1月10日
私は何かのコックピットに乗っていた。中にはゴチャゴチャとした機械類が所狭しと置かれている。使い方もわからないうちに昨日ホラゲーで見た得体のしれない気持ち悪いものが追いかけて来ていた。私は疾走感のあるBGMを奏でながら一心不乱に逃げる。
この先はどこに続くのだろう。周りの景色を見る余裕もなく、ただ走る。感覚だけで操縦しているので何もわからない。気付けば崖にいた。まるで人生のようだ。無為に生きると気付けば崖にいる。取り返しのつかないこともある。
得体のしれないものに追いつかれてしまった。逃げ場はないから、1下で雷を放ち、1でパンチする。パンチからの電気で雷パンチする。その応用で雷キックをしたとき、足に痛みが走り、目覚めた。
「イッつー。うーん、よく寝た」
気持ちの良い素晴らしい朝。世界が色付くようだった。あ、パジャマ着てるよね?昨日眠たくなってどうしたっけ?昨日、机にもたれかかって寝たはずなのに布団に寝かされていた。何があったんだろう。目覚めたてで、ぽやぽやの目をこすりながら、優斗の元に向かう。声がまだポヤポヤだけど「おはよう。私昨日、寝ちゃってたよね?あれからどうなった?」と聞く。
優斗は「気持ちよさそうに寝てたから、布団に寝かせた。アニキの寝相だと落ちてケガしそうだから」と事も無げに言った。私は「そっか。ありがとう」と微笑む。寝相信頼に足りなかったのか。
絶対なんかあったよね。いつもより返事短いし。そう思って、「なんかあったよね?絶対。隠さなくていいから」と言うと、「なら、えっと、まず、俺の膝の上で寝てた。その上で腰に抱きついてきた。その時コメント欄は『主消えた?』とか『寝息可愛い』とかが溢れてた」と言われた。
恥ずかしい。どうしよう。隠れたい。でも、アーカイブが気になって昨日のアーカイブを最後の30分だけ見ようと提案したら優斗が「いいけど、勉強は?」と聞いてきた。
そういえばテストが2週間後にあることを今思い出した。やべぇ、勉強してねぇ。頭いいと信じてるからしなくても何とかなりそうだけど、彼氏とお勉強シチュに憧れてる私は「ねぇ、テスト近くない?そろそろ勉強しとく?」と声を掛ける。優斗は「俺もそうしようと思ってた。でも、アニキ道具あるの?」と聞いてくる。
私は「じゃじゃーん。ここにちゃんと持ってるよ」と自信満々に出す。ちょっとわざとらしかったかも。優斗は「そうか」と淡泊だった。
で、私は「勉強する前にちょっとだけ昨日のアーカイブ見たい」と言うと、優斗がアーカイブを流してくれた。最初の方は記憶に合ったので飛ばした。アーカイブ全体が2時間半あったので、2時間ぐらいのところから見る。
「怖い。離れないでね。離れたら怒るよ」
「結構怖い?」
「うん」
『ヨワヨワ輝奈子さん可愛い』
『さっきより声がふわふわになってる氣がする』
「優斗、眠たくなってきた。でも、配信閉じるには早いし、どうしよう。もうちょっとだけ頑張って落ちたら助けて」
「了解。頑張れ」
「うん。がんばる。きゃーー」
おそらくお化けが出たのであろう。WEB会議式ホラゲー実況ASMRはわからない事が面白かった。あ、就職どうしよう。所得源泉徴収票とか、副業に当たらないかとかが、今頭によぎった。
『きゃーー可愛い』
『何があったかわからないの草』
『あれ?主落ちてね?』
『主さん気絶か?』
『気絶じゃなくて寝たみたい』
「輝奈子が俺の膝の上で眠ってるんだが、動けなくて困る。どうしよう」
『布団で寝かせる』
『ほっぺにキス』
『脱がせてヤル』
「モチベーション的にはヤッてしまいたい気持ちもあるが、コイツが離れてしまうのが怖いから辞めとくわ」
『彼氏さん可愛い』
『寝顔だけ見たい』
『寝顔見せて』
「俺はいつも見てるけど、可愛すぎてキスくらいは許されるかな?」
大写しになる私の寝顔、と優斗の絶妙に散らかった部屋の一部。
『寝顔可愛い』
『絶対不可侵の寝顔』
『変態湧いた時は是非我らリスナーを頼って欲しい』
『絶対守ろう輝奈子の笑顔』
