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【配信】ホラーゲーム実況

案件配信を終えた翌日、いつも通り優斗の家で腰の痛みと共に目覚める。優斗に「おはよう」と寝起き声で言うと優斗は「おう。起きたか。昨日の事覚えてる?」と聞いて来た。全く記憶がない。どうしよう。絶対何かやらかした。そう思った私は「覚えてない。でも、ごめん。何かやらかした気がする」と返す。


優斗は「まぁ、やらかしてはいるな。どこまで覚えてる?一回戦したことは覚えてるか?」と悪戯っぽい表情をしている。思い出してしまった私は「それはごめん。お風呂くさくなってない?あと、汚いことさせてごめんね」と平謝りする。優斗は「それよりも、大丈夫か?最近めちゃくちゃ疲れてるんじゃないか?一回戦終わった後、しっかり寝息立ててたけど」と衝撃の情報を暴露してきた。


どうしよう。顔が真っ赤に染まる。流石に、全裸で寝てるのを見られるのは恥ずかしすぎる。どれほど疲れていたのだろう。あと、疲れていたにしても絶頂したまま寝るのはだいぶやばい。お酒やめよう。やめるほど飲んでないけど、これは恥ずかしい。なんか迷惑をかけたことを詫びたくなって「何でもするから、許して。お願い」とかわいい声を自覚した上で、上目遣いをする。


優斗はニンマリと微笑み「なら、これやってもらおうかな」といわゆる洋ゲーのホラゲーを出してきた。私は、「う、うん。苦手だけど。頑張らせていただきます。トイレいけなくなったら運んでほしい。あと、寝れなくなるから手を繋いでくれるなら」と声を震わせる。優斗は「何でもじゃなかったのか?条件多いな」とツッコミを入れてくる。どうせならと事務所に連絡し、夜にWETUBEで配信をすることにした。それまでの間、雑談の配信をすることになった。で、1つ大きな問題があった。どうやって画面映そうか。


