜』


「今日は質問も募集するけど、哲学的問答配信するよ。人生における意味とかっていっぱい人いたほうが面白いから」


『初の哲学系WETUBERかもしれん』

『重いな』

『回線悪そうな話題で草』

『その「重い」とは違うんよ』

『話題重くて草』


「私、最近悩んでて親とマトモに話せてない気がする。メラビアンがメラメラビアンする。逆メラビッてる」


『謎ワード、メラメラビアン』

『逆メラビるとは?』


「メラビアンの法則って知ってる?身振り手振りと言葉が何%占めるかみたいなもの。で、私の場合、親の前だとたまに93%の嘘と7%の言葉だけ本音みたいなことが在るんだよね。いや、親の前だと全部嘘だけど、本音のように言うがたまに起きる」

何で口から出ちゃったかな。でも、ホントにシュレメラビってるし、逆メラビってる気がする。たまに伊達政宗る時がある。大体左目がかゆい時に使う。

『面倒くさい女で草』

『付き合うの大変そう』

『嫁がたまにこれする』

『↑大変そう』


「うん。シュレメラビってる人は大変だと思う。メラビアンの法則がシュレディンガーの猫してると面倒だと思う。私なんだけど」


『シュレメラビるは草』

『もはや、輝奈子語録作れるだろ』

『有識者頼む』


「で、人生の意味は最初からあると思う?私は『能力謎でも生きている』の中で語ってるけど、最初から在るものじゃないと思う。色んなものに触れて、その中で見つかったり、自分で作り出したりするものだと思うの。だから、見つからないと不安にはなるんだけど」


『行動力の化身だから言えるのだろうな』

『確かに最初から在るなら努力しなくなるかも』 

『いや、あったほうが楽だろ』

『目的地を定めてナビ通り生きるか、ぶらぶらひとり旅するかの選択とにてるかも』


「その表現いいね。私は目的地を定めて、勝手に応用して、ナビを迷走させて、ぶらぶらひとり旅するのが近いかも」 

『ナビの意味』

『ナビ意味なくて草』


「最終目的地は決まってるの。死ぬことっていう目的地が。これは皆そうなんだけど、その中で何ができるか考えないといけない。で、私は全て環境に任せてきた気がする。私、シンデレラかも」


『シンデレラとは?』

『玉の輿的な?』

『魔法使いが来たとか?』


「色々解釈できるとおもうけど、環境が変えてくれるのを待って、自分からは何もしようとしていない人の比喩。シンデレラも魔法使いがいなくたって、自分で立身出世だってできた気がするのよ。掃除とか料理とか押しつけられたはずだから、魔法使いがいなくても慎ましく暮らすことはできたじゃない。それなのに、王女という身分にこだわって。あー。悪口だね、これ」


『シンデレラボロカスに叩く配信者』

『シンデレラってそんなストーリーだったっけ?』

『シンデレラ考察WETUBER』


「そうでなくても、やり返せる機会ならいくらでもあったはずなのよ。家人すら信頼できないなら、環境を待つしかないかもしれないけど、寝所に忍び込んで寝首をかくとか、大本をつぶしてしまえば、下のものだって従わざるをえないでしょうよ。それこそ、兵を借りて、攻め込む事も可能だったはずだし」


『シンデレラはそんなに殺伐としてないはず』

『原作並みの切れ味』


「まぁ、でも、私は待ってるだけのシンデレラって意味。小説書き始めたのは趣味だけど、それに価値を見いだしてもらったのは偶然。だって媚びる作品書いてないもん。ランキングなにそれ美味しいの?だもん。歌を作り出したのも高2の時勝手にできたから、大学で改良して、年次改良してるだけだし。芸能人になる気もなかった」


『こんだけ凄いことしてても彼女は待ってるだけというのか』

『そんな気楽に曲なんかできるのか?』


「考えながらでも歌えるし、それが普通じゃないの?日々生きてるだけでたまに小説に使いたいフレーズ出てくるし、こんなプログラム組んでみたいとか、この関数使ってみたいとか浮かぶよ」