どうやって撮ってたんだろう。あと、私可愛いな。疲れてたのかな。いや、コーヒーかな。
「実はコーヒーで眠くなるのと、お化けで寝れなくなるのどっちが勝つかなぁって実験してたんだけど、コーヒーが勝って少し危ない気がする」と優斗が言っていた。
なんか2人とも黙って見ていた。優斗は何かをこらえるような表情をしていた。何があったのだろう。
数分後、布団に寝かされた私が「んゅう、優斗行かないで」と優斗の下半身に腕をかけようとしていた。優斗は焦ったように配信を切ったのだろう。最後の30分濃かったなぁ。
優斗が言いにくそうに「ごめんよ。あの後普通にトイレ行ってた」と言うので「もしかして、ソウイウコトしたかったりするの?」と天使の笑顔で聞く。
優斗は「良いなら。ただ、絶対やるなら風呂場だからな」と言いにくそうな表情をしていた。風呂場に寝台が欲しい。腰痛いし、肩痛いし、高さが難しいから。
私が「良いんだけど、どうやってやる?高さとか色々」と言うと、優斗は「台とかあれば良いんだけど、ないしな」と返してきた。結局風呂場は辞めた。
あまりにも色気のない話すぎて「ほんとはもっといい雰囲気になれるはずなんだけど、腰痛いからごめんね。でも、大好きだから」と私も申し訳なくなった。
優斗は「それは良いんだけど、お互い苦労するな」と慰めてくれた。申し訳なさが限界突破したので、「脱いでくれたら、エクスカリバー舐めるよ。私も脱ごうか?」と提案する。優斗は「いいなら。掃除手伝って欲しい。結構大変だから」といつも通りの表情だ。
で、なんとなくソウイウコトをする雰囲気にしたくて、自分のオリ曲『caught in a shower』を流す。これで、よかったかな。2021バージョンをながしたけど、物足りない。
だから、音を消して優斗のエクスカリバーを舐める。ちょっとしょっぱい気がする。優斗は座ってるけど、高いから膝立ちで痛い。結局服は脱いだ。だって昨日丁寧にフラグ立てて眠ったし、ソウイウ気持ちにさせた上で寝てしまったから。
「ごめんね。やっぱり痛いから寝そべって欲しい。私がその上に寝るから。これが1番良さそう」と優斗にいうと「了解。無理しなくていいからな」と気遣ってくれた。
1つだけ大きな問題がある。今さら恥ずかしいとかは無いんだけど、これぶっかける感じになってしまう。これ、達するの我慢しないと、後の掃除と優斗の目が心配になるという問題だ。
で、優斗のエクスカリバーは大きくは無いけど、やっぱり安心感があって好きだ。最初は皮を剥かずに、ありのままの平常時を楽しむ。なんかホントはキスとかから始めればよかったんだけど、こうなったからには仕方がない。大きくなった時に見誤って、喉に突き刺さってしまって痛かったけど慣れて来て少しだけましになった。その後、皮を剥いてピンク色の部分を舐めてみた。特に変なカスもついていなかった。男の子らしい匂いがしてそれもよかった。味は全然美味しくないし冷静になったら何をしているのだろうとなるだろうけど、優斗と繋がっていられることが嬉しくてそれだけで達してしまいそうになる。だけど優斗が達するまでは絶対にイかないと決めている。
朝から何やっているんだろう。私、変態かな?でもほのかに感じる優斗の体温とお腹に当たる体毛の感触、たまに目に刺さりそうになる毛が繋がっていることを再認識させてくる。先に達したのは優斗だった。声はそんなに出ていなかった。私も出てないつもりなんだけど、いつかの時にめちゃくちゃ声が出てると言われたことを思い出した。
甘いような苦いような名状しがたい味が私の口を支配する。どんだけ出るんだよ。ねっとり、かつサラサラなこの感触も別に美味しくはない。優斗のサラダにかかってたマヨネーズみたいな味だった。なんかこう、味としては物足りない。美味しくはない。腹ではなく心を満たす感じの味だった。
せっかくなので見せてやろうと口を開けたまま優斗の方を向こうとすると優斗が「どうした?」と聞いて来たので見せてやろうとしたけど、このままだと無理だなぁと思いなおし、元の体勢に戻る。その後、私も達してしまった。