優斗に「どうやって画面映す?」と聞くと優斗は「事務所とかゲーム会社のガイドラインがあるだろうから後で考えたら?」と言われた。確かにそりゃそうじゃ。


で、雑談配信をWETUBEで行うことにして昼ご飯を食べ終わったころに事務所から「今からでもできます」と来たけど、「夜にします。20時からで」と返信しておいた。


WETUBEを起動し、充電器として持っていたパソコンとその充電器を差し、配信開始ウィスパーをした後、開始のボタンを押す。でいつものように挨拶をする。


「こん夢幻桜。あなたの休日エンドに彩を。夢幻桜輝奈子です」

『こん夢幻』

『こん夢幻。待ってた』

『毎日配信助かる』

『案件のリッププランパー買った』

『サクラ最高』


「リッププランパー買ってくれた人いるんだ。配信下手だったよね?ごめんね。ありがとう」と言いながら鼻がムズムズした。


「へっぷひゅん。誰か噂してるのかな」

『くしゃみ助かる』

『くしゃみ浴びたい』

『くしゃみまで可愛いのはずるい』

『そこらじゅうで噂話されてもおかしくない人がなんか言ってらー』

『噂どころかネット記事までできてる人なのに何を言ってるんだろう』


「ひっくひゅん。今日は彼氏の家で配信してるの。優斗も映る?」

「映っていいのか?俺が映るのはいいけど」

「私は嬉しいけど、コメントのみんなどう?」


『彼氏さん映ってくれるのはありがたい』

『輝奈子さんを射止めた人見てみたい』


「なら、映ってもらうね。ちょっと待ってね。一瞬画面乱れるよ」

ついでに軽くミュートボタンを押して音声を切り、画面を暗転させて2人ともが映るようにしてからもう一度画面と音を直す。


「お待たせ。配信していくね。紹介するね。こっちが彼氏の優斗君だよ」

『凄く普通』

『確かにハリウッド童貞か』

『↑久しぶりのハリウッド童貞とかいうパワーワード』


「お、おう。優斗です。活動名考えてなかった。まぁ、いいや。で、輝奈子、雑談って何話すの?」


「考えてなかった。暇だし配信しようまでは考えてたけど、その後のこと考えてなかった。何話す?」

「考えてないのかよ」

『考えなしで雑談は草』

『彼氏さんから最近のかわいい輝奈子さんの話聞きたい』

「そうだな。昨日は疲れすぎたのか色々した後すぐ寝た。寝顔がめちゃくちゃ可愛かった」

『なにそれ?見たい』

『ぜひ彼女にコーヒーを』

『↑積極的に寝てもらおうとしているのがいて草』


私は優斗の発言に顔を紅く染めながら「えっ?そんなに寝顔いいの?いつも寝顔が入ってくるけど」と聞く。優斗は「それはもう。めちゃくちゃ可愛かった」と照れている。


私は「でも、優斗の寝顔もかっこいいもん。あと、普段の言動が可愛い」と意趣返しする。優斗は「そ、そうか。で、何話す?」と話を戻してきた。


『夫婦漫才おつ』

『夫婦漫才だな』

『夫婦漫才は草』


「何話そう。歌枠ではないからなぁ。雑談配信って皆何話してるの?」

『マシュマロ』

『質問返し』

『最近のマイブーム』


「えっと、最近のマイブームは優斗を連れ回す事と抱きしめてもらうことかな。あと、マシュマロ募集してみるね。あ、優斗のマイブームは?」

「お、俺のマイブームはギターの練習かな。いつかステージでも隣に立てるように」

『夫婦漫才なんだよなぁ』

『可愛い』

『これが可愛い彼氏か』

『同人作家さんぜひネタにして書いてください。読みます』

「あ、そうだ。思い出した。同人作家さんの作品見たいなぁって思ってたの。我こそはという人ぜひ私のウィスパーにDMを。この配信の概要欄に貼るからちょっと待ってね。R18以外なら大丈夫だと思う」


そう言って、私は頑張って概要欄にウィスパーアカウントを貼った。我ながらよく頑張った。


「よし、できた。やったー」

「輝奈子喜びすぎ。それできるのって普通だと思うんだけど」

「私のポンコツ具合を知らないから言えるんだよ。たまに取説読まずに作ってできた気になることあるもん。ある程度にはなるんだけど」


「メシマズ彼女が言いそうな事だな。輝奈子のは美味かったけど」

『彼氏さんの発言に象徴されすぎてる』

『輝奈子さんの発言完全にメシマズだもんな』


「ぶ、分量は守ってるよ。たまに片栗粉をもちで代用したことはあるし、豆腐を握りつぶしたこともあるけど」

「前、言ってたよな。あとはキャベツしか入ってない自称お好み焼きとかな」

『豆腐握りつぶすというパワーワード』

『何で握りつぶした?』

『豆腐握りつぶしは草』


「あれ、自称じゃないから。お好み焼きだから。ソースもマヨネーズも青のりも削り節もかけなかったけど」

『輝奈子さん、それはキャベツと生地の焼き物や』

『断じてお好み焼きではない』

『広島流と関西流の流派の違いは知ってるけど、どっちだとしてもあり得ん』

『新流派輝奈子流お好み焼き(自称)』


「流派には触れないでおくね。どっちも美味しいから好きなんだけど、徳島は関西圏だと思うから関西風が好きだね」


『広島派閥と関西派閥が争わないように気を遣う輝奈子さん可愛い』

『この言い方ならどっちでも許せそう』

『てか、忘れそうだったけど、キャベツ以外生地のお好み焼きって何で生まれたの?』


「えっと、まず一人暮らしの時、マヨネーズが家になくて、ソースもわざわざ買うのはめんどくさくて、キャベツは半玉を使い切って、粉も使い切って、卵を2個いれる感じで作ってたからできた」

『揚げ玉もサクラエビも入ってないのは草』

『しらった焼きやん』

『何もない。キャベツの生地焼きやん』


「でもね、食べてみたらおいしかったんだよ。ソースほど味が濃くないし、マヨネーズほどしつこくもないし」

『それは味がしないと言うんやで』

『それは無味なのでは?』

『生地に味あるのか?』

優斗が「輝奈子ってどこか調味料のない世界で育ったのか?」と訝しむ。

「違うの知ってるでしょ?普通に育ったし」

「まあな。なあ、あの話していいか?アニキの中学か高校の家庭科の授業のアレ」

「いいよ。アレでしょ?」


『アレで通じる逸話ってなんだろう』

『ソレが気になって仕方ない』

『アレってドレ?』


優斗が話し始めた。自分で話してもよかったけど。


「輝奈子、まぁアニキが中学か高校の時に家庭科で離乳食を食べてみる授業があったらしい。で、他の人が不味いって言ってる中アニキだけ美味しく食べられたから訳がわからなかったらしい」