『そもそもがおかしい』

『スペックおかしいのに、それを普通といい切る輝奈子さん強すぎ』 

『痺れるし、憧れるけど、真似したいとは思わない』

『叩きたいけど、何で叩けばいい?』

『叩きツッコミかな』

『どないやねん』

『それだけできるのに何を求めてるのだろう』

『英語も凄いのに』


「私に言わせると、英語は言語だから頑張ればできるものだと思う。そのやり方が分かってないだけで。伝われば良いのだから、文法なんていらない気もするし。食べる、私、これ。って言われても指さしながら言われたら何かを食べたいのだろうと推測できるでしょ?」


『言ってることは確かに、だけどこの人自分の能力わかってない』

『暴論で草』

『ほとんどを手に入れた人の暴論』

『これだけの物を手に入れてるのに能力評価できてないの可哀想』


「私は、こんなに評価される人じゃない。きっと、塔に閉じ込められて、日の目を浴びる日を待ち続けるプリンセスだったはずなの。生きることという牢獄にとらわれて、親の愛という牢獄に閉じ込められた囚人。そのはずだったのに。親は私の本当の姿を知らない。親は私が歌手であることも知らない。アニメ化するときだって、アニメと3文字だけ語って、何も言わなかったもん」


『詩的な表現に隠された恐ろしいまでの渇望』

『この人は愛に飢えていたのか』

『だからあれほど彼氏さんに甘えてたのか』

『この人を知れば知るほど、わからなくなっていく』

『親御さんの期待に応えたいのだろうな』

『誰にでも在るのだろうけど、ここまでの人は少なそう』


「ねぇ、介護職やるべきなのかな?ほんとは歌手で、食べていきたいけど。親は歌手なんて安定しないって言ってるし、私の事を否定してくるの」

『むしろなぜ歌手辞めようとしてるの?』

『歌手で良いだろ』 

『カラオケソングの定番にすらなっているのに歌手辞めようとする小説家』

『この人の人生見届けたいから続けて欲しい』

『週刊果糖さんどうか、彼女の苦悩を取材してあげてください』

『果糖です。お日にちどうします?』

『すぐ出てきて草』

『やる前提なのか』


「親が分かってくれない。歌が好きって言ったのに歌手認めてくれなかったし。ほんとは年末の歌の祭典も誘いは来てたけど、ウルトラ揚げ物さん出るから辞めておこうと断ったし。自分の能力は自分が1番分かってるから」

気持ちが涙となり、大河を作り出す。大河はやがて海へと流れる。この涙がまた、地球の海へと帰っていくのだろうか。


『歌好きだけでは伝わらんだろ』

『年末歌祭り出る予定だったのか』

『いつのか知らんけど、どうしてそんなに卑下するのだろう』


「だって、どうせ、わかってくれないし。今まで20数年生きてきたけど、理解しようとしてくれなかったし。いじめを受けた時だって、全部1人で対処したもん。普通気付くでしょ?普段の様子違うはずだから」