優斗に「どんだけ出すんだよ」とツッコミを入れられた私は「それ優斗も同じだからね。そのままでいなさいよ。後で見せてあげるから」と言い返す。床をみると小さな泉ができていて、そこから新たな生命が芽吹きそうだった。
そんな感傷に浸りつつ、優斗に「床に座ってて。どんだけ出てるか見せてあげるから」と言って、優斗の璧の部分を愛撫しながら、ピンク色の部分を含めてエクスカリバーを舐める。たまに毛が口に入るのは感触としてよくないけど、大好きな人に喜んでもらえることしてるという満足感が心を満たしていく。朝っぱらからどんだけ盛ってるんだろう。
優斗が声もそこまで出ないままに達した。全部口で受け止めたけど、やっぱり多い。私は上目遣いで見せつけてみた。優斗は「それ、他の人にはしないほうがいいと思う。だいぶエロい顔してるから」と言いながら写真を撮って見せてくれた。確かにこれはやばいかもしれない。行き場のなくなった液体をどうするか迷って飲み込むことにした。今日は女の子の日ではないから大丈夫だろう。
「確かに。他の人にすることはないけどね。だって優斗が大好きだからしてるんだよ。優斗だけの特別だよ」と微笑んでみた。優斗は「お、おう」と言いながら、どことなくソワソワしていた。
なんとなく察して、「1回ソウイウコトやる?」と聞くと優斗は「良いなら。どんだけやるんだよって気もするけど」とまだ、服を着ようとはしない。私もまだ足りなくて、「頭向こうがいいよね」っと自分が出した方ではない方に頭を向ける。掃除するなら1カ所のほうがいいもんね。
優斗は「そうだな。先にタオル敷くわ。床が傷みそう」と言ってタオルを敷く。私も手伝った。どんだけだよって感じだけど、私も「それな」としか言えなかった。女の子としてはコレどうなのだろう。胸で挟むやつもやってみたいけど、それは後にしよう。
で、生で中に入れてもらったら前よりは痛くないけど、優斗の体温を直接感じてしまって物凄くムラムラしてしまう。寝そべった優斗の上にうつ伏せで乗って動いてもらう感じにした。私も少し動こうとする。だんだんリズムが合ってくるのが面白くて互いに動きあった。
ただ、胸の先端に毛がこすれて少し痛かった。全部が毛に覆われてるから痛いところは痛い。それでも、優斗が好きだ。だってかっこいいんだもん。
結局何回したか覚えてないし、10枚ぐらいタオル敷いたけど、結構びしょびしょになっていた。これどうしたら良いんだろう。悩む。
優斗に「これどうしよう。お互いめちゃくちゃ出したね」と言うと、「8割輝奈子だと思うぞ」と返ってきた。いやいや、優斗も10発ぐらい出してるでしょ?と思っていたら口に出てたようで、「数えてないけど、お互いに15回ずつぐらい絶頂してないか?」と言われた。
そんなにしたつもりは無かったけど、タオルのぐしょぐしょさといつもと違う部屋の臭いがどんだけしたかを物語っていた。お互い動きすぎて熱かったので、掃除は裸のままでした。あと、汚れた時にお風呂入ればいいという理由で。優斗は服を着たけど、まだ熱かった私は「私はまだいいわ」と下着だけつけた。
私が、「で、勉強する?」と言うと、「疲れたから1回寝る」と言われた。私も寝ようかな。朝ごはんも昼ご飯も食べてないけど、心が満たされたので優斗に布団をかけて、同じ布団で私も寝る。もし、ここで、生まれたままの姿で横に寝ていたらどうなるのだろう。そんな思考とこの前ふいに配信に声をのせられた仕返しとしてそのまま横で抱き着いて寝る。やっぱり、ちょっと寒いから着よう。で、横で眠る。