「そうそう。あれ、たしか、わかめうどんだった気がする。ドロドロだった以外普通に味したし」


『俺の高校もあったけど、不味かった』

『あれを美味しく食べれるならワンチャン上の逸話本当かも』

『輝奈子さん舌が子供説』

『ぜひビール飲ませてみたい』


「ビール飲んだことあるよ。苦かったし、舌がピリピリするからあんまり好きじゃないの。カルーアミルクとか日本酒の方が好きかも。特に甘口の方の日本酒が」


『アルコール度数以外で飲めないって言ってるの初めて聞いた』

『日本酒は行けるけどビール無理はなかなかきかんな。逆は結構いる』

『酒飲み界隈色めき立ってて草』

『ビール苦いはわからなくもないけど、日本酒も変わらない気がする』

『輝奈子さんお酒飲むんだ』


私が「お酒あんまり飲まないよ。昨日は飲んだけど。その後の事は思い出したくない気もする。恥ずかしかったから」と言うと、優斗が「まぁ、あれだ。利尿作用が働いて、色々あっただけだ」と補足する。


『色々が気になるけど、聞かないほうがよさそうだ』

『それな』

『お二人はお酒で失敗した事ありますか?』


「俺は無いな。酔いつぶれたぐらいかも。アニキは?」

「私、そんなに飲まないからなぁ。あ、でも、父上と日本酒熱燗で6合開けた時は頭痛くなってそのまま寝た。あとは有名な波動を打つアニメの主人公の立ち方が不動立ちかどうかを同級生に振ったぐらいかな」


『どんな逸話だよ』

『不動立ちとは?』

『結構飲んでて草』

『サワーで酔いつぶれそうなエピソードだったのに結構飲むんだ』

『コーヒーのイメージすぐ寝る感じかと思ってた』


「あ、不動立ちは私の習ってた武術で基本となる立ち方で、片足を進行方向に膝90度で曲げて、もう片足はその足に90度になる角度で後ろに自然に開く立ち方だよ」


『武術してたのか』

『キャラの立ち方に言及するのは謎』

『「酔うとキャラの立ち方に言及します」は草なんよ』


「あ、そうだ。夜からまた配信するので良かったら来てね。えっと、昨日優斗に迷惑掛けた罰でホラゲーを実況するので、お楽しみに。えっと、イヤホンとか耳が痛くならないものとか準備しといてね」

『声プルプルで草』

『相当苦手なんだろうな』

『あ、彼氏さんの霊圧ずっと消えてない?』


「優斗いるよね?どこ?」

「あ、いた。よかった。急に消えるんだもん」

「俺、話に乗り切れてなかったから邪魔かなって」

「邪魔じゃないよ」

「そうか」


『いるんだ』

『すっと消えるのは草』

『ホラゲー実況楽しみ』


「あ、えっと、20時から配信するので、私を慰めるためにも来てくれると嬉しいな。たまにこういう鬼畜してくるんだよね。今回は全面的に私が悪いんだけど。お酒控えます。おつ夢幻桜」

『おつ夢幻桜』

『おつ夢幻桜』

『おつ夢幻桜』

さて、夜ごはんを食べよう。相変わらず、ラーメンだった。今日はつけ麺にした。別に私はイケメンではない。


で、帰りに優斗に話しかけた。


「ねぇ、今おばけ出たら助けてくれるの?」

「おばけの方なのか。サスペンス的な方かと思ってた。まぁ、どっちでも守るんじゃない?」

「そっか。ありがとう」


手をつなぎながら帰る。まだ、時間があったから先にお風呂も終わらせようという段取りになっている。実は飯の前にお風呂を沸かし始めていた。大体30分かかるらしいと知っていたから。


で、お風呂に2人とも入り終わった後、配信を始める。ガイドラインみたけど、「おまかせでいいよ」と自由にしてくれることになったので、キャプチャボードのない私は自分を写しながらすることになった。