涙声でまくしたてる私を見て、コメント欄が凄いことになっていた。


『気づけるだろうか』

『俺、親として子供に向き合ってるつもりだったけど、聞いてみよう』

『俺、親やめようかな。こんなに複雑な子に対処できる気がしない』

『俺も子供と向き合えてるか不安になってきた』

『この人、人を信頼出来ないんだろうな』

『どれほどの裏切りの中で生きてきたのだろう』

『どれほど期待をして、期待を受けて裏切られてきたのだろう』

『カタログスペックと実情の差みたい』

『もはや、車の燃費みたいにカタログと実情噛み合ってないよな』

『これ、彼氏さん大変だろうな』

『これ、ギャップでやられるのか』

『なるほど、これかぁ』

『泣いている輝奈子さんみると心がギュッてなって辛い』


「ごはん」と妹の声が聞こえたので、さっと切り替えて

微笑んで「了解。ごめんね、おつ夢幻桜」と言って、配信を閉じる。


『切り替えエグくて草』

『これ、理解できるやついるのか?』

『多少あるにせよ、恐ろしく早い気分転換』

『禅問答配信続けて欲しい』

『見たいな』


で、ご飯を食べる。自分の好きなタイミングで生きたい。ずっと人のペースで生きている気がする。どこにつれて行かれるのだろう。しんどい。はぁ、わかってもらえない。


「魔沙斗、最近彼氏とどうだ?博文くんとは結構進んだか?」

父の言葉で思い出してしまった。そうだった。博文と結婚することになっていたんだった。親の中では。あぁ、だるい。頭痛い。しんどい。誰か助けてよ。


私は一瞬で笑顔に変えて「そうそう。結構仲良くなったよ。段取りは全部私がやるから気にしないで」と両親を牽制する。あー、面倒だ。誰か助けて欲しい。


さっさと食べて、親との会話を切り上げ風呂に入る。服を脱ぐ時に思い出して、優斗に「助けて。ホントにあなたが好きなのに父親には伝えられなくて、母親もわかってくれてない気がするの。ねぇ、どうしたらいい?」と送る。


返事が返ってくるのを心待ちにしながら、服を脱ぎきり、風呂に入る。衣服のない開放感がとても良い。柵から抜けて、何もかもを忘れられる。風呂と優斗の前と自分の部屋とステージと配信だけでは自分でいられる。


思い返すと多いなぁ。小説も自分だし。あぁあ、また死ねなくなった。また、面倒な問題起きてるんだよなぁ。さて、どうしようかな。シャワーは温かかった。最近優斗と入ることも多かったから、なんだか広く感じて、優斗に抱き締めてもらいたくなった。


で、風呂から出て、髪を乾かす。念入りに乾かしながら、優斗の返信を見る。優斗からは「了解。9時からでいい?」と返ってきてた。私は「オッケー」と送る。やったー。優斗の声が聞ける。


9時が来た。私は第一声で「月曜日泊まりたい。抱き締めて。抱いて。頭撫でて欲しい。褒めて」とまくしたてる。優斗は「お、おう。いつも通りだろ?」と返してきた。なんか普通だなぁっと思う。でも、嬉しくて、「うん。いつもありがとう。なんか作ろうか?」と提案する。


優斗は「ハンバーグがいい」とリクエストする。私は、よし頑張るぞと気合を入れた。明日は、日曜日。バイトだぁ。頭ではわかっているのだ。親だって生き物で、理解したくても情報がなければ判断できないなんてことは。親の正常化バイアスを助長するような、親に都合のいい情報ばかり与えておいて、実際は真逆の心であると言ったところでわかってもらえないことくらい。


でも、親の期待を裏切りたくないし、親に捨てられたくないから親の期待通りの事しか言わない。私と親の性格の相性は最悪だろう。こちら側からはあまり「私はこうしたい」と主張しないから。親が「これいいよ」と言うと二言目には「じゃ、それで」である。本当は自分の好きなものがあるのに、言わない。気付かせない。


「言ってくれるから分かりやすくていい」と理解したつもりになられたくないから難易度を上げて自分に都合のいい情報ばかりの中から反対意見を探せとなるのだ。


優斗に「了解。その代わり、ギュッと抱き締めて欲しいし、お風呂も一緒に入りたい。だって好きだから」と提案する。そうだ、明後日の朝から買い出しに出よう。


そんな事を考えていても、優斗の「おう。了解」という返事を聞くと嬉しくなってしまう。ハンバーグ頑張ろう。


どうしよう。楽しみで眠れないと思いながら、睡魔に襲われる。明日は日曜日だ。頑張ろう。ほんとは親の話もしようと思ったけど、明後日会えるからその時に抱き締めてもらいながら、話を聞いてもらおう。


日曜日、何があったか分からないままにバイトして終わった。バイトの時にまた、私の正体がバレていたのか、めちゃくちゃお客さんが多かった。どうしよう。あー面倒くさい。結局バイト終わった後に優斗に「疲れたー」と送って「お疲れ」と言われたぐらいで終わった。ただ、その何気ないやり取りが楽しくて、嬉しくて涙が溢れそうになった。最後に、優斗に「買い出し行くけど、一緒に来る?」と送っていたぐらいだった。さて、明日は優斗の家に泊まれるからいいな。楽しみだ。


ここ数日心がおかしくなっていた気がするけど、優斗の家に行けるというそれだけでなんか嬉しい。


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