起きると夜ご飯を食べてもいいくらいの時間になっていた。気付くと優斗は隣にいなかった。私は少し不安になって、「優斗、いる?」と声を震わせる。優斗は「おう。起きたか。眠り姫」と笑っている。あっという間にテスト週間が近づいて来て、一緒にいられなくなる日が近づいてきていることを感じる。離れたくなくて、優斗の後ろから抱き着く。優斗は「お、おう。どうした?」と戸惑ってるけど、私は「優斗と離れるのヤダ。私、ずっと一緒にいたい。いつか一緒に住みたいし、頑張るから、1人にしないで」と泣きつく。私はこんなに弱い女だっただろうか。本当は帰った方がいいことを知っている。でも、帰ったら理解のない両親に色々言われるのだろう。特に父親は私にあたりが強いし、わかってくれない。
ああ、もう嫌だ。親とこれからも生きると考えただけで死にたくなってしまう。「話せばわかってくれる」と犬養毅じゃなくても言うだろう。憲政の神様えらいですね。でも、「話しても分かってもらえない」と思うのは、私の場合メラビアンの法則がメラメラビアンして身振り手振りと声のトーンが本当に伝えたいことと逆の方に統一されて、93%が嘘で、残り7%だけが本当とかいう伝え方をしてしまうからだ。
そんなことはわかっている。親に世話になったのも知っている。これから結婚して子供ができた時にウチの実家が一番便利であることも知っている。それでも、なぜか私は親が許せない。愛されていることは知識としてわかっている。だけれども、体感できていない。
「愛は金で買えない」なんて言うけど、「金で愛を証明できるのか?」と言うのも疑問である。2回も大学に行けたから愛されているのだろう。だけれども、どことなく親の見ている私と私の知っている私が全く逆に思えてしまう。なぜ、妹との格差を感じるのだろう。私がグレーゾーンだから?それとも第一子だから?男だったから?今や、家族で一番稼いでいるのは私だ。去年は月に75万円ぐらいのカラオケの印税とバイト代で1000万の貯金を一年で築き上げた。親に払った分を差し引いても890万ぐらいは残っている。どこまで行けば満足なのだろう。
思えばずっと親の期待に応えようと無理をして、自分らしさなんてものを考える余裕もないまま思春期を駆け抜け、勝手もわからぬまま成人して、今は恋してここにいる。子供にも遺伝する可能性があると聞いて死にたくなった19歳のあの頃も親は知らない。公務員になって安定して結婚しても自分のせいで子供がいじめられるかもしれないと考えて死にたくなった、あの時も親は知らない。収入をこれほど得た今でさえ殺される不安と、この先どうなるだろうという漠然とした不安が押し寄せて、そんな色々が噴き出して優斗に縋りついて慟哭していた。
涙で霞んだ顔を上げて見上げると優斗が私の肩に手をまわして「どうした?何か辛いことがあったか?」と聞いて来た。それだけでちょっと落ち着きそうだったけど、でも吐き出さないとブルーがひどくなりそうだった。
だから、私はしゃくりあげながら「親はわかってくれないし、愛が何かわからないし、親に愛されてる感じがしないし、妹と格差を感じるし、このまま結婚して子供がいじめられたらどうしようとか考えちゃうと死にたくなってきて、でも殺されたくはないし、優斗と離れるのも怖いし、就職する意味を失っちゃったし、どうすればいいのかな?」と言った。
もう、涙だけで新たな生命が生まれそうだった。地球は神の涙によって作られているのだろうか。七割ある海は7割の人の涙で3割の陸は苦労も知らない人々の笑顔のメタファーだろうか。死にたい。でも、生きたい。相反する感情が私を涙の大河へと誘う。優斗はただ黙って抱きしめてくれた。ちょっと落ち着いたころに「これ、サラダ。何か食べないと死ぬぞ。1日ぐらいは大丈夫かもしれないけど」と私の口にサラダを入れてくれた。何口か食べたころ私の意識は途切れた。
私のそばで優斗が抱き締めながら横にいてくれたことだけはわかった。何で朝あれほど幸せだったのにこんな不安が襲ってきたのだろう。親と暮らすのをやめて、私も優斗と一緒に暮らしたい。でも不安で、どうしたらいいのだろうか。また、今度考えよう。ただいまは、この幸せを噛み締めて生きて居よう。
儚き命は散りゆく運命。されどその輝きは何者にも消せはしない。
闇夜に輝く桜のように