待機画面なんてものは作っていない。開始のウィスパーをして配信を始めた。


「こん夢幻桜。夢幻桜輝奈子だよ。あなたの夜にも彩りを」


『楽しみ』

『期待』

『まさかの画面を映さないホラゲー実況』

『まさかの輝奈子さん大写しのホラゲーとかいうホラゲー苦手勢に配慮した配信』


「あ、えっと、画面キャプチャできないからこうなった。見えるASMRみたいな感じで思ってくれたらなって。マイクもないしね。WEB会議式ホラゲー実況ASMRの配信です」

『パワーワードすぎる』

『WEB会議式ホラゲー実況ASMRは草』

『トレンドに入れようぜ、WEB会議式ホラゲー実況ASMR』

『わけわからなくて好き』


さて、画面にはゲームのタイトルが出ている。私は画面を見ながらこう言い放つ。


「ネタバレできるものならやってみてください。その代わり、私がどこで何をしているのか、何のゲームをしているかわかればですけど。概要欄にあるけど見ない方が面白いよ。タイトル見てもどこにいるかわからなければネタバレ難しいよ」

『ネタバレに前向きな配信者は草』

『タイトル映ってねぇから何やってるかわからないの強すぎる』

『これはこれで面白そう』

『ネタバレ杞憂民、杞憂しようにも推理ゲーが始まってしまう』


「では、始めていきます。えっと、ロッカーかな。なんかミュージック。あ、今度の歌詞アレにしようかな。えっと、1でパンチで、2でキック。2を2回でヒップドロップかな?で1下で雷」


『マジで何やってるかわかんねぇ』

『ホラーでヒップドロップってなんや』

『幽霊パンチして、雷出すゲームなんか聞いたことない』


「輝奈子、嘘言い過ぎ。ほら、画面の英語読んで」と優斗が言うので、私の十八番を披露する。


「これからリスニングテストを始めます。この単語をよく聞き、推理してみましょう。たけ。listen again  たけ」

『やべえわかんねぇ』

『もしかしてtakeか?』


「お、正解がいる。テイクだよ。take repeat after me. take」

『なんか英語の勉強始まって草』

『相変わらず物凄くきれいなリスニングテスト音源』

『口からリスニングテスト音源は草』

『学年末caught in a shower出るかもしれん』

『下手したら、この配信がテストになるかもしれんから気を抜けねぇ』

『わい、受験生。受験勉強のお供で聞いているが、下手したらどこかで役に立つかもと期待してしまう』

『↑勉強しようぜ』

『これなんだったっけ』

『パンチして雷打って英語の勉強をするゲーム』

『混乱しか来ねえ』



「OK. Now, I'll turn right, but I don't have a light. It'll be alright. I don't have something to write. The wall is white. The world is alright. Then, Where is the light?」

『ものすごい韻を踏んでる。しかも英語で』

『輝奈子さん初見か?この人即興で英語ソング作るからな』

『意味わからない。解説ヨロ』

『さて、右に曲がりましょう、ライトがない。まぁ行けるでしょ。書く物がない。壁は白。世界は大丈夫。で、ライトどこ』

『韻踏むの凄いけど内容がなくて草』

『ネタバレ班頑張れ』

『たまに英語入るからWEB会議のフリしながら残業してる』


数分歩いてやっとライトを見つけた。出た声は「I did it. I finally found the light. That 's not a lie and I'm alive. I will arrive at a station. I want stationery, not a dictionary because I want to take notes not to get lost in the future.」だった。なっげぇよ。あと、全部英語かよ。


「全部英語かよ。そういう配信なの?お化けとかは?」と優斗もツッコんでくる。

『意味わからなくて草』

『教えて英語得意な人』

『やったー。やっとライトあった。嘘じゃない、生きてる。駅に着くでしょう。文房具欲しい、辞書じゃなくて、だってメモ取りたいもん、未来で(あとで)迷わないように』

『来年受験のワイ、これをシャドーイングすることにした』


「俺も見てるだけでメキメキ英語力上がってる気がする」

優斗の発言を聞いていたら気持ち悪いモンスターが出てきた。パンチしようとしたけど逃げきれなくて「え?そうなの?で、ここでパン。きゃーーー」という叫びが出た。

『久々の日本語からのキャー――で草』

『何があった?表情を楽しみながら英語の勉強できるんのはお得』

『輝奈子さん、しょぼん顔で草』

『しょぼん可愛い』

『右に曲がれ、そこにいいアイテムがある』


「わかった。左に行くね」と本当に左に行く。その後サイレント右をする。静かに右に向きを変え、進んでみる。本当になんかあった。


「あ、なんかあった。すごい。わかるはずないのに、右に行ったら本当になんかあった」

『わけがわからなくて草』

『ネタバレ勢本気出したのか』

『パンチあるのかな?』

『概要欄見て最初から見てるけど、音だけで探るのは難しかった』

『↑どんな耳だよ』

『これでも地獄耳だから音だけで追えるようになってる』

『そのレベルの耳だとさっきのキャー――で耳壊れてそう』

『何とかなった』


「ねえ、優斗これって何に使うの?」

「ああ、これな。幽霊を殴るやつ」

「なるほど、出口ってあるの?個人的に11時には終わらせたいんだけど」

「ある」

相変わらず、短い返事だった。どうしよう、お小水行きたくなってきた。でも、怖いどうしよう。さっきのシーンがだいぶトラウマになってしまった。


「ねえ、優斗お花摘み行きたい。でも、怖いから手繋いできて欲しいの。お願い」

「そんなに怖かった?」

「うん。怖かった。ミュートしていくね。すぐ戻るから」


『怖がり輝奈子さん可愛い』

『お化け怖いからトイレいけなくなるの可愛い』

『トイレついて来てとか彼女に言われてみてぇ』

『↑彼女いないだろ?』

『いない』

『涙拭けよ、仲間がいるぞ(涙)』

『俺も泣こうかな』


そのころ私はトイレに来たはいいものの、後ろからお化けが来そうで怖くて「手、このまま握ってて欲しい。お股拭くときはさすがに放すし、手も洗うんだけど。本当に怖いから」と声を震わせる。めちゃくちゃ怖かった。無限にも思える沈黙に耐えかねて、「だめ?」と上目遣いする。優斗は「むしろ、そっちはいいのか?一方的にお小水の音聞くことになるんだけど」と聞いて来た。私は、脱ぎながら「いいよ。怖いから。そばを離れないで」と懇願する。優斗は「しょうがないしな」と妥協して側にいてくれた。


少し淫靡な水音が響く。まだ、おばけの恐怖は拭えないけど、優斗とつながっていられるだけで嬉しい。終わったので、手を離し、股を拭く。そして、手を洗う。


ミュートを解除し、「みんな、お待たせ。帰ってきたよ。で、ここからか」と言う。


『お、戻ってきた』

『可愛い』


「えっと、ゴール見つけたいけど、もう少し頑張ったら何か飲もうかな」


「コーヒー沸かしとく。喉渇いてるだろ?」

そう言ってお湯を沸かす優斗に「うん。ありがとう。さっきはごめんね」と微笑む。


「いや、良いんだけど。後でできたらよろしく。その、アレ」

意味ありげに止めないでよ。配信してるんだよ。

「う、うん。起きてたら。怖くて心臓が疲れたのか少し眠たいの」


「まぁ、2時間ぐらい頑張ってるもんな。ホラゲー本当に苦手なのに。ありがとな」

「いやいや、昨日の私が迷惑掛けたし。新鮮なのは新鮮だから」

「そうか」


『夫婦漫才可愛い』

『やはり、一線は越えていたのか』

『輝奈子さんと一緒に彼氏さん消えたのなぜだろう』


「あ、そ、それは。その、怖くて。さっきの結構トラウマで。着いてきてもらったの。数メートルしか離れてないけど、お化けに襲われそうで怖かったから」

『そんなに入り込むのか』

『子供かよ』

『守りたい』

『皆で守ろう輝奈子さんの笑顔』


「はい、コーヒー」

そう言って優斗は机にコーヒーを置く。私は一口飲んで「美味しい。喉乾いてたから、あ、続き頑張るね」とゲームに向き直る。


そして、何回か飲んでコーヒーを飲みきった頃、意識が途絶えた。後で聞くとめちゃくちゃ盛り上がったらしい。なんで?



